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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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60.子どもたちの証言

 ライフワークとも言えるミュス狩りを思う存分して、日が昇ってきたところで冒険者ギルドへ。いやー、アイテムポーチ最高。お金貯められたらもう少し大容量を持ちたい。4時間くらいミュス狩りできるように。


「納品お願いしまーす」


 ミュスとハナハヤ草は常時依頼。それはどの街でも同じだ! とはいえ、フィールドでミュスがいるのはここら辺だけのようだが。


「はい。まあ! こんなにミュスを狩ってくださったんですね。ありがとうございます」

 ミュス狩りに対するギルド員の嬉しがりようが、アランブレと一緒でした。ミュスは天敵なんだな。


「セツナさんはイェーメールは初めてですか? この時間は朝市が立って、たくさんの食べ物屋さんが並ぶんですよ。出勤前に朝ご飯を街のみんなが朝市で済ませるんです。よかったら寄ってみてくださいね」

 EPが減ってきたので、手持ちの案山子産ご飯を食べようかとも思ったが、そんなことを言われたら行くしかない。

 大体の場所を聞いて向かった。




 結論。

 ミュス狩りで得たお金大分使いました……。

 だって、だって、どれもこれも美味しそうだったんだぁ-!!


 ピロリが言ってた、ゲーム内で食べたらいいがめちゃくちゃわかるな、これ。案山子のカツサンドも美味しかったけど、朝市サイコーじゃんこれ。朝だからパンとコーヒーとチーズとソーセージと肉肉肉。結局肉。朝だから関係なかった。そんな中、中華粥みたいなやつもあった。トッピング色々してくれるのでつい頼んで立ったままいただいた。


 粥うまっ!!!


 美味しくてペロリ。

 あとは、パンにザワークラウトみたいなキャベツの酢漬けと、ぶりっぶりのソーセージととろけたチェダーチーズを鉄板でぎゅっと焼いたやつ。紙で包んで渡してくれたのがそれなりに熱さまで感じる。ソーセージの肉汁で舌をやけどしそう。な気がする。

 うまっ!!

 住みたい。ここ、住みたいわ……。

 なんか旅行気分でいいなぁ、VR。

 

 EP満タンの上に、食べたいもの食べちゃって、すっかり満足だ。


 日もかなり上ってきたし、再びミトの家に行ってみることにする。夜中とは違って、人がかなり行き交っている。家の窓から窓へロープが渡され、洗濯物がひらひらと宙を舞っていた。面白いなぁ。


「兄ちゃん、俺んちの洗濯物、そんなに気になるの?」

 いつの間にか足下に、5歳くらいの男の子がいた。


「あ、ごめん。こういった光景が面白くて」

「ふうん。兄ちゃん冒険者?」

「まだまだ駆け出しだけどね。洗濯物ってこうやって干すんだね」

 鯉のぼりでこんな風景を見た気がする。


「洗濯物に感動できるやつなんてそういないよ……面白いね、兄ちゃん」

 また思わず見とれてしまった。ごめん。洗濯物見られるの微妙だよな。


「はい、お詫び」

 案山子製蜂蜜クッキーです。


「知らねえやつから物はもらうな、それなら奪えって言われてるから」

 後半物騒だな。


「いらないならいいや」

 ポーチにしまおうとするところ、ガッと手首を掴まれた。


「まあ、お詫びならもらってやらなくもない」

 素直? でよろしい。

 道の脇に立って2人で食べる。いや、EP満タンなんだけどね、ついつい。


「すっげえうめえこれ」

「でしょ。お友だちにお料理上手な人がいるんだー。もう1ついる?」

「いる!」

 一気に素直だなぁ。


 男の子はマイクくん。両親は仕事に出かけ、3歳の妹の面倒を見ているのだが、妹は女子たちと一緒に道に絵を描いている。見張りしているだけでかなり暇なのだと。


「でも、妹たちを放ってどこかに行くわけにもいかないし」

「偉いね。お兄ちゃんって大変だよね」

「セツナもお兄ちゃん?」

「そうだよ、同じように2歳下の妹がいるよ、ここにはいないけど」


「来訪者だもんな。なんか冒険の話してよ」

「えー。まだ冒険始めたばっかりでミュスしか狩ってないよ」

「え……ミュスとか、俺でも狩れるじゃん。兄ちゃんもっと強いのと戦いなよ」

「俺一人じゃ無理かな~」

 ミュスで精一杯ですよ。


「でも、来たばっかりの冒険者って、アランブレにいるんじゃないの?」

「そうだね、今日はちょっと用事があって、強いお友だちとこっちに来たんだ。来たついでに、この間来たとき調子が悪そうだったミトさんに会いに来たんだけど……」

 と、話を盛り込んでみたら、乗ってきてくれた。


「ミトさんて、あの神官のだろ? 神官のくせに家借りてなんか難しそうな本ばっかり読んでた」

「そう。イェーメールで初めてできた知り合いだったから、残念だ」

「いつも青い顔してたから、もともと調子がわるかったんだろうって、かーちゃんが」

「俺が初めて会ったときも、道ばたで胸を押さえて苦しそうだったんだ。で、ここまで送ってきたんだよ」


 空になったところで、今度は桃ジュース。コップごと収納してる。便利だ、【持ち物】!


「ミトさんを見つけたのって、ここの住人の人?」

「いや、神官様だよ。神殿には毎日きちんと通っていたから、2日もお休みしていておかしいって。ちょうど俺もその場に居合わせたけど、入っていった神官様が青い顔をしてばたばたしててさ。ちょっと覗いたら、机に突っ伏してた」

 好奇心ありすぎだよ。気をつけてマイクくん……。


「そうかぁ……やっぱり体調がわるかったのかね。残念だ。神官様がお掃除とかしたのかな」

「いや? 1時間もしないうちに棺を持ってきて、連れて行ってお葬式だよ」

 ってことはその場面に出くわしたのか。


「部屋の中の掃除は、かーちゃんたちがその後してたけど、何にもないからほとんど何もすることがなかったって言ってた。家のケイヤクとかで、来月くらいに大家が片付けるらしいよ」

「そっかぁ」

 ということは、神官が持ち去ったわけではないと。


「あのね、ミトさんち、夜に誰か来てたよ」


 突然、お絵かきをしていたはずの女の子の1人が、こちらに来て俺たちの手元を見ながら言う。


 わ、賄賂要求ですね!

 とても聞きたい情報なので喜んで差し出すと、我も我もと子どもたちが寄ってきた。クッキーギリギリ足りて良かった。


「夜、目が覚めちゃって、窓から覗いたら、ミトさんちの扉をノックしてる人がいたよ」

「へえ……それはいつ?」

「ミトさんしんじゃった前の日? ちょっとよくわかんない。お月様がまん丸で、お外も明るかった」

「あーそれなら、前の前の日だな」

 マイクからの訂正。


「ミトさんちはお部屋散らかってるから、扉を開けるとひらひらってゴミが出てくるんだよ」

 子どもに散らかってるって言われるの、ちょっときついな。

「そっかー、ありがとうね」

 ゴミはたぶんあの紙の束。

 大変きな臭いですな。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


まぢぶらからの洗濯物観察。

おかゆは……書いたときはネタに気づかんかったやつです!!

音で聞いて気づいた!


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