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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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69. 憧れのロフトベッド

 本当はもう一度アンジェリーナさんに会いに行こうと思っていたが、これ、酒臭い判定になるのかなぁと悩みやめました。

 お酒は飲まないのよって、前に言われたしね!!

 ミュスの数減らすのもいいなと思ったが、俺は、金を手に入れてしまったのだ……。

 そう、ロフトベッドのお値段確かめに行きたい!!!


 こー、箱庭的に部屋の中充実させて行くのは、それはそれで楽しいなって思うんですよっ!!


 部屋狭いけど。だからこそ創意工夫を!!


 てことでマルスの家具店にGOだ。

 こっちの通りに来るのも久しぶりだなぁと思いながら街歩き。お金に余裕が出来ると、どうしても売り物に目が行く。

 あー、鞄買ったばっかりだけど、鞄資金を貯めておくのもいい。ロフトベッドプラスソファの話はありだなぁと思ったのもある。


 あとは装備か。でも、ミュス狩り一辺倒な俺には必要のないものかもしれない。


「こんにちは~」

「やあ、セツナさん」

 店内にある家具はどれも装飾が素敵だ。シンプルだけど、邪魔にならない程度に入っている彫りがきれいなのだ。


「実は、ちょっとまとまったお金を手に入れて、見積もりしてもらいたいなと」

「ああ! ロフトベッドだね。いいよ。予算はどのくらいなのかな?」

「それが、まったく見当がつかなくて」

「ああー。そうだな、150万シェルあればそれなりのものができるよ」

 想像していたけど家具高いっ! ソーダがテーブルを買うとき、全部で100万で揃ったら御の字だと言っていた。そしてあのテーブルは予算オーバーだとも。


 布団と揃えたら尻尾分が吹っ飛ぶ。が、まあ、まだ歯の分があるっ!!

 本当に金がなくなって、欲しいものが出来たら、ファマルソアンにミュスの宝珠売ればいいや。

「それくらいならなんとか」

「じゃあ、一度ベッドを入れる部屋を見せてもらえるかな?」


 ということでクランハウスにご招待することになった。

 NPCも招待して、こちらが一緒に入れば中まで行けることは、テーブル搬入時に証明済みだ。


 そして容赦ない一言。


「うん。狭いっ!」


「でしょう!!」

「ロフトベッドはいいとして、その下は前に言っていた通りソファにするつもりかな?」

「それがいいかなぁと思ってます」

 本屋閉まる時間だし、ミュス狩りもなぁってときに、ちょっと部屋で読むとかもしてみたいなと。気持ちみたいなものだ。

「タンスは必要なんだろうし……このタンスに雰囲気合わせたものにしようか」

 ソーダが用意してくれた俺の部屋のタンスは、明るめの引き出しが3つある、誰もがイメージするようなシンプルなものだった。


「ソファもうちで請け負う?」

「負担でなければ。正直家具屋にまったく伝手がありません」

「枠はうちだけど、そうなると俺の知り合いにクッション部分とかは発注してよい?」

「……おいくらくらいに?」

「俺の作る部分は値引きできるけど、そうだなぁ……ロフトベッドと同じくらいかかるかも。1人掛けなら70万シェルくらいだけど、ゆったりしている方がいいだろう?」

 ロフトベッドの下を少し小さめの2人掛けと、サイドテーブルまたはサイドチェストにしたら、150万シェルくらいになりそう。


 よいお値段しますねえええ。いや、だが俺には、金がっ!! あるっ!!!


「そこまでなら出せます」


「ずいぶん稼いできたんだね」

「運がよかったです」

「じゃあ、ソファまで請け負ってしまおうかな! 布団類はどうするの?」

「どこか探そうかと思ってました」

 アンジェリーナさんに聞いてね!!

「なら、ソファのクッションを発注する知り合いのところで頼んで、セットで少しでも割り引いてもらおうか。色も合わせたいだろうし」

「はい! お願いします!!」

 時間があるので今日のうちにそこら辺の話も詰めようか、ということになりまたもや移動。


 何色にしようかなぁ~。

 家具や寝具を買うのは新生活の時にごそっと揃えて以来だ。しかも、リアルの話で、そうなるとお財布事情からそこまで高いものというわけにいかない。こんな風にオーダーメイドなんてもってのほかだ。


 と、待てよ。また家具を探した時のようにクエストあるのかな?




 たどり着いたのは『繊維工房わたげ』。

 出迎えてくれたのはおばあちゃんだった。

「おや、マルス。いらっしゃい」

「カミラさん、こんにちは。仕事の話なんだけど、いいかな?」

「こっちで話そう」

 店には布がところ狭しと並んでいた。招かれたのはその奥の部屋だ。

 扉を開けるとそこは工房の名にふさわしい場所だった。

 たぶん糸巻き機が3台。そして機織り機が5台もある。奥にまだ続く扉があって、何やら音がする。


「さあどうぞ」

 部屋の隅のテーブルへ促されて座った。

 バタンバタンと機織りの音に負けないように、カミラが声を張る。

「それで? どんな注文なのかしら」


 マルスから説明を受けたカミラは、何度も頷きながら何やら書き付けている。

 マルスも、借りたペンと紙に、頭の中にあるだいたいの設計図をさらさらと描いていた。それはそれですごい!


 チェストかテーブルかで、テーブルを選びました。

「あとは生地と色ね。どちらを優先させる?」

「生地でお願いします!」

「それなら……モヤシラ! 布の見本持ってきて!」

「はい!」


 機を織っていた女の子が籠を抱えてやってくる。

 オレンジ色のショートボブ。犬耳? いや、尻尾の模様をみるに、キツネか! アメ色の瞳は瞳孔が細い。

「布によっては染められない色もあるからね」

 そう言って、カミラとモヤシラの手により机に見本の布が並んた。


「まず布団からいこうか。肌触り優先だろうし」

「普段ならここらへんの布がおすすめですよ〜」

 モヤシラが2つを差し示すので俺はそれを撫でる。うわぁ、どっちも捨てがたい。

 すべすべじゃなくて、でもゴワゴワもしない。絶妙な肌触りだ。


「どちらも甲乙つけがたいのなら、色で決めたらどうでしょう」

 色は涼し気なのがいい。それでいて落ち着いた色。

「青みの強いグレーとかってできますか?」

 希望を言うと、色の見本、配色カードをモヤシラがめくる。

「これ、#80aba9あたり?」

「あ、いい色ですね」

 思い切りカラーコードなんだな。まあ、髪や目の色を決めるときも、カラーコード入力欄があったくらいだ。


「それならこちらの布の方が希望通りの発色になると思うよ」

「掛け布団なら、表側はこの色で、内側は生成りにすればお値段も抑えられますよ」

 カミラに続いてモヤシラからの提案。

「それでお願いします!」

 そしてこの色の出る、ソファに使えるしっかりとした生地を選んで終わりだ。


「モヤシラは来訪者で、最近アタシの店に入った子なんだ。なかなか筋がいい。布団はこの子に作らせてもいいか?」

 やはり来訪者だったようだ。

 そしてこちらを、とても期待のこもった目で見てくる。


「まあ、お任せしますよ」


 カミラが失敗したものは売ろうとはしないだろう。

「ありがとうございます! 頑張ります!!」


《モヤシラからフレンド申請が届きました》


 んんんんん、プレイヤーはノーカウント!!!


ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


ちょっとお金が入るとす〜ぐ使っちゃいます。

去る3月始まりました!!

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― 新着の感想 ―
プレイヤーも就職出来るんですね。 すっごい不定期出勤に…
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