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王太子との婚約破棄後に断罪される私を連れ出してくれたのは精霊様でした  作者: 星井ゆの花(星里有乃)
幕間

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03


 今からだいぶ昔のこと、地上に双子の聖女がいた。姉はレイチェルといい、妹はララベルという名前だった。双子はとても仲良く、金髪の美しい髪も、好物のポトフも、大好きな花の種類も二人ともお揃いだ。

 特に精霊神様へのお祈りは、双子のうちどちらかが儀式を仕切るのが通例となっており、人々の生活にとっても双子の聖女は重要な存在だった。


「あら、レイチェル。今日は一人で精霊神様にお祈りに行くの?」

「ええ、ララベルは王宮で儀式のお仕事があるから。私だけでも精霊神様にお祈りしに行かないと」

「まぁ……熱心ね。けど、そんなふうに精霊信仰が厚いから、聖女の魔法が使えるのかしら」


 用事が重なれば双子で分担して、器用に物事をこなしていく。そんな日々が当たり前のように続くと思っていたある日、姉のレイチェルが菩提樹の木の下で一人の美青年と出会った。


「あなた、怪我をしているじゃないっ。大丈夫? 待ってね、私が聖女の魔法で治してあげるから」

「えっ気持ちは嬉しいが、実は僕の怪我は普通の方法では癒せないんだ。この菩提樹の木に、エネルギーを与えないと」

「精霊様の木に? 分かったわ。癒しの光よ、我の願いに耳を傾けたまえ」


 怪我をしている美青年オリヴァードをレイチェルは聖女の魔法で癒し……やがて二人は何度も菩提樹の木の下でデートを重ねるようになる。二人は自然な出会いで親しくなって、やがて恋に落ちたのだ。


 ただ一つだけ、困ったことがあった。レイチェルの恋人オリヴァードは、人間ではなく精霊神の息子だったのだ。


「あぁレイチェル。僕がキミと結ばれるには、キミを精霊にしなくてはいけない」

「オリヴァード、私……あなたのためなら、人間から精霊になるための試練を受けるわ」

「僕と結婚するために……なんて奇跡だ」


 レイチェルとオリヴァードが結婚するために、人間であるレイチェルはその肉体を天に上げて精霊にならなければならない。精霊候補の試練を受けることになったレイチェルは、聖女を辞めて地上を去ることにした。


「お姉様、本当に精霊様に嫁がれるのね。ううん、止めても無駄って分かってる……私達は双子だもの。お父様達や王宮の人々は反対しているけれど、私はお姉様の結婚に賛成よ」

「ララベル、ありがとう。もう私が人間界に戻ることはないけれど、心はずっとずっと、一緒」


 多くの親族はレイチェルが精霊に嫁ぐことを反対したが、双子の妹ララベルだけは味方になってくれた。


「お姉様、幸せになって。オリヴァードさん、姉をよろしくお願いします」

「ああ……約束するよ。レイチェルは僕が守る」


 菩提樹の木の下に天に向かう柱が降りて、レイチェルは生きたまま精霊界へと昇っていった。残された妹のララベルは、次第に聖女のチカラを失っていき、魔法を使えない身となった。

 その後、ララベルも当時有力者であったカエラート男爵へと嫁ぎ、ごく普通の人間として幸せな余生を終えた。


 さて、聖女『ララベル・カエラート』の子孫イザベルは、一体どのような精霊になるのだろうか。聖女レイチェルは、自分の曾孫『ティエール』と双子の妹ララベルの子孫『イザベル』が恋仲になって結婚するとは想像しただろうか。

 その内に秘められた不思議な魔力は、まさに先祖である聖女ララベルから継承したものだった。けれど、それに気付くものは長老となったオリヴァード以外、今のところいない。


 イザベルが将来どのような精霊になるか、答えはまだ未来に預けてある。だが、菩提樹と呼ばれる生命の木はきっと何処かで繋がっていて、子孫達を優しく見守っているのだ。


 * 精霊候補編2は、2020年5月9日(土曜日)に開始する予定です。

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* 2022年03月05日、長編版完結しました。ここまでお読み下さった皆様、ありがとうございました! 小説家になろう 勝手にランキング  i850177
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