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第112話「魔道具屋さんと変な店」

 魔道具の店の外見は、おしゃれなカフェテラスのような雰囲気だ。


「あー……これはー……ダメですねー……」

「ダメそうだなー……」

「雰囲気のいいお店だと思うのに!?」


 王都の汚い魔道具屋みたいに、整理整頓なんかせず無造作に積み上げてるような店だと掘り出し物を期待できるが、こんなにきれいな店だとまず掘り出し物は見つからないだろう。

 落胆のあまり棒読みになるユナの声がちょっと面白かった。


 このまま帰っても仕方がないので、俺たちは店の中に入ってみることにした。


「いらっしゃいませ~」


 店に入るとカウンターの奥でニコニコしている仲の良さそうな中年の夫婦が出迎えてくれる。

 店の中はどう見ても喫茶店のような感じだ。


「魔道具を見に来たんだけど、あれ? 店を間違えたのかな……」

「ん? あーはいはい。魔道具ね。それなら店の横に物置きがあるから、勝手に見てくれて構わないよ」

「勝手にですか?」

「魔道具の店は先代の時にやってたんだけど、今は御覧の通りでして……当時の売れ残りしかないですが、こうしてたまにお客さんが見えたときだけ自由にして頂いています」

「なるほど。じゃあ、自由に見させて貰おうかな……」






 主人に言われた俺たちは、一度店を出てからその横に建てられた小さな物置きの戸を開けた。横開きの戸は建て付けが悪くて開けるのに苦労する。


「蜘蛛の巣が張ってるな……もしかして管理すらされてないのか?」

「そんな感じですよね。一応棚に並べてはありますけど、錆びた商品もあるし、値段しか書いてないし、怪しさ満点です」


 ユナは楽しそうに言った。今日は何を発掘するつもりだろう?


「暗いから解放の駒で明かりを点けよう。これなら魔力が出ないから感知の邪魔にならん。ティナは魔力感知で本物の魔道具を探してくれ」


 以前ジャックから教わったことだが、古代の魔道具には保護の魔法も同時に掛かっているので、そう簡単に壊れたり錆び付いたりなんかはしないはずだ。

 錆びた道具があるということは、魔道具ではない品が混じっていると見ていい。



「この棚は……これとこれと、あと……これ以外は魔力を感じないわ」

「この三つだけか」


 ティナが指さした物は、革のケースに入った医療用のメスみたいな形をしたナイフと、ビー玉のような……これは魔霊石だろう。それから、柄に宝石が嵌まった魔法の杖だ。


「メスみたいなナイフは銀貨1200枚か。魔霊石が銀貨1万4080枚……凄い値段だなあ。魔法の杖は銀貨2万枚。ナイフは買っておこう。安いし……」

「このナイフは皮を剥がす時にも使えそうね。魔法の杖はエミリアに貰った普通の杖よりも強い魔力があるわよ」

「古代竜の角の杖が既に伝説級の魔道具らしいから、魔法の杖は要らんだろう」


 こんな調子で下の棚から順に調べて行ったのだが、最終的に買うことになったのは最初に見つけた銀貨1200枚のナイフと、銀貨340枚の真っ白い絹のリボン、そして銀貨6870枚の変な形をした鍵だ。


 鍵の形はロッドの部分がろくろ脚のような形状で、頭の部分は三つ葉の飾りが付いている。良くあるアンティーク鍵のような形状だ。

 何の鍵かもわからないので買う予定はなかったが、ユナ曰くこの鍵が一番夢があると言ってきかないので仕方なく買うことにした。






 元魔道具の店を後にした俺たち三人は、サキさんが待っている変な店に向かった。

 店の前には気味の悪いデザインをした革鎧が飾られていたり、傘立てのような箱に剥き身の真剣が無造作に入れられていたり、雰囲気からして怪しさ満点の変な店だ。


「何かいいのあったか?」


 俺はまだ店内を物色中のサキさんに話し掛けた。


「特に見当たらんが、異国の装備品まであるのが面白いわい」


 サキさんの言う通り、王都で見る武器防具とは明らかに毛色が違う武器も並んでいる。

 だがどれも部品が欠損していたり、ガタガタになっていたり、とてもじゃないが実戦で使えるような代物ではないようだ。

 まるで戦場跡から回収してきたような状態だと言えばいいだろうか?


 サキさんは既に王都で最高品質の装備を持っているので、今以上となれば魔法の装備品しか選択肢がない状態だ。そろそろ魔剣の一本でも持ち歩いて欲しいのだがなあ。


「曲刀や片刃の剣もあるんだな。連射機能が付いたクロスボウもあるのか……」

「今持っておる剣で片刃があれば良いのだがの」


 まるで武器の博物館に来ているようだ。しかし、ティナが興味ないのはわかるが、ユナもあまり興味が沸かない顔をしている。


「面白くないか?」

「武器に込められたアイデアは面白いんですけど、魔法の破壊力を知ってしまうと話にならないと言うか……」


 まあそれはそうだが。ユナは今回の冒険で魔法の力に魅せられてしまったのかも知れない。危険な兆候ではないだろうか? 折を見てエミリアに相談してみるか……。

 結局俺たちは冷やかしをするだけで変な店を出た。個人的にはかなり楽しい店だった。






 俺たち四人は一度宿に戻ってから──ユナだけはハヤウマテイオウで再び町へ繰り出してしまったが、二日酔いのエミリアと大部屋に集まっている。


 先程買ってきた魔道具をエミリアに鑑定して貰うためだ。


「あのう~、二日酔いで今すごく苦しいのですが……」

「二日酔いくらい魔法で治せんのか? アルコールが脳味噌に作用してるわけだから、解毒の魔法とかで治るだろう?」

「そうなんですか? 仮にそうだとしても、どんな感じで頭に作用しているのかをイメージできないと治しようがありませぇ……治りました!」


 昼を過ぎてもダウンしていたエミリアの二日酔いを、ティナがあっさりと治した。


「なるほど……大雑把な知識でも案外いけるものね」

「……ええ、理解が深まる程確実性は上がっていきますけど、最終的には術者の意志や思いの強さも効果に現れます。それでも無理なら単純に魔力不足になりますね」

「何だか強欲でワガママで自己中な感じの方が優秀な魔術師になれそうな発言だな」

「間違いとは言い切れませんよ。魔法は精神の質まで判断しませんからね。例え倫理観を無視した願いでも、それが純粋な願いなら効果となって現れます」


 何だか恐ろしいことを聞いてしまったような気もするが、突っ込まないでおこう。



「それで、このナイフとリボンと鍵、これはなんの魔道具なんだ?」

「こっちのリボンは知ってますよ。自分の好きな色や柄をイメージするとその通りに変わるんです」


 エミリアがリボンを伸ばして集中すると、真っ白いリボンは何やら不気味なゲロの色に変わっていった……。


「すみません……昨日の晩のことを思い出してしまって……」


 エミリアが手放すと、超リアルなゲロ模様のリボンは次第に元の純白に戻って行く。


「色や柄をイメージした人間が手放すと元の状態に戻るんです。だから何だと言われたらそれまでなのですが……」

「色んな柄のリボンを揃える必要が無くなるのか。ティナが持っておくといい」

「あ、ありがとう……」


 エミリアのゲロさえなければ気分良く渡せていたのに、台無しになってしまった。



「こっちのナイフは? ご丁寧に専用の本革ケースまで保護の魔法が掛かっているぞ」

「これは帰って調べないとわからないですね。刃こぼれはしないでしょうから、色々切って調べるのが一番早いと思うのですが……」

「じゃあ色々切ってみようか。ティナが料理の時に使えば色んな食材を切るだろうし、テストには持って来いだろう」


 俺はメスのような形をしたナイフをケースに仕舞ってティナに渡した。


「鍵の方はなんだろうな? いわゆる魔法の鍵みたいだが……」

「……ん? これはミスリル製ですよ。もしかしたらどんな錠前でも開く魔法の鍵かもしれません」

「もしそうなら自重しないと駄目ね」


 エミリアは魔法の鍵を部屋の扉にある鍵穴に差し込もうとしていたが、すぐに諦めて戻ってきた。


「……間違いでした。でもかなり強力な魔法の効果があるみたいですし、一度正式に鑑定してみましょうか?」

「どうしようかな? ユナが気に入ってるみたいだから謎のまま渡しておくか。本人がギブアップした時は鑑定してやってくれ」


 とりあえずこんなものかな。結局また興味本位で冒険には何の役にも立ちそうにない魔道具を買ってしまった。

 まだ家電製品が夢に溢れた魔法のような装置だった頃は、みんなこんなふうにしてヘンテコな商品を買っていたのかもしれないな。



「わし、そろそろ銭湯に行くわい」

「せっかく風呂付きの宿なんだし、ここで入れよ。客層が違うと新鮮だぞ?」

「ではそうする!」


 サキさんは肌身離さず持ち歩いている愛用のお風呂セットを抱えて浴場に行った。

 俺はサキさんがただの風呂好きなのか、男の裸を見たいだけなのか、良くわからなくなってきた。


 サキさんが部屋を出て暫くするとユナが戻って来た。今日は遅くまで出歩くのかと思っていたが、思ったよりも早くに帰ってきたな。






 部屋に戻って来たユナは、どこかで買ってきた革紐を魔法の鍵に通すと、ダガーの鞘に括り付けている。


「そこでいいのか?」

「誰も興味を示さないのが鞘だと思うんです」

「なるほど……」

「ちょっと早いけどお風呂に行きましょう」


 部屋にいてもやることがないし、サキさんも暫く戻らないので妥当だろう。俺たちはティナの一言で早めの風呂に行くことになった。


「エミリアも来るか?」

「私は王都に戻ってからでも大丈夫ですよ」


 澄ました顔で微笑むエミリアを引きずって、俺たちは一階の浴場へと移動する。



 宿の浴場に入るなり早速脱衣所で服を脱いだ俺たちは、逃げようとするエミリアの服を無理やり脱がせているところだ。


「もう自分で脱ぎますから、下着を脱がすのはやめてください……」


 エミリアは下着姿のまま床にへたり込んでしまった。これでは俺たちが虐めてるみたいじゃないか。しかし同じ荷馬車で寝る以上はエミリアにも衛生管理を徹底して貰うぞ!

 エミリアは観念したのか、俺と買いに行った可愛い下着を自分で脱いだ。


「うわぁ……エミリアさんの胸、やっぱりデカいですね……」


 ブラジャーを外したエミリアのおっぱいは初めて見たが、俺とユナとティナの分を合わせても、まだまだエミリアの方が大きい……。

 完全敗北を通り越して、初めから勝負にすらならない程の奇乳である。膨らんだ風船が引き延ばされたかの如く乳輪もデカい。

 俺は先月、男の乳首とは桁違いのサイズになってしまった自分の乳首を見てかなり悩んだものだが、エミリアのを見ていると、もうそんなのどうでもいい感じに思えてくる。


 その大きさたるや同性の俺でも目が離せなくなるほどだ──怖いもの見たさで。


 そして、俺と同じ感想を持った仲間がもう一人いた。


「マニア受けしそうな体ね……」

「失礼なこと言わないでください!」


 ティナはエミリアの垂れた乳を両手で持ち上げながら、未知の生物を観察でもするかのように扱った。俺もエミリアの体は一般向けではないと思った。


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