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祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


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第百話 七草の白粥

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵いとう すけたか。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久しまづ とよひさ。島津氏家臣で、島津家久しまづ いえひさの息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

夜明けの冷えが、まだ強く残る朝。


台所では、鍋に張った水が静かに揺れていた。


伊東祐兵いとう すけたか


まな板の上に並べた若菜を見下ろす。


(せり)(なずな)御形(ごぎょう)繁縷(はこべら)(ほとけ)()(すずな)蘿蔔(すずしろ)


どれも冬の土に耐え


今朝、摘まれてきたものだ。


「正月明けの身体には

 これが一番ですな」


島津豊久しまづ とよひさ


包丁を受け取り


若菜を細かく刻んでいく。


「腹を満たすより

 整える食だ」


米は控えめに炊かれ


柔らかくほどけ始めた頃合いで


刻んだ七草を加える。


火は強めず


煮立たせない。


白い湯気が


静かに立ち上った。


足元では小春こはるが座り


黒猫は鍋を覗き込みたそうに


一歩だけ近づく。


「味は薄いぞ」


祐兵(すけたか)の一言に


二匹は揃って瞬きをした。


椀によそい、箸でひと口。


「……沁みますな」


豊久(とよひさ)が小さく息を吐く。


「正月の名残が

 すっと引いていく」


「身体が、本来の調子を思い出す」


祐兵(すけたか)も静かに頷いた。


塩はほんのわずか。


だが草の香りと米の甘みが


確かに舌に残る。


猫たちには


味をつけぬ葉を少しだけ。


小春は匂いを確かめ


満足そうに尾を揺らした。


外では


町がいつもの朝を迎えている。


正月は終わり


日々が戻る。


七草粥の白さは


身体と心を同時に整え


新しい一年を


静かに歩ませる力を与えてくれていた。

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