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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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43.【番外編】節分イベント4

 五色の豆が宙を舞う。

 実際は五色以上だ。

「黒豆〜! ナイス!」

「上手い上手い!」

 黒豆のクランは黒豆以外全員女性アバター。中の人は知らないが、いわゆるハーレムというやつだ。

 まあ楽しそう。

 豆は全部黒豆に投げさせるようだった。


『そろそろ金棒来ます』


 アライアンスチャットにロジックのメンバーから告知。

『ピロちゃ〜ん!!』

 素早さ初期値の柚子が、ピロリの背中に飛びつく。

『半蔵っち〜!!』

『案山子殿はデカいから勘弁でござるよ。バフ分で耐え凌ぐでござる』

 にべもなく断られている。

 とは言え、案山子も初期値なので隣に移動して補佐はする。


 鬼の攻撃スキルの1つ、【ぶん回し】なのだが、地面スレスレとちょうど頭のあたりをランダムで襲われる。


『伏せ!』

 わざわざアライアンスに送ってくれるのはありがたい。

 指示が来た瞬間、ソーダと半蔵門線の手が伸びて案山子の頭を地面に打ちつけた。


『痛い痛い!! ダメージ判定出てる!!』


『ジャンプ!』


 ソーダが案山子を上に投げる。


『怖い怖い怖い!!』


 この攻撃を6回繰り返すと豆投げタイムだ。

 半蔵門線の【投擲】レベルが高く、もちろん当たるし、ダメージもでかい。


『赤鬼HP半分切りましたね。祝福豆はまだ半分以上あります』

『色豆も赤や青だとダメージ大きい。オレンジ黄色とかになってくると微妙ですね。ヘイト用かな?』

『赤鬼から始末します? バランスで削っていきます?』

 鬼たちの他の攻撃は【振り下ろす】、だけだ。

『スキル攻撃を避けるのも問題なさそうですよね? それなら、バランスでいきたいです』

『了解です』


 アライアンスで入った飛び入りもきちんとこちらの意図をくんで、次は青鬼に攻撃を始めた。

 ソーダたちが攻略を始めたと、話が広まり次々豆を持ったプレイヤーが集まってきた。

 始まっているのでもうアライアンスを組むことはしなかったが、バランスで攻撃すること、青と赤の豆のダメージがそれぞれ大きいことを知らせると、きちんと色を合わせて投げてくれた。

 協力型大型レイドはこれが楽しい。

 

 とうとうHPバーがグレーになる。あと数発だ。


「よし、全部投げつけてやれー!」

 誰かが叫んだ。

『【投擲】停止で』

 すかさず俺はアライアンスに指示をするが、アライアンスを組んでいないプレイヤーが、思い切り投げまくり、ほぼ同時に赤鬼と青鬼が膝をついて倒れる。


『バフと回復満タンに』

 そう言う前から、八海山の回復が飛んできた。


 歓喜の声が上がる。


『どうなりますかね』

『残祝福豆報告お願いします』

『祝福は残り20』

『うちも30』

『42です』

『全部で100ちょいですね。』

 おかわりがきたら足りないなぁと思っていたら、地鳴りだ。

 揺れる地面に、片足を突く。


『嫌な予感』

『色豆を最初様子見て投げましょう』

『回復系怖いですからね、了解』


 すっと青赤鬼が、消えると、ゲートの奥から新しくやってきた。

 色は、金。


『趣味が悪い』

『ちょっと金は無理でござるwww』


 ジラフが周囲に声を掛ける。

「色豆でバフ効果を見ます!」

 だがどうやらアライアンスを組んでいなかった面々は、ほとんどが残りの豆を投げつけてしまったらしい。


「攻撃も分からないので、一度フィールドを出ているのも手です」

「攻撃来ます!」


 金鬼さん、金棒2本持ってるんだよなぁ……と思っていたらやはり、両側から【ぶん回し】がきた。しかも上と下。つまり、中央に布陣していた面々死亡。

 こちらのパーティーは割と左寄りにいたので助かったが、蒼炎がやられてる。


『【ぶん回し】終わったらリザする』

『すみませ〜ん』

『初撃の判断キツイけど、左右に分かれないと無理だね』

『蒼炎とロジックが向かって右へ』

『了解。リザはうちもやるよ』


 うちは案山子が1人ダメージを負い続けた。

 【ぶん回し】は計4回。回数は少なくなったようだ。


 スキルが発動したあとは、豆投げタイムなのは一緒だった。

 【振り下ろす】がちょっとえぐい。2本を交互に10回ほどやってくるのだ。


『色豆ダメだなこれ』

 なんと、ダメージ固定の1。

 祝福豆も投げてみたが、こちらは先ほどと変わらないのだが、数が足りない。


『これは、祝福豆まだもらえるプレイヤーに倒してもらうしかなさそうですね』

『明日夜リベンジかなぁ』

『うちのクランメンバーに祝福豆だけ受け取りしてもらいます』


 今後の予定を話し合いながらの祝福豆投げだ。


『掲示板で、豆募集してみます』

『【投擲】あるなら本人に投げてもらってもいいですしね』

『生産職の友人にもお願いしてみます』


 ソーダも何人か声をかけてみようと考えていた。


セツナ∶

ソーダ、そっちなんか変化なかった?

急にミュスが落とす豆が金ばっかになったんだけど。


 何この幸運の女神。

 セツナが運営に目をかけられているのか、それともミュスに何かあるのか?


ソーダ∶

いくつある?


セツナ∶

実はすでに20。ドロップ率も上がってるんだよ。なんかあったろ。


ソーダ∶

半蔵門線に取りに行かせるから、セツナもこっちに走ってきてくれない?

 

 了解と返事を受け取るや否や、半蔵門線は走り出す。


『ちょっと光明が。もう少し祝福豆投げながら耐えてください』

『マスター? まあ、了解』


ソーダ∶

てか、お前が投げたらいいよ。ヒイラギとイワシも予備あるし。


セツナ∶

別にアンジェリーナさんに関係なさそうだからいらないや。


ピロリ∶

セツナくん、ホントブレないわよね〜



『到着でござる!!』

 金豆を受け取った半蔵門線が、やってきたのは【振り下ろす】会場。

 何人か倒れたのを、八海山が助けているが、【ぶん回し】より激しくてなかなか人のことを気にしている余裕がない。太鼓叩くみたいに【振り下ろす】するな!


『じゃあ行くでござるよ〜』


 えいやっと言いながら投げた金豆まとめて24個。


 金鬼撃沈だった。


《異界の鬼をゲートへ押し戻しました》

《アランブレに平和が訪れました》

《貢献度1位 半蔵門線 貢献ポイント1560pt》

《貢献度2位 黒豆 貢献ポイント342pt》

《貢献度3位 ――》


『1人飛び抜けてますね』

『金豆一発……てか、HP1万以上あったってことですよね』

『これ、祝福豆でもキツイやつ』

『金豆何から出たんですか?』

『なんか、ミュスとかから出たらしくて、友人が連絡をくれたので』

『ご友人様々ですね! 倒せなかったら元も子もないですし』

 ミュスとかからと、ちょっと誤魔化した。


 正直セツナの辿っているルートが面白いので隠しておきたい。


『……鬼のパンツもらいました』

 そういえば、ドロップは何だ!?


 結論、おしゃれ装備と言われる部類の、攻略装備ではない、街中で着るようなものだった。

 鬼のパンツ、鬼のパンチパーマ、鬼の金棒、鬼の角、鬼のお面の5点セットが一発でも豆を投げた人、豆を投げた人がパーティーにいる人に贈られた。

 そこへさらに五色豆と言う名の、色とりどりの豆袋もプラス。ただ、豆の色はさまざまなようで、人によって違う。

『これは、皆で装備してスクショとりますか?』

『嫌よぉ!!! 絶対嫌っ!!』

 うちのピロリがすみません。ブンブン首を振って拒否してる。

『まあ、着替えるかは各自で』

 もちろんソーダ始め、ピロリ以外はほぼみんなが着替えて撮影会。

 同調圧力に屈したピロリは大変ぶすくれていた。別に着替えなくてもいいのにな。


 と、八海山の叫び声。

「ごめんなさい、かわいいしっぽについ……」

「通報しますね」

 冷たく言い捨てる八海山に、ロジックのメンバーが土下座していた。通報には異論がないようで、目を離したことをあやまっていた。

「かわいい、かわいいしっぽに我慢できなくて!!」

 なんでも飼い犬擬人化瓜二つとやららしく、八海山に執着している。

 殴ったら八海山の方がPKになってしまうので、引きずって帰ってもらった。

 どこまでの処分になるかは知らないが、ヒーラー欠けたらキツイだろうな。


『セツナっちにお礼しないとねー』

『そうだな。豆をやるか』

『5点セットあげるわ〜』

『それ押し付けてんだろ!』


『セツナ、おかげで鬼倒せたわ!』

『おう、よかったな』

『お礼何がいいって、みんなが』

『別にいらないよ。悪いけどこれからアンジェリーナさんのところ行くから!』


 友人は今日もブレない。


ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。



〜そのときのセツナくん〜

「金豆……だと……」

さっきまで桜とか山吹とか、若草とか、綺麗な色豆が出てきていたのに、突然の金。

さらに次も金。

3回続いてこれはおかしいと思った。しかも1度に2,3個落とす。

これはさすがになにかあったなと悟った。

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