86.張り切って騎獣採りへ
普段ログインする時間は夜遅く。今日はみんな張り切っていて、俺は、リアル時間19時ログイン。つまり、ゲーム内は15時だ。
さすがにまだ全員は揃っていない。
閉店までに時間があるから、アンジェリーナさんの貸本屋で本を読んでいた。
この店の閉店は20時だそうだ。客がいなければもっと早く閉める。あまり遅いと悪いので、普段は18時には退散する。
本日も騎獣に関する本を読んでいる。
騎獣というか、騎獣を選ぶすべ、みたいな本だ。
『騎獣の見分け方』
『騎獣石の艶と種』
なんでも騎獣を選り分けて50年。騎獣アドバイザーとやらの書だ。
騎獣は基本1人1つ。事故で騎獣石を失わない限り、次の騎獣は得られない。
わざと無くしたりしても、前の騎獣の匂いがあると、騎獣石は応えてくれないのだとあった。
まあ、1人いくつも騎獣を持つとか、許されないだろうな。
何が出てくるかは運次第。
それをアドバイザーは見極めることができる! と豪語していた。
本当なら、本当ならすがりたいが、きっとビミョーなやつだぁ!! 競馬場にいる人たちより当てる率低いだろ……。あの人たち本気で情報集めてるしなぁ。
騎獣ガチャ、難しいだろうなぁ……アドバイザー……頼ってみるべきだろうか!?
八海山∶
セツナ君、全員揃ったが。
セツナ∶
早っ!! 連絡取ってみます。
『こんばんは。一応友人もアランブレに揃いました。これから明日の夜くらいまではみんな動けます』
『夜の移動になっても大丈夫なら、これから行こうか? ファンルーアから飛行船に乗るんだ。騎獣石の谷への直行便がある。とはいえそこから少し行く。ご友人の方が強いんだっけ?』
『そうですね。俺よりずっと強いです』
『それは頼もしいね。準備ができたらファンルーア集合にしようか?』
『少し待ってくださいね』
セツナ∶
ファンルーアから飛行船で、夜の移動になっていいなら今から行くか? って。
ソーダ∶
夜でも構わない。ヴァージルはイェーメールだろ? 酒屋集合にしといて。そこから八海山のポータルでファンルーアへ行こう。飛行船近くのポータルだし、まあ変な輩には絡まれないうちに飛行船に乗れるだろ。
ということでイェーメールに集合。ポータル場所が酒屋なのがなんとも。ドワーフうろついてる。でももう店閉まってるぞ……。
公式ぐらいさすがにチェックしろとのお言葉をいただいてから、まあ、3日に一度くらい覗くようにしている。
今回のアップデートは騎獣導入がメインだった。
ファンルーアの閉ざされていた飛行船乗り場が開かれ、騎獣の谷付近への運行がされることとなる。付近なのは、上空に強い風が吹いて、すぐ側に発着場を作れなかった、という話。そこから行く道は昼は15~25Lv帯、夜は20~30Lv帯のモンスターが出るそうだ。
まあ、みんながいたら平気だろう!
ドワーフがうろつく中、甲冑を着けていなくともヴァージルはイケメンオーラ全開だった。というか、プレイヤーが周りうろついてるよ。
「やあ!」
「こんにちはーっ!」
「お久しぶりです!」
「お元気そうでなにより」
クランメンバーからの挨拶に、ヴァージルはにこやかに微笑む。
きゃあ、と周りから声が上がる。
同時に、マスタ-? とここにいるソーダの姿にいぶかしがる人が。
『八海山、とっとと行くぞ!』
パーティーチャットでソーダが言うと、八海山がポータルを出す。
「どうぞ、行きましょう」
たぶん、ソーダがわざと目立ってくれている。ギャラリーが多すぎるんだよな。
ということで俺が率先してポータルに乗った。これでヴァージルも来てくれるだろう。
「じゃあ、お先!」
ファンルーアに着くと、すぐそこが飛行船乗り場。
お、乗り場が増えてる! 断崖絶壁の崖に、接岸する形となっているのだが、前回は一つしか伸びていなかった橋が、今日は増えて、その先に飛行船が繋がれていた。
「あ、ヴァージルさん、パーティー渡してもいいですか?」
「ああ。助かるよ」
ソーダ:
おお……初NPC入り!!
案山子:
俺ッ! 結構イケメン目指して顔いじったのにッ!! 完全負けてるッ!!
ピロリ:
さすが、聖騎士ナンバーワンイケメン!!
飛行船は、メインクエストの時のようなイベントもなく、ゆったりと進む。
1時間ほどの航行らしい。
これはスキップもできる。パーティーメンバー全員の同意があれば時間も進んで到着するらしい。ちょっと寝るのかな?
だが、今回はパーティーメンバーにヴァージルがいるのでスキップはなかった。
「ヴァージルさん、今日は甲冑じゃないんですね」
「ああ、あくまで私的な用事だからね。あと、今謹慎中」
「ええっ!?」
「この間のことを怒られてしまってね。しばらく暇なんだ」
「まさか、クビになったりは……」
「それはないよ。1ヶ月くらい大人しくしてろって言われただけさ。一応部下たちへの手前。上が好き勝手してお咎めなしはダメだからね。結果的にたいした成果も得られなかったし」
証拠もないから乗り込めもしないものではあったんだろうが、あらまあ、である。
「それで、謹慎中の方がこんなところにいて大丈夫ですか?」
八海山の質問に、イケメンスマイル。
「屋敷に籠もっていたら身体が鈍ってしまうしね。しばらく遊んでないし、いいだろう? ちょっと付き合ってくれ」
まぶしいっっ!!
リアルなら気絶者出るぞっ!
そこからはソーダが騎獣石の選び方を聞いたり、どんな種類があるか、望みの騎獣を手に入れるコツとか、ヴァージルが決めたときの話などを聞き出していた。
あの真っ白な甲冑をがっちり着込んでいたときよりも、ずっと話しやすい印象だ。
かなりみんな楽しく会話をしていたと思う。
と、ガクンと飛行船が高度を落とし始めた。
「着いたようだね」
飛行船は甲板がある。魔法で保護膜を張っているだのなんだの言っていて、風に吹かれることなく、辺りを見渡すことが出来た。
眼前に広がるのは峡谷だ。深い谷が広がっている。岩肌がむき出しになって、狭い谷間が延々続いているのだ。
「騎獣石が採れるのはもう少し先に行ったところだ。竜の爪痕と呼ばれる一番深い場所に、騎獣石があるんだ」
「うわあ、やばい、めっちゃ楽しみ」
「早く、早く行くのじゃぁ~」
みんなのはやる気持ちはわかる。なんだか俺もドキドキしてきた。
馬を!! 馬をゲットしたい!!
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
飛行船に別ルートができました〜
小説家になろうさんのコンテンツ
『今日の一冊』で
『逆行令嬢リリアンヌの二度目はもっと楽しい学園生活〜悪役令嬢を幸せにしてみせます!〜』
が紹介されました。
ジャンルがかなり違うのですが、興味があればもしよかったら読んでください。
https://book1.adouzi.eu.org/n1028jp/




