表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/136

第九十四話 蹄の音

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵いとう すけたか。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久しまづ とよひさ。島津氏家臣で、島津家久しまづ いえひさの息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

新年の朝の冷えが、まだ地に残っている。


伊東祐兵いとう すけたか島津豊久しまづ とよひさ


厩の前に立っていた。


「今年は午年ですな」


豊久が、馬の首を撫でながら言う。


「古くから、前へ進む年とされる」


祐兵は、蹄の様子を確かめつつ応じた。


二人が世話をしている馬は


冬毛をまとい、静かに息を吐いている。


白い息が、朝の光の中でゆっくり消えた。


「馬は不思議ですな」


「人が急げば急ぐほど

 かえって落ち着きを失う」


「だが、信じて任せれば

 遠くまで運んでくれる」


祐兵は手綱を整えながら続けた。


「今年も、無理に走る必要はない」


「ええ。歩むべき道を、確かに進めばいいのです」


その足元では、小春こはるが藁の上を歩き


黒猫は厩の柱に身を寄せて


馬の動きをじっと見ていた。


「猫は乗れぬが

 見守ることはできるな」


「それもまた、大事な役目です」


二人は馬を引き


短い距離だけ、冬の道を歩かせた。


駆けるでもなく、急がせるでもない。


蹄の音が、一定の調子で響く。


「良い年の始まりですな」


「うむ。蹄の音が、穏やかだ」


午年の朝は


力強さよりも、確かさを選び


静かな歩みで始まっていた。


今年もまた


遠くへ行くためではなく


迷わず進むための一年が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ