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光と会話する女

「○○県○○市で○○大学研究室が全焼、焼け跡から二人の遺体が発見された。警察は遺体の身元確認を急いでおり……」

何気なくテレビをつけたらとんでもないニュースが流れていた。

「おーいみちる。これお前の大学じゃん」

「ええっ?!」

光が何かやらかしたのだろうか。光は私の想像以上に行動が早かった。

「光がなんかやったのかな。そういえばこないだ、僕はいなくなるとか言ってたけど、また心中でもしたのか」

「え、光復活したのか」

大地のつぶやきに反応したのは正樹だった。そうだよと大地は短く返した。

「僕はいなくなるっていつそんなこと言ってたのよ。早く教えなさい!」

「みちるが教授と話してた後のことだよ。あ、犠牲者を出すとか、守に体を返すとかも言ってた」

「何よそれ……」

呆然としてしまった。すべて終わってしまった。青木親子をめぐるごたごたは全て終わった。頭が真っ白になっていると、チャイムの音が聞こえた。誰か来たらしい。宅配便か、何かの勧誘だろうか。こんなときにこないでほしい。まともに応対できるか分からない。いろいろな思いをめぐらせつつドアを開けると、なんと光(いや守なのかもしれないが)が立っていた。

「別にいいとは言ったけど、どうしても気になったから正樹を見に来た」

どうやら光の方らしい。

「うちの住所なんで知ってるの?」

「守が知ってたから教えてもらった。正樹はどこにいるの」

「奥にいるわよ。おーい、大地、正樹、光が来たよ」

一応呼びかけたが、鉄道模型とノートなので返事はすれどやってはこない。なので抱えて持ってきた。ついでに殺人ノートも持ってくる。

「光!元気にしてたか。俺は元気だよ」

「お前、いい人に買われてよかったな」

「母さんはどうしたんだ。母さんと仲良く暮らすのがお前の望みだろう」

私も大地も気になっていたことを単刀直入に正樹が質問した。光はふっと一瞬遠くを見てから答えた。

「お母さんはもういないんだ。ニューパパと一緒にね」

「っていうことはさっきのニュースの二人の遺体ってまさか」

「白川さんとニューパパだよ。白川さんは巻き込んでしまって本当に済まないと思っている」

犠牲者が出るかもしれない、という光の言葉を思い出した。犠牲者は白川瞳子だったのだ。

「でもお母さんを死なせてよかったのか?」

「いいよ。もう二度とお母さんが僕のことを見ることは絶対ないから。僕はお母さんに提案したんだ。ニューパパとやり直せる方法。そのときのお母さん、僕をすがるように見てきた。ほんの一瞬だったけど、僕を見てくれたよ。それでいいんだ」

つまりこれは光が裏で糸を引いていたのだ。

「ちなみにこれはあなたが書いたの?」

私は殺人ノートを差し出した。光はぱらぱらとそれをめくった。

「僕のノートだ。どうしてここにあるんだ」

「守がそれを持っていたのよ。話がちょっと変わるけど、あなたは嘘つきね。生まれ変わりは1回しかないってこと言わなかったのね」

光は何も答えなかった。じっと前を見ている。それから左右に目を向けた。慌てている。どうしたんだろう、と私は思った。

「どうしたの」

「あれ、大地?ここは大地の家じゃないか。さっきまでキャンプファイヤーしてなかったっけ」

「もしかしてお前、守か?」

大地が嬉しそうに尋ねた。

「もしかしてって、どこからどう見ても俺は俺だろ。キャンプファイヤーは終わったのか」

「とっくの昔に終わってるよ」

どうやら光として動いていた間の記憶はないらしい。教授は、守の人格は光によって消されたが復活できるみたいなことを言っていたが、一時的に光が守の人格を消していて、後から復活できるように手はずを整えていたのかもしれない。


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