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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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73.ロフトベッドとソファ

「素敵な物をありがとうございます」

 ファマルソアンとじゃらじゃらいってる布袋をやりとりしてた。いくらかかったかは聞かないことにしよう。


「さあ、セツナさん、爪を、爪を!!」

「ここ、で?」

「私だってアイテムポーチ持ってますっ!」


 明るい場所で出す物じゃないと思うんだけどなぁ。まあ約束だからどんと、側のテーブルに。すると、ファマルソアンはそそくさとしまい込んだ。


 そして駆け出す小人族(ドワーフ)たち。

 地鳴りがする。

「ここら一帯酒臭くなりそー」

「私はここでおこぼれに預かる予定じゃ」

「えーなら、今後の武器修復のために仲良くなる作戦決行しようかなッ」


 案山子自身は杖職だが、ツルハシなども修繕対象だという。案山子と八海山(ポータル係)はクランハウスに戻って、柚子はマイコップを準備し、椅子に座る。



 俺とソーダ、ピロリ、半蔵門線は店がどうなっているか怖い物見たさで向かうことにした。ファマルソアンも連れて行った。今にもどこかに行きそうだったが、無理矢理引っ張った。貴方のお店ですから。


 店と同じだけの敷地が隣にあるのは、小人族(ドワーフ)たちが並ぶスペースだと言っていた。今、小人族(ドワーフ)たちが、店員に誘導され綺麗にならんでいる。


「列の誘導ロープ作った方が早そうだな」

「検討します」

「騒いだヤツには売らないって張り紙しておいたら?」

「採用します」

「敷地内で封を開けたら出禁にするでござる」

「即採用です」


 座り込んでの路上呑みはしていないが、ちょっとだけとラッパ飲みはしている。


小人族(ドワーフ)の評判下がるなこれ」

 俺が漏らした言葉に、ラッパ飲みをしていた奴らがびくっと肩を揺らす。

 しかし、山盛り持ってるかと思いきや、一人……3本?


「以前話していたように、購入制限を設けました」

 ID提示必須、週に3本までしか購入不可にしたそうだ。


「それなら、別に追加運ばなくてもいいですか?」

「いえ、奴らの酒への執念を舐めてはいけません。酒を呑まない友人人族とかに頼むんですよ、間違いなく」

 ありそー!!


「今日持ってきていただいた分はあの鍛冶場の通りの小人族(ドワーフ)で売り切れると思いますので、出来ればもう一度運んでいただけると助かります。他の購買層にも試していただきたいですしね。彼らだけが楽しむものでは困ります」




 八海山と案山子が帰ってきたところで、案山子を置いて俺たちはもう一回ローレンガへ飛んだ。

 ファマルソアンたちもアイテムポーチを持っているというが、それでも移動は専用の飛行船や馬車になる。商売人にとって、ポータルは垂涎もののスキルなのだそう。


 案山子の料理は彼らにかなり好評で、クランが今回の日本酒を運ぶ手伝いをしていると聞いて、心証が爆上がりした。今度、格安でソーダたちの武器をメンテナンスしてやると言っていた。

 目論見通りに話が転んでクランチャットは大賑わいだ。


 こっそり案山子に例の謎の紙切れを鑑定してもらったが、ナンバー2だった。1と2はあの部屋で見つかったということだ。

 ミトが、謎の紙切れを集めていたのか、それともミトの元にあった紙がちぎれて謎の紙切れになったのか。それがわからない。多分全部か、だいたい集めないと内容が分からないタイプなのだろう。


 ヴァージルに紙切れのナンバーをハトメールしておいたが、彼から返信はなかった。





 そしてまたミュス狩りからの読書そしてミュス狩りのルーティーンをこなしていたところ、連絡が入る。ああ、そうかあれからもう10日も経っていたのか。


 本日、ロフトベッド並びにソファの搬入日です!


 めっちゃテンション上がる!! 高い買い物。さあ、どんな感じかなぁ~。


 またもやほいさほいさと人手を使ってクランハウスに運び込まれる。ロフトベッドはさすがにこちらで組み立てるらしい。

 端的に言えば、邪魔なので少し出ていてくれと言われた。はい。


「お待たせしましたセツナさん」

 ひょっこり顔を覗かせたマルスに、待ってましたと俺は部屋に踏み入れる。


「おおおお!!! すごい、すごくいい!!! ソファ座っていいですか? ふ、ふかふか! 手触りも最高。寝具の色合いも落ち着いていていいい!!」

 最高なんだが!!

「ありがとうございます。本当に、素敵なものを、ありがとうございます!!」

「喜んでいただけてよかったです」

 そして精算だ。マルスにロフトベッド代とソファ代。ソファのクッション等はマルスからの発注という形。寝具代は運んできてくれた繊維工房わたげの店員さんに払った。残金が100万シェルを切りました。


 家具って高いね。でも、ゲームの中とはいえ、この手触り、弾力はたまらない。


 サイドテーブルが、意匠を凝らしていて素敵だ。透かし彫りとか入ってる。一階のテーブルと同じような感じだった。


「それじゃあお暇するね。どうぞ堪能して」


 ソファをなで回す俺に、みなさんさささと帰っていった。

 幸せだー。

 そうだ、お礼言っておこう。


『布団ありがとうございました。色合いも手触りも最高です!』

『こちらこそ、おかげでクエスト出るし、NPCフレンド増えるしありがたかった。何か裁縫関係で必要なことがあったら声かけてね』

『こちらこそ何か相談があれば。俺は言うほど役に立たないけど。聞いてみるだけ聞いてみてください』

『ありがとう(笑)』


 今日はもうこれで満足だ……なわけがなく。よし、本を借りてこよう。そしてこのソファで読もう!




「こんにちは」

「いらっしゃいセツナくん」

 美しい横顔に会釈して、俺は借りていく一冊を選ぶ。

 初めてのソファ読書にふさわしい一冊を!!


「これをお願いします。今日は、借りて部屋で読みたいと思います」

「あら、珍しいのね」

「実は、ソファを新調しまして……」

「それは素敵ね。はい、楽しんで」


 初めての読書は『星空の歩み方』。星座と各地のシンボルの話だそうだ。シンボル? と思ったが、つまり各神殿にある彫像のことらしい。


 ウキウキでクランハウスへ飛んで、いざ読書! と思ったらソーダが現れた。

「よ、セツナ」

「ソーダ俺の部屋見て」


 思い切り自慢しました。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 貸本屋で本読まないとは 随分嬉しいらしいですね
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