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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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58.ギルドを通して出品

 ログインするのがだいたい22時なので、ゲーム内は午前0時だ。

 こそこそと起き出すと……じいさんのくせに夜更かしさんだな。


「おはようございます~」

「おう。もう日付が変わる頃だがな」

 ロッキングチェアに揺られながら、アンジェリーナさんから預かっていた本を読んでいる。


「飯は? なんもくわんでいいか?」

「大丈夫です。お世話になりました」

「もう行くのか?」

「はい、友人たちと待ち合わせしているので」

 ふむ、と立ち上がり、読んでいた本を近くのテーブルへ置いた。


 オルロの家は大きかった。一階のリビングがとても広く、壁一面に本が並んでいる。読書家で、アンジェリーナさんとも懇意にしているのだろう。ちょっと興味もあるが、今は待ち合わせの時間が近づいていた。

「イェーメールで何か困ったことがあったら連絡よこしな」


《オルロからフレンド申請が届きました》


 この程度で!? アンジェリーナさん関連??

「ありがとうございます」

 お礼だけはきっちりしておいた。




 クランメンバーがログインしているのは確認できたので、冒険者ギルドで待ち合わせすることにした。行けって言われてたし。

 まだ誰も来ていないが、とりあえずカウンターへ。IDカードを見せながら挨拶だ。


「こんばんは。アランブレの冒険者ギルドから、こちらでオークションについて教えてもらえると聞いて」

「ああ、セツナさんですね。少々お待ちください。ギルド長を呼んで参ります」

 やりとりしている間に、後ろにクランメンバーが揃っていた。


『冒険者ギルドは夜中でも気にせずこれていいよね~』

『普通の店舗は閉まってるからな』


 すぐに先ほどの女性が戻ってきて、奥へ通された。

 ここのギルド長はエルフだった。金髪の背の高い男だ。年がわからない。

「やあ、いらっしゃい。珍しい変異のミュスのドロップだそうだが、見せてもらえるか?」

「あまり気持ちのいいものじゃないですよ?」


 一言断りを入れて【持ち物】から取り出す。

 パーティーチャットで不評だ。明るいところで見るものじゃないな。


「ふむふむ、面白いね。確かに好事家が高く買い取ってくれそうだ。どうする? 自分で値段を決めて交渉してオークションに出すか、冒険者ギルドからの出品にするか。その場合は手数料が5%だね」

「……ちょっと相談してもいいですか?」

「いいが、今日のオークションに間に合わせたいなら昼前には登録しなけりゃならないぞ?」

「オークションって毎日行われてるんですね」

「ああ。珍しもん好きは昼の出品登録一覧を常にチェックしてるよ」


『値段の付け方がわからないのは確かにそうだからなぁ』

『尻尾だけとか出してみたらどうだ?』

『あー、それでどれくらいの食いつきか見て、歯と爪はセツナが料金設定してみるとか?』

『じゃあそうしてみよっかな』


「とりあえず今日は尻尾だけお任せしてもいいですか?」

「わかった。なら早速書類を作ろう。うちとしても高く売りたいから任せろ。オークションは夜の8時から。他の商品を買うことはできるが、自分の商品の値をつり上げる行為は禁止だ。そこのお仲間も含めてな。あと、出展者のセツナはタダで入れるが、お仲間が入るなら一人10000シェル」

「了解です。面白そうだから10000シェル払って参加します」

「私も! オークションなんて初めてだもの♪」


 みんな行く気満々だ。


「じゃあこれは預かり証。ギルドとしての取引だ」

 差し出された紙にサインをする。

 オークション会場のポイントをつけて、ギルドを後にした。


『さーて、昼間はどうする?』

『俺は双子座がどうのって前に言われてたから神殿行ってくる』

 ベルトコンベア式メインストーリー攻略の時のことだ。加護が得られやすいとかなんとか。


『7時過ぎにオークション会場前。この間の黒服着てきて』

『黒服? 喪服風の?』

『そう。持ってないやつクランまで往復しょう。揃えてかっこつけて行こ』

 まあ、いいけど、ずっと入ってる。

 ということで持ってないやつは一度クランハウスへ。

 俺は1人移動。着替えは直前でいいだろう。


 各街の神殿の位置は大体同じ。そして双子の彫像。すごいな、双子。なんか、マッスルポーズとってるよ、2人で。大変暑苦しい。


 そのまま奥に行って、みんなが跪いて祈っているところの一緒になって祈りを捧げる。

 ささげ……る? 何を祈るんだろうな。双子座双子座。支え合うとかそんなだったはず。


「友だちと支えあって楽しい毎日を送れますように~」


 思わず声が漏れていて、周りのおばさまたちがにこやかにこちらを見てきた。やだ、恥ずかしい。


「真面目に通えば加護も得られるわよ」

「そうそう、双子神は互いを大切にする者たちに寛容ですもの」

「寛容が過ぎるところもあるがね」

「お互い好きすぎるのよ」

「ふふふ」

 ふふふじゃないと思う。どーゆうこと?


「お友だちと来て祈ってみなさい。その方が加護を得やすいわよ」

 友情とかに弱いってことかな? いやでも、友情はかに座とかだった気がする。


 双子は、平和、支え合う、執着、粘着。後半はカストルに執着するポルックスとか、そんな感じなんだろうな。確かカストルの方は人の血を多く受け継いでいて死んでしまったが、ポルックスはゼウスの血を多く受け継いでいて死ななかったが、カストルと一緒にいたくて星にしてもらったとかだったはず。


 奥様たちにまたいらっしゃいと見送られて、神殿を出た。


 あとは、特にやることがない! クエストは天から振ってくるシステムだからなぁ。


 あ、そうだ。ミトさんの家ちょっと覗けたりしないかなあ? てことでそちらへ行ってみることに。

 亡くなったらもう別の人が借りていて、とかあるのかな?

 イベントが起こるときは、基本別チャンネルに移動させられるそうだ。そして、その後変化があるタイプは、その場所だけそう見えるように書き換えられるらしい。

 さてさて、ミトさんのおうちはー?


 誰か住んでいたらしれっと、ミトさんを尋ねてとか言えばなんとかなる。

 何度かノックするが、反応はない。


「おじゃましまーす?」


 鍵のかかっていなかった部屋はやっぱり綺麗になっていた。とはいえ、掃除をされたというわけじゃない。ところどころに埃が溜まっている。そして紙類がまったくなくなっているのだ。あれだけの量。尋常じゃないメモの紙はどこに消えたのだ。

 壁にはメモを貼り付けるために開けた画鋲の穴がたくさんあった。

 1人暮らしの小さな家だ。見る部屋も限られている。

 結局成果を得られず帰ろうとしたところで、メモの切れ端を踏んだ。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


ミトさんちに不法侵入。


セツナくんの【持ち物】は基本ぎゅうぎゅうです。余計なものもたくさん入ってます。

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― 新着の感想 ―
双子は、平和、支え合う、執着、粘着…カストルに執着するポルックス… 「お互い好きすぎるのよ」 「ふふふ」 なんだろう…普通の人は謎な言動だと思うが、一部の人は…共鳴できそうだな……?
NPCフレ覧が一層むさ苦しくなったな。
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