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祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


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第百十二話 湯煙の里

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵いとう すけたか。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久しまづ とよひさ。島津氏家臣で、島津家久しまづ いえひさの息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

小春(こはる)と黒猫…二人の飼い猫

冬の冷えが一段と深まった頃


伊東祐兵いとう すけたか島津豊久しまづ とよひさ


山あいの湯治場へ向かった。


雪を踏みしめる音が静かな道に残り


吐く息は白く長く尾を引く。


療養と休息


そのためだけの小さな旅である。


宿は古く素朴で


湯の匂いが梁に染み込んでいた。


荷を解くと、二人は言葉少なに湯へ向かう。


石造りの湯船から立つ湯煙が


外の寒さを遠ざけ


身体に溜まった疲れを


ゆっくりと溶かしていく。


湯の音だけが、静かに耳に満ちた。


「……効きますな」


豊久(とよひさ)の短い一言に


祐兵(すけたか)は目を閉じたまま頷く。


戦も騒ぎもない日々であっても


身体は知らぬうちに硬くなる。


湯はそれを責めることなく


ただ受け入れてくれた。


湯上がり、縁側で冷ました身体に冬の風が心地よい。


小春こはると黒猫は丸くなり


湯気の残る二人をじっと見上げている。


山の向こうに夕暮れが落ち


空は淡い紫へと変わった。


「また、明日も浸かろう」


「ええ。急ぐ理由はありませんな」


湯治場の夜は早く


静かに更けていく。


この一日が、何よりの薬となり


二人の身と心を確かに整えていた。

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