96.ショッピングへ!
日課をこなしていると、INしたピロリからフレンドチャットだ。
『セツナくん、今日何か予定ある~?』
『ミュス狩りしたあと本屋に行く予定です』
『何もないわね! じゃあ、この間言ってた鞄屋さん連れていってもらえないかしら?』
俺予定言ったよね!? まあいいけど!!
『ゲーム内時間9時に南門中で』
『りょうか~い!』
まだ時間があるのでそのままミュスを狩り続けるとする。
レラントさん、日本酒持って行った方が値引きしてくれそうだけど、ここのところ小人族への手土産渡しすぎていて、いざというときの手になるか不安なので控えようと思う。
先行クランメンバーの懐は暖かいって聞いた!
ピンクのツインテールに毛先が藍色。白のパレオ水着装備が標準のピロリだったが、今日は黄色のバカンス風ワンピースを着ていた。肩に白と水色のストライプのシャツを羽織っている。
さらに隣には青い髪をポニーテールにした儚げエルフ。こちらの衣装は替わらず。濃いめのグレーのパンツに薄い紫のシャツだ。戦闘時はローブを羽織ってる。
「やっほーセツナくん!」
パーティーをぽいっと渡される。
名前よ。『可愛いあたしと従者たち』だってさ。
『案山子も欲しいって言うから、誘っちゃった』
『アイテムポーチ大容量が欲しいッ!!』
お客さん大歓迎っぽかったし、問題ないだろう。
南門から左手に行って、さらに奥へ。
『結構入り込むわね』
『紹介してもらわなかったらなかなか来ないところ。だからこそ初めて行ったときは熱烈歓迎してもらった。せっかくだからNPCとの会話を楽しんでください』
『それね~単なる薬屋じゃたいしてしゃべってくれないのよ。だけどセツナくん見てたらちょっと話をする努力した方がいいわよね』
『天気の話から始めようッ!』
完全に何も話すことがないときのやつー。
レラントの鞄屋は店の名前が『鞄屋レラント』だ。看板は小さく控えめ。ただ、店先の窓にいくつか鞄が並んでいる。
赤い扉を開けると、カランカランと音がした。
カウンターにレラントが現れる。
「いらっしゃいませ、セツナさん! ようこそ」
「こんにちは。今日は鞄を新調したい友人を連れてきました」
「ピロリです。よろしく~」
「案山子ですッ! 食材たくさん詰め込めるアイテムポーチを探しに来ましたッ!」
「これはこれは、ありがとうございます」
というわけで早速欲しい容量や最大出せる金額をそれぞれが言う。
「私は、出来れば600万シェル。出せて750万シェル。容量はもちろんなんだけど、可愛さも求めたいの~」
「俺はッ! 550万シェルまででお願いします! 普段はグレーのローブを羽織ってあちこち行ってるんで、色にはそこまでこだわりありませんッ!」
俺との差よ……。
そりゃ、ミュスの王の尻尾の金額が端金になるね。
「それはそれは。少々お待ちください。店内に並んでいる鞄で気になる物があったら言ってくださいね。奥から他の物を持って参ります」
レラントはほくほく顔(たぶん。髭でわからない)で一度引っ込んだ。
「ここら辺はおしゃれ鞄よね~。……いや、容量はそれなりか。これなら【持ち物】の分まで全部入れても大丈夫そう。白いサコッシュ……可愛い。しかも刺繍が髪色と同じ~。ピンクいいなぁ。これもレラントさんが入れたのかしら?」
「とにかく大容量。なんならリュックタイプでもッ!」
「リュックって言うと伝説の大商人を思い出すや……ぱんっぱんに膨らんでてさ」
「ちょっと見かけの問題出てくるかなッ?」
「案山子さんがいいならいいけど。せっかく顔いいのに」
ふーむと悩んでいた。
2人とも熱心に棚の商品を見ていた。
「お待たせいたしました。ご希望のお値段帯で揃えたのですがどうでしょう」
そう言って並べられた鞄は3つずつ。
ピロリへは、たぶん今日黄色のワンピースを着ているからだと思うが、黄色とオレンジの皮のウェストポーチ。
髪色の藍色のサコッシュ。花柄の刺繍が入っている。
さらに白地に赤とオレンジの刺繍が入ったサコッシュ。
「か、可愛いっ!!」
「容量もよくご確認くださいね」
案山子へはショルダータイプ。よく見かける胸前に鞄を持ってきてもよし、後ろにやってもよしのやつだ。
髪色の青、2つ目は黒。
もう1つは青いウェストポーチ。
「いいねッ! 容量が一番多いのは黒のウェストポーチかぁ……香辛料がもうどうにもこうにもストレージに収まらなくなってきてるんだよッ」
「料理人さんでしたか。来訪者の料理人さんはいつも鞄がいっぱいだそうですね。確かにこの黒なら大容量。今お持ちの物の5倍は入ります」
「5倍ッ!! また買い込める!」
ピロリは鏡の前でそれぞれを交互に着けて悩んでいる。
レラントは迷う2人をニコニコと見守っていた。
「セツナさんはどうですか? アイテムポーチの使い心地は」
「おかげさまで効率上がってます。俺的には今はこれで大満足なんですけど……2人を見てるとそのうちすごいお値段のも必要になるのかなぁって」
「こちらに長くいればいるほど荷物は増えますからねえ。特に来訪者の方々は定住はされないので、どうしても持ち歩くためにアイテムポーチは必須になりますね」
そう。クランハウスがあるのがラッキーなのだ。クランハウスとてもお高いらしいです。でもわかる。便利ポータル(帰還用)とタンスがすごく助かっている。
「あ、そうだ! レラントさん、こういった皮って使いますか?」
取り出したるは親分の皮!
「ほう、ビッグブルフロッグの皮ですか。美品ですね。ただ、ビッグブルフロッグはどちらかというと服用でして、ほら、セツナさんが今穿いてらっしゃるズボンの材質です。伸縮性があり、多少の爪や牙は通さないという優れものですから。服飾系の方用ですね」
「ほうほう……」
『セツナくん、それは商業ギルドで露店許可取って、プレイヤー用露店スペースで店出して売った方がいいわよ。親分皮それなりの値段したと思うけど』
『平均価格15万シェルだねッ!』
『ちょっと面倒で』
『本読みに行く以外全部面倒じゃないwww 露店許可は1度取ったら悪さしない限り永続的よ~』
ログアウト時にそのまま店を出しておくと勝手に売れるらしい。
『露店許可クエストやるなら手伝うわ……というか、八海山に手伝わせるわよ』
街の間をいったりきたりするおつかいクエスト始まるという。
『最初やり始めといてなんかのついでに進めようかなぁ』
『そうね、それがいいわね』
「これに、決めます!」
ピロリは白地に赤とオレンジの刺繍が入ったサコッシュ、案山子はおすすめのままに黒のショルダーバッグにした。
そして杖を出して登録だ。
「すでにお持ちの分の登録解除も持ってきていただければやりますし、冒険者ギルドでもやってもらえます」
「入れ替え済ませたらお願いしにきますね」
「よろしくッ!」
「今日はよいお取引をありがとうございました」
双方の利益になったのならよかったよかった。
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
お金を稼がねばっ!!!
ピロリはわりと、洋服に金が消えていってます。




