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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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62/361

62.オークションで盛り上がる

 明るかった場内が暗くなる。そして中央の舞台にスポットライトが当たった。

「みなさまお待たせいたしました。これよりオークションを開始いたします。本日は選りすぐりの商品が出品されております。お手元のカタログと併せて、是非お楽しみくださいませ!」

 そして次々と商品が運ばれてくる。


 カタログは、俺が1冊もらった。それをみんなで回し見ている。

「すごく素敵だけど絶対手が出せない値段よね、これ」

 ピロリが指したのは宝石が山ほど嵌まったティアラだ。

「呪いのティアラってあるぞ。ステータスに何かデバフつくんじゃね?」

「外せない類いの物でござるね、きっと」

「ブタになる呪いかもしれんぞ」

「美味しく調理されちゃうッ!」

 みんな言いたい放題だ。


 ティアラは前の前の席の、なんだか派手なドレスをお召しのご婦人が買って行った。

 欲しいときは番号札を上げるそう。そして高らかに出す金額を宣言する。ご婦人の声、合成かと思うほど高かった。


「さて、みなさま。ご存じですよね、あのにっくき害獣。ミュスを」


 おお!!!! と応えそうになったところをソーダに取り押さえられる。

 あの、ごめんちょっと。つい。


「そのミュスの王たるものが討伐されました。さあごらんください、このミュスの尻尾を!!」


 会場内がざわつく。

 その空気が二分化されているのを感じる。

『……きもいなやっぱり』

『ね。やっぱりあれは無理』

 周りに配慮してパーティーチャットです。

 そうやって俺らと同じような反応をする者が半数。

 もう半分は食いついて、札を振ってる。わあ……いっぱいお金払ってくれそう~。


 俺たちはこれには参加できないので、パーティーチャットで応援するしかできない。


「50万!」

『おおお……本が1000冊!』

『その、すぐ貸本料金に換算するのやめろよ。1000もないだろうあそこ。図書館ならあるぞ』

『図書館に興味はない』

「55万!」

 そこら辺からは3人がどうやら牽制し合っているようだ。なんと100万を越えだした。

「110万だ! どうだ!」

「120万!!」

「くっそ……130万!」

 きゃーもっと、もっと頑張ってえ-!! だ。

 手数料5%だとしてもかなり美味しい。はっ! これ、念願のロフトベッドか!?

「200万」

「なっ!?」

「貴様っ!」

 おおおお!!!

『テーブルより高くなったぞッ!』

『あの単なる尻尾が……爪と歯はどうなるんだこれ』

『ミュス、尻尾しかドロップしないからさらに高いんじゃない?』

『ありえるでござる! セツナ殿。小金持ちさんになれるでござるよ!』

『……え、200万でも小金なの?』

『先行クランはそれぐらい常に持ってるよ』

 なんと……。

「それでは、そちらの12番さんが200万で落札となります!」

 200万は小金……いや、それでも俺にとっては一財産!


 すべてのオークションが終わると、落札者は金を出して品物を受け取るらしい。セツナは出品者ということで裏方も見せてあげるよと言われ、先ほどのメイドの後をついてきている。床が赤い絨毯張り。壁が黒い石で出来ていて、装飾が金色という、大変どぎつい、金あるぞ感がすごいやつ。

 と、廊下の先で、尻尾を落札した12番さんと、ギルド長が何やら話しをしていた。そしてギルド長はこちらに気付くと首を横に振る。

 だがその仕草で12番さんもこちらに気付いた。

 ダメダメって言われてた感じがするけど、もう止められないだろうこれ。


 メイドも気付いたようでかくんと直角に折れて左の通路へ俺たちを誘導しようとしたが、何かのスキル持ちなのか、一瞬で側にいた12番さん。こわっ!

 さらにソーダたちが黒服からガチ戦闘服に早変わりしてる。

 こわっっ! 俺出遅れ黒服なんですけど!?


「初めまして、貴方がミュスの王を倒した方ですか?」

「えー、ハジメマシテ」

「素晴らしい偉業ですね……得られたものは尻尾だけでしょうか? 他にも何か普通のミュスとは違うものはありませんでしたか? もしあれば是非わたくしに譲っていただきたい! もちろん金なら払います。というか、お金以外出せるものがありません。宝石……宝石もまあ、買えばあるのですが……是非、他の、今までにないものを!」

 圧よ、圧!

「ええと……」

「お客様、オークション内でのオークション以外の品物の取引は禁じられております。こちらの方もお困りなので……」

 メイドの言葉に男は大げさに嘆く。

 12番さん、プラチナブロンドの髪の毛を肩口で揃えて、あー、耳長エルフさん。イケメン美丈夫高身長。

「ああ、申し訳ない。怖がらせてしまいましたか。本当に申し訳ない。わたくしは単に、珍しいものに目がないのです。ぜひご連絡先を……」


《ファマルソアンからフレンド申請が届きました》


 お、お断りっっ!!


 即拒否ったら、ショック受けてた。

 怖いって。あの距離一瞬で縮めてくる人だよ。


「お客様、よろしければこちらで席を設けますので、今日のところはお引き取りください」

 オークションで司会をしていた人だ。

 入り口の黒服さん引き連れていらしてる。


「そうですね。是非お願いします」

「よろしいですか?」

 困った顔をしつつ尋ねられて、俺は頷く。

 ダメっていったらつけられそうじゃない?

「それではまた連絡いたしますので」

 と、黒服に脇をがっちりガードされつつ、12番さんは手をふりふりして去って行った。


「すまんな、セツナ。あの手のやつらは、しつこい」

「あの人ひゅっって、ひゅって一瞬でここまで来ましたよ!?」

 ちょっと真面目に、殺されるってなった。

「セツナ様、大変申し訳ございませんでした。こちらの不手際です」

 メイド共々司会さんが深々頭を下げた。

 いやこちらも軽々しく館内見学だーっとパーティーチャットで盛り上がっておりました。


「あの手の方は、約束通り席を設けないと追いかけ回されること必至なので、ご迷惑かとは思いますが、一度だけお話をしていただけると」

「あ、はい。それは構いませんが……あれ、ミュスの他の物も欲しいってことですよね」

「そうですね。珍しい物を集めていらっしゃる、うちの常連の方なのですが、今回は特に初めての、今まで聞いたこともなかったものだと興奮していらっしゃいまして……」

 初討伐ですもんね。

「あるって言ったら欲しいって言い出すだろうし、ダメじゃすまないんだろうなぁ」

 まあ、売れるのなら売ってもいいんだけど。

「……お値段の相談とかしてもいいですか?」

 すると司会さん、とてもいい笑顔で頷いた。

「搾り取って差し上げましょう」

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


このエルフさんとはしばらく遊びます。

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― 新着の感想 ―
わぁ…頼りになるぅ…
そのうちまたいつかオークションに出品するので、運よく出会えたら入札してくださいね、で済ませられないの??
蒐集家金髪長身イケメンエルフだ! キャラ立ってんな〜
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