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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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67.店舗選別

 もうアランブレに帰りたいのだがと言ったが、聞き入れてもらえなかったです。

 柚子は柚子で、酒を売る店!! とわくわくモードに入っている。


「店舗候補地は2つ。1つは彼奴らの店に近いが極小の土地。置ける商品は十種ほど。在庫置き場などを考えてもそれが限度。もう1つはその5倍はある土地。ただし、醜き小人族(ドワーフ)どもの店と真反対の土地。置ける商品は三十種。ニホン酒の数は増えないがな」


「あんまり近いと毎日買いに来ますよ、あの人ら。ちょっと離れてるくらいの方がいいんじゃありません?」

「私もそう思う。ファンルーアからイェーメールには定期便があるんだ。うちの商団のね。週に1度。足りるかなあ」

「あんまり酒漬けにすると仕事にならないから、品薄でちょうどいいでしょう? 他の酒は他の酒で売っておけば」

 ニホン酒が手に入ったぞでしばらく酒盛りストリートになりそうだよ。


「あの自制心皆無の者たちだからな……アクセサリーが出来るまで販売はしないことにしよう」

「ああ……それでお願いします」

「セツナさんはこの件に噛むか?」

「噛むとは?」

「店の経営に加わるか?」

「時間がないですね」

 本屋に行けなくなるじゃないか。

『せっちゃぁんん!! 関わっておけ!! 絶対関わっておくべきじゃよ!』


「お友だちが異議があるようだよ」

 ふふふと笑っている。

 発言権を得たと、柚子は何度も頷いた。


「せっちゃん、お金は、いくらあっても、いい」

「えーでも、そのせいでこんな風に時間を拘束されると困るなぁ」

「ああ、来訪者の特性は把握しているから、その点は理解している。もちろん、あちこち動き回りたくなる性質なのもね。一カ所に留まっている方が珍しいということも」

「じゃあどんな風に経営に参加できるんですか?」

「そうだな、今回の店は酒屋だ。そこで売り出す酒は別にニホン酒じゃなくてもいい。旅へ行った先で酒を仕入れてきてくれるとそれはそれで面白い。さらに言えば、今回のネックは輸送費と輸送時間だ。君ら来訪者はそれを短縮できるスキルを持っていると聞いてるよ」

 ポータルのことか。

「残念だけど俺はその能力はないんだよね」

「はっちゃんはあるのじゃ」

「はっちゃん?」

「クランメンバーじゃ」

 ふむ、とファマルソアンが口元に手を当てて少し考え込む。案山子と並べたら化学反応が起きそうなくらいのイケメンだな……エルフって得。


「なら、君らのクランと契約しようか。たまに、気が向いたときでいい。ローレンガからニホン酒を運んでくれたらいい。運んだ分の純利益の30パーセントだ」

「80パーセントじゃっ!」

「定期輸送なら喜んでだが、それは違うのだろう? 40パーセント」

「70パーセントは欲しいのじゃ。彼奴らの様子から一瞬で売れるんじゃから、在庫という概念もないじゃろうて!!」

「ならば、月に100本以上の制限付きで60パーセント。これ以上は無理だ。君らの性質上、できない月もあるだろう。その場合はその月のマージンはなしということでいい。契約違反とは言わない。100本未満なら同様に利益分配はなしだ。新しい土地で新しい商品を見つけてきたらボーナス」

 まあ、俺が個人的に彼らに酒を持っていったら寄付になるだけだしなぁ。利益を取る気もない。それよりは店に卸して商売の方が儲かりはする。


「ふむ……リーダーに一応報告せねばならぬが、問題ないと思うのじゃ。どうじゃ? せっちゃん?」


 小人族(ドワーフ)の柚子とは嫌悪感なくやりとりするんだなーとぼけっと見ていたら、突然話を振られた。


「え、ああ。まあ確かに相談した方がいいね。ペナルティがないなら、問題ないとは思うけど」

「かなり君らに寄り添った契約だと思うんだ、我ながら。それもこれも、セツナさんならまた面白いものを手に入れてくれるんじゃないかという下心が多大にあるっ!」

 下心言っちゃってるよ……。


『せっちゃん愛されてるのじゃ……』

『この人怖いから嫌っ』




 馬車から飛行船へ乗り換え、イェーメールへ帰還。一緒にニホン酒も買い付けてきたようだ。木箱がいくつかあった。


「どうせニホン酒だけじゃ足りないから、他の酒もがっつり売るよ」

「セット販売とかしちゃえばいいんですよ。ニホン酒とウィスキー飲み比べとかあほな企画で。それでもきっと買ってくれますって」

「いいですね、そのアイデアいただきです」

 酒に目がないもん。

「ニホン酒ばかり買えないようなやり方を考えなければ……」

 ニホン酒ばっかり売れちゃいそうだもんなぁ。


 そのまま店舗候補地に連れていかれた。本当に街の真反対にある。しかもかなり広い土地だ。イメージ、田舎のドラッグストア。店舗と広い駐車場。

「彼らは並びますから、近隣住民に迷惑を掛けないようにしなければなりません。店を開けるのも午後5時からにしましょう。それでも毎日酒が売れるのなら、余裕で黒字ですよ」

 ハハハと笑うファマルソアンはとても悪い顔をしていた。


 この辺りで俺たちの時間切れ。

 また起きたらルンゴのところに報告に行こうという話になった。

 そして、俺も観念してフレンドになりました。

 めちゃくちゃ嬉しそうだったが、俺は不安です。いつかミュスの宝珠要求されそー!!




 今日は絶対にアンジェリーナさんに会いに行きます。


 ということで、ログインする。リアル22時が、ゲーム内午前0時なのだ。

 ソーダには柚子が連絡しておいてくれたらしい。

『セツナ、聞いた。すごい楽しそうな契約じゃん。運べない週があっても許されるのがいい』

 ゲーム時間の1ヶ月は俺らにとって10日間だ。

『純利益を上げればこっちに入ってくる金も増えるから、10日に1回は皆のアイテムポーチ空にして運び屋やろうぜ。それくらいの暇はありそう』

『やるなら全員でやった方がいいよな』

『回数増やすとドワーフが酒漬けになってなんか弊害イベント起きそうだから節度を守ろう』

 ここの運営ならやりかねないらしい。


『朝になったら返事しておくよ。それまではミュス狩ってくる』

『ルーティーンお疲れ』


 身体動かさないと鈍る(気がする)からな。最近は遠くまで見るようにしたら【鷹の目】と【夜目】が増えた。夜の狩りは、見るんじゃない、感じろ! でやってたので、じっと目を凝らすようにしたらまさかのスキル。何が出てくるか本当にわからないな。


 日が昇ってきて、貸本屋開店時間の九時になったので、ギルドで尻尾を売り払い、意気揚々と向かう。

 が、目の前に舞い降りるハト。


『セツナさん、どうです? クランの方の反応はどうでした? よかったら一緒に店舗の内装考えましょうよ!!』


 うっきうきのハトメールが来た。

 フレンド交換やっぱりしたくないタイプじゃんー。パタパタひっきりなしが怖い。

 お昼になったらイェーメールに行きますと返事をして、とにかく、アンジェリーナさんに会うだけは会いに行った。やっぱり綺麗だ~。

 本を2冊読んでお別れです。


「忙しそうね、頑張ってね!」

 笑顔がまぶしい。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


ちょっと、店舗に係る下りの数字は何度も悩んで変えてるので突っ込み無しで〜どうすべきか決まりきらんかった……。

とりま、配達係りとエルフの商人に関わったということで!

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更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 忙しい(不本意)
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