第百二十七話 霧に潜むもの
祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介
祐兵さん…伊東祐兵。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。
豊久くん…島津豊久。島津氏家臣で、島津家久の息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。
小春と黒猫…二人の飼い猫
夜の山道に、霧が降りた。
音を吸い、気配を歪める白い霧だ。
伊東祐兵と島津豊久は、足を止めた。
虫の声が消えている。
「……出ますな」
豊久が低く言う。
次の瞬間
霧の奥で、骨が擦れるような音がした。
姿を現したのは、人の形に似て、似ていないもの。
背は高く、腕は不自然に長い。
顔は影に沈み、目だけが濁った光を放つ。
あやかしだった。
祐兵は刀に手をかける。
慌てない。
呼吸を整え、一歩前に出る。
「ここは、人の道だ」
言葉に応えるように
あやかしが地を蹴った。
速い。
豊久が横から踏み込み
斬り上げる。
刃は確かに当たった――が
肉の感触がない。
「厄介ですな!」
あやかしの腕が振り下ろされる。
祐兵は半身でかわし
地面の小石を掴んだ。
――投げる。
額、喉、胸。
三つ、間を置かずに当てる。
動きが、一瞬止まる。
その隙を、祐兵は逃さない。
踏み込み、腰を落とし
霧ごと断つように――
一閃。
刃が通った瞬間
あやかしは悲鳴とも風音ともつかぬ声を上げ
霧の中で崩れ
やがて、影ごと溶けるように消えた。
静寂が戻る。
虫の声が、恐る恐る再開した。
豊久は刀を収め、肩をすくめる。
「まったく……人の世に、未練が多すぎますな」
「だから、斬らねばならぬ」
祐兵は地を一度見下ろし
天を仰いだ。
「迷いは、道を歪める」
足元で、小春と黒猫が
霧の名残を嗅ぎ
何もないと知ると、静かに尾を立てる。
霧は晴れ
道は再び、ただの山道になった。
「行きましょう」
豊久が言う。
「ああ」
祐兵は歩き出す。
人の道を、人のままに。
それが、二人の剣だった。
仁王3を購入したので
今回はこのようなお話になりました^^;




