59.イケメンに遭遇
なんだろうと拾ってみれば、何やら文字が書かれている。【持ち物】に入れれば、名前は謎の紙切れ。
謎の紙切れ……めちゃめちゃ見覚えがある。
なんでここにミュスの王関連アイテムが!?
しかもアイテムの名前が変化しているのだ。
謎の紙切れ1と謎の紙切れ5。
重量がほぼない。1てなんだよ。ずっと持ってろってことか?
悩みながらもそれ以上の成果を得られそうにないので、外へでる。
と、白い甲冑をつけた、美丈夫とでも言うのか、めちゃくちゃイケメンと鉢合わせした。
一瞬住人か? と思ったが、いやなんか、絶対違う。この人使用人とかいそうなタイプ。イケメンすぎるし甲冑がすごく高価そう。
金髪碧眼、少し癖のある短髪。キングオブイケメンって感じ。
「何者だ?」
「えっ、そちらこそ?」
「……ここの家主は君ではないはずだが?」
「ですね。ミトさんのお家ですね」
「ミトを知っているのか」
お互い探り探りで話が進まないやつだ。
さて、どうすべきか? と思っていたら、相手も同じように考えていたのだろう。部屋の中で話さないかと促された。
いきなり斬りかかられたりはしないだろうし、了承する。
斬りかかられたら終わるけどね。
部屋の中には机があったが、椅子は一脚しかない。二人ともたったまま話が始まる。
「君はミトとどういった関係だ?」
「そちらはどういった関係なのでしょうか?」
質問に質問で返す嫌なやつになってしまうが、たぶんこれはあの謎の紙切れを手に入れたから始まっている! 引いてはいけないやつ!!
「そうだな……俺は聖騎士のヴァージル・アスターだ。ミトとは昔から懇意にしていた」
「ご丁寧にありがとうございます。来訪者のセツナです」
「来訪者なのか……」
「俺は少し前に体調の悪そうなミトさんを、この家まで送ったことがあったんです」
俺の言葉に思い当たることがあったのか、少し驚いた顔をして頷いた。
「ミトから聞いている。親切な来訪者が送り届けてくれたと」
「その後わりとすぐに亡くなったと聞いたのですが……」
「ああ、それで家までまた来てくれたのか」
ちょっと違うが、誤解を訂正するのも面倒なのでそのまま。
「部屋にあったメモの山がすっかり消えていて驚いていたところです」
「君もあのメモを見ているのか」
「学者さんだとか」
「自称、な。本職は神官だ」
そしてまた考え込む。
腹の探りあいなんだろうけど、メインストーリーはすでに続いて、次は第5都市へ向かっている。彼は何絡みなのか? 敵か味方かもわからないので、正直娘さんへ預かった手紙とか、宝石なんかについては話していいものか微妙なのだ。
「君から見て、ミトはだいぶ具合が悪そうだったか?」
「どうでしょう……胸を押さえていたので、心臓に負担がかかっているのかとは思いましたが」
「何か糸口を見つけたときは、寝食も忘れて没頭するような男だったからな。身体に負担がかかっていたと言われれば、そうなのだろうと思う、が」
どうもヴァージルも気になることがあるようだ。
「メモを片付けたのはどなたなのですか?」
「それが、俺も知らないんだ。ちょうど任務でイェーメールを離れていたときに亡くなって、帰還後慌てて来てみたらこの有様だ。周囲に様子を聞こうにも警戒されてしまって」
まー、高そうな鎧着たキラキラエフェクトの男が市民に聞いて回っても、余計なことを言ったらと口を閉ざされて当然。
ゲーム内、貴族いる設定だしな。
聖騎士って何なんだろう? ちなみに、最初名前出てなかった。名乗ってくれたら頭の上にオレンジでヴァージルって出た。NPCであることは確か。
「俺もこの辺りはあまりよく知らないので、聞いて回ったら警戒されそうですね」
おしゃべりおばちゃんとかに運良くエンカウントできたら話は別だが、普通に尋ねて回るのは無理かなぁ~。
「まあ、君はこれ以上あまり関わらない方がいいだろう。ミトも心配して来てくれて喜んでいることだろうよ」
ヴァージルは関われば面倒なことになるぞ、と脅すでなく心配して言ってくれているようだ。けど、ゲームだと関わっていかないと楽しいことにならないんだよねー。
「ミトさんは、何を研究していたのかご存じですか?」
俺はご存じですけど。彼は知っているのか?
「……預言書関連だとは聞いている。だから、本当に何かがあるのなら君の身も危険となるんだ。神殿も国も他の組織も、皆もうないだろうと言いつつ、アレの存在を追い続けている。俺もミトに何度も、追いかけるのをやめろと言ったんだが……想像していることがそうでないと願うよ」
「メモが全部消えたのも不審ですよね。ミトさんとどんなご関係だったんですか?」
俺が聞くと、ヴァージルはふっと笑う。
「父親代わり、かな……関わるなと言っておいてなんだが、ミトのことで何かわかったら連絡をもらえると嬉しい」
《ヴァージルからフレンド申請が届きました》
NPCのフレンドちょろすぎん!?
クエスト発生しそうで楽しそうだから受け取るけど、名字ある人は初めてかも。どう考えてもお貴族様なのだよ。
「父親代わり……娘さんがいるのはご存じですか?」
「ああ、ファンルーアだろ?」
「少し遠いですからね、この間寄ったついでにお亡くなりになったことは伝えましたけど」
「そうか。手間をかけたな」
そこで会話は終了。家を出て別れる。
が、クエストのお知らせなどはなかったので、これではまだ何も踏んでいないということだろう。
うーん。預言書関連だから、メインストーリーがあってこそだと思うのだ。メインストーリーが進まないとどうしたってこちらも進まないってやつ。
それでも、話を聞けそうな人はいないかうろうろしていたが、この辺りは店でなく住人の家が並ぶ場所。それもオーランのような金のありそうな家じゃなくて、その日暮らしではないが、自分の暮らしで精一杯な人の家。窓の数からして三階建てで、階段を挟んで左右に一部屋ずつ。つまり1つの棟で6軒分。隣の建物の壁と壁がくっついていて柱代わりになっているような手狭な住居だ。
22時頃ログインして、こちらの午前0時。神殿はいつでも受け入れてくれると祈りに行って、何故か奥様たちと出会ったが、その後の今、夜中の丑三つ時越えたくらいだ。
人に会うわけがない。
ヴァージルに切り捨て御免されなかっただけましなんだが。
そう考えると、ヴァージルも人目を忍んでやってきていたわけか。
とりあえず、日が昇るまで狩りでもしてよう。来た方のフィールドならミュスがいる!
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イケメン枠その1です。




