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祐兵さんと豊久くん ――日向の空の下で――  作者: Gさん


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第九十九話 朝稽古

祐兵さんと豊久くん 登場人物紹介


祐兵(すけたか)さん…伊東祐兵いとう すけたか。紆余曲折を経て、飫肥藩初代藩主になった。知略に優れ、学問を愛する。

豊久(とよひさ)くん…島津豊久しまづ とよひさ。島津氏家臣で、島津家久しまづ いえひさの息子。武芸一筋で、まっすぐな心を持つ。

正月から数日経った朝


冷えた空気が肺に心地よく沁みる。


伊東祐兵いとう すけたか島津豊久しまづ とよひさ


庭先に並んで立っていた。


「……まだ少し、身体が重いですな」


豊久(とよひさ)が肩を回す。


「正月の膳が、いまだ残っております」


「なまりは、動けば取れる」


祐兵(すけたか)は短く言い


足を踏み出した。


まずは型。


剣を抜かず


体の運びだけを確かめる。


一歩、半歩、軸を崩さずに回る。


息を整え


無駄な力を抜く。


「豊久殿、力が先に出ているな」


「分かってはいるのですが」


豊久(とよひさ)が苦笑しつつ


もう一度踏み直す。


次は素振り。


風を切る音が


一定の間隔で重なる。


回数を数えず


感覚だけを頼りに続けた。


足元では小春こはる


二人の動きを目で追い


黒猫は少し離れた石の上から


静かに見守っている。


やがて汗が滲み


身体が温まってくる。


「……戻ってきましたな」


豊久(とよひさ)が息を整えながら言う。


「正月前の感覚が」


「身体のなまりは、気づいた時に払えばよい」


最後に軽く走り


深く息を吐く。


冬の空気が


胸の奥まで通り抜けた。


「これで、今年も動けますな」


「うむ。あとは日々を重ねるだけだ」


稽古を終えると


不思議と心も軽い。


正月の名残は


汗とともに消えていた。


新しい年は


静かな鍛錬から


確かに動き始めていた。

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