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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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53/361

53.街の鞄屋

 鞄屋は、南門から入って左手へ抜けたところにあった。名前がオレンジなのでもちろんNPC。

 小人族(ドワーフ)のレラントは次々と俺の目の前に鞄を並べて行く。指や手の甲が艶々してるから、若そうなのだが、髭面でよくわからない。濃い茶色の髪が髭と一体化している。


「こちらの鰐革は、色といい艶といい、イチオシです。蛇革のものも人気ですね〜」

 見るからに高そうで、慌てて止める。

「申し訳ないんですがまだまだ駆け出しで、アランブレにきてから日も浅いんです。10万シェルくらいの予算のアイテムポーチが欲しいと思っています」

 俺の言葉にレラントはピタリと動きを止め、カウンターの上からすすすと商品が下げられた。


 ごめんよ、金なくて。


「大変失礼いたしました……お客様のご要望を聞く前についはしゃいでしまいました」

 はしゃぐ!?

「いえその、うちの店はかなり奥まったところにありまして、どうもお客の入りが悪くて」

 つまり俺が来て舞い上がったのか。


「冒険者ギルドの受付のお姉さんがお勧めしてくれていました。彼女のお勧めですからね、期待してます」

 俺が言うと、嬉しそうに口元をほころばせる。

 そして先ほどと違った、布製の肩がけ鞄など、5つほど並べてくれた。


「10万シェルくらいの予算ですと、このあたりになります。容量は向かって右へ行くほど多くなりますが、布の丈夫さは左手の方がより強いです。どうしても戦闘時に乱暴に扱い気味ですから、冒険者のみなさんにはある程度、鞄自体が丈夫な方をお勧めしております」


 一番左はベージュの肩がけ鞄。ちょっと汚れそう。この世界、衣服汚れる! 俺は生活魔法で綺麗にしているけど、薄汚れたユーザーをよく見る。

 2番目は深緑。うーん、実は蛙パンツと同じ色合い。しかもウエストポーチ型。他は黒に赤白と、ちょっとイマイチかなぁ。


「こちらの深緑のものでお願いします」

「ありがとうございます。91250シェルです」

 俺は言われた通りの値段を払う。さすがにお姉さんに紹介されたところで値切り交渉はできないや。


「では本人登録をいたしましょう」

 本人登録?

 疑問がそのまま顔に出ていたようで、レラントは頷く。

「アイテムポーチは魔道具です。本人以外が中の物を取り出せなくなります。売ったり譲ったりするときは、中身を全部出してから冒険者ギルドに行けば解除もしてもらえますよ」


 そう言って、俺のIDカードと鞄を重ね、どこからか取り出した杖で2度叩く。

 おお……魔法使い。杖、いいな、杖。


「ありがとうございます!」


 早速受け取って腰へ。ステータスウィンドウに、アイテムポーチの欄が現れた。

 基本耐久を上げると上がる【持ち物】重量だが、LV10ごとにボーナスがあるようで、今の俺は200だった。それが、アイテムポーチは400。


 ん???


 確か、10万シェルで元のものと合わせて倍くらいにはなると聞いたのだが?? つまり、同じくらいの容量があるのかと。でもこれは、2倍ですね。


「なんだか容量がとてもある気がするんですが……」

 するとレラントははにかんで(たぶん。ヒゲでわからん)笑う。


「私もまだまだ若造で駆け出しなんです。鞄の出来としても師には及びません。正当な価格だと思っていますから、大丈夫です」

 好意なのだろう。無碍にするのもなんだな。


「ありがたく使わせていただきます。これで狩りがはかどります」


 今度日本酒お土産に持ってこよう。


「友人もアイテムポーチや鞄を探していたらおすすめしてもいいですか?」

 俺の提案にレラントはパァッと顔を輝かせる。

「ぜひ、お立ち寄りくださいとお伝えください」

「やつら、俺よりずっと金持ってるんで、毟り取ってやってください」

 レラントは笑って店先まで出て見送ってくれた。


 よおっし!! ミュス狩りまくるぞおおお!!!




 1時間経たずに満タンになってしまっていたミュス狩り。それが3時間近く狩り続けられました!!

 ありがてぇーーー!


 ルンルン気分で冒険者ギルドへ行く。青髪のお姉さんのカウンターが空いているのでそこへミュスの尻尾をどさっと取り出した。


「こんにちは、とても良いお店をお勧めしていただいてありがとうございます!」

「まあ、大量。ふふ。大容量のアイテムポーチを手に入れたんですね」

「おかげさまで狩りがはかどりました」

 これなら、酒1人でもって来られるわ。


 さーて、次はアンジェリーナさんっ! と、俺の黄金ルーティーンを始めようとしたところでハトメールが飛んで来た。ハトってことはNPCからだ。

 見るとお久しぶりのダンとビル。


『やあ! 元気にしてるかい? 最近下水道にまたミュスが増えてきたんだ。よかったら一緒に狩りに行かないかい?』

 デートのお誘いだわぁ~♪




 ダンとビルは相変わらず仲良くつなぎで俺を出迎えてくれた。

 待ち合わせは例の下水道入り口。


「最近またたくさん狩りをしてくれてるみたいだね」

「本当はもっと頻繁に狩りをしたいんですが、友人にあちこち連れてもらっていました」

「冒険者だもの、世界を楽しむのは良いことだよ。俺たちの世界を気に入ってくれたら嬉しい。そして、こうやってたまに狩りができると嬉しいよ」

「こちらこそ! ミュス狩りは趣味ですから」


 ハハハと笑い合う。

 そしてパーティーを組んで下水道へと潜っていった。


 以前は気づけなかったが、【気配察知】の熟練度が上がっているので隠れているミュスの数もだいたいわかるようになってきた。視覚というかふんわり、あっちに5匹隅に集まっているな、とかそんな感じだ。


「腹に子どもがいるのはとっとと潰さないと拙いからなぁ」

「任せてください。容赦はしません」


 そうしてこの間よりもさらに奥へと向かう。草原よりミュス狩り効率あがるなぁ。素早さが上がっても、接敵数を上げるのに限界があり、ミュスは20/hが平均だ。運が良ければ25匹くらい。

 しかし、この下水道は30/hくらいの効率をたたき出す。2分に1匹ではなく、10匹まとまっている感じだ。


 ミュスはすべて俺のもの。


 ダンとビルに攻撃させる暇を与えずガンガン倒していると、2人がべた褒めしてくれるのだ。

 褒めて育てるタイプ上司サイコー!


「流れるように急所を仕留める。さすがだよセツナくん」

「もう俺たちが動く暇がないね! 無理しないようにね。後ろは任せてくれ」

 頼もしすぎるよ。


 と、少し先に今までに無い数のミュスの塊があることに気付く。

『ダンさん、ビルさん。ミュスが山ほどいます。……50以上』

『何!? ……噂があるんだ。下水道には、普通のミュスとは違う、進化したミュスがいると』

『そいつは、ミュスを従え連携して襲ってくるという話だ』

 おおお! 進化? 進化した? ミュミュッスーみたいになる!?

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


ミュス2かもしれません。


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― 新着の感想 ―
進化したミュス……ミュッキーマウス?
貸本屋のお姉さんの次に執着されているミュス、もはや裏ヒロインww
他のミュスよりも小柄で王冠に玉座まであって巨大ミュッスーにライドしてそう
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