42.【番外編】節分イベント3
23時20分にはほぼメンバーがそろっていた。それぞれ作ったパーティーをアライアンスする。
これをやることによって、ヒーラーがアライアンスグループ内なら回復をかけることもできるし、HP管理も容易くなる。チャットも別にできあがった。
「黒豆さんの友だちの動画見させてもらいました。【投擲】はネックですね」
「しかもそれしかダメージ通らないのでかなりきつそうです。昨日の動画分ではHP、1割も削れてなかったですよね」
ロジックのリーダー、ダインと深淵のリーダージラフ。
2人ともヒューマンタイプ、男性アバター。
「アイテム大丈夫ですか?」
「うちはなんとか集まりました」
「うちも大丈夫です」
「深淵さんは人数は結局……」
「集められたメンバーだけ参加にしてますから、15人です」
「2パーティーですね。了解です」
時間も迫っているしとっとと行こうということになった。この人数で火力(豆)が足りなければ今度こそ大規模豆狩りが始まり、明日の夜中までに鬼を倒さねばならない。
「豆のカウントだけはお願いします」
「色はどうします?」
「寒色系暖色系分けるだけにして、祝福豆の数と色豆の数をわけて申告だけでいきましょう。さすがに把握しきれないので」
「了解しました」
歩きながら打ち合わせをしていると、深淵のメンバーがなにやら騒いでいた。
「トレーナーさん今日も頑張ってる」
「ネズミーランド建設反対運動、孤軍奮闘してるの偉い」
「1時間保たなかったもんなぁ……」
ソーダがその会話に首を傾げていると、ジラフが笑った。
「始まりの平原で、ミュスを狩り続ける男がいるんですよ」
それは……心当たりがありすぎる。
「トレーナー?」
「あー、うちのメンバーが、ポ○モントレーナーで、ミュスをゲットしようとしていると言ってる者がいまして。あとは、ミュスの大行進防いだのは彼じゃなかろうかとか、一緒に狩りしてみたものの、飽きて続けられなかったと」
『セツナくん……』
『セツナ君だな』
『せっちゃん人気者』
『ネズミーランド建設反対運動ッwwwwwww』
『セツナ殿、結構有名になっていたのでござるね』
「まあ、いろんな楽しみ方があるから邪魔はしないようには言ってます」
『すげー、うちのクランメンバーって言い出しにくくなった』
『『『『『それな!』』』』』
さあ、そんなわけで鬼さんとご対面だ。
赤鬼青鬼が金棒持って仁王立ち。
ここは今回のイベント用フィールド。出入り自由。いつも戦闘モードになってる鬼がいる。現にソロユーザーが豆投げてた。鬼の足に当たって数字が飛ぶ。
こういったイベントのダメージはわかりやすく表示されることが多い。経験則ではかることができないからだ。
「あ、レイドですか? アライアンス入れてもらっていいですか?」
クランリーダーをしていると、外面がある程度はよくなる。
相手の初撃に対しては笑顔で対応する。
だがその顔を俺は忘れてはいなかった。
「別にいいけど、基本パーティー単位で動くから勝手にやってもらう感じだよ?」
ロジックのリーダのダインの返答に、彼らはもちろんと頷く。
「協力して動けばいいですよね」
「いや、そういうのもいらないよ。勝手にやって勝手に帰ってもらって構わないし。アライアンス組んだからと言って助けることもほぼないと思って。死んだらリザレクションはないから帰ってもらう感じで」
ダインは、それはもうはっきりと笑顔で言い切る。オレンジ色の髪にオレンジの瞳。オレンジ大好きらしい。
名前の由来が、グランオレンダインというオレンジの香りのするテキーラだそうだ。
明るく見える彼は、結構ばっさりキツイ系。
「アライアンスって協力するのかと……」
「まあ、このレイドまるっと協力型だからね。ダメージ蓄積だし。アライアンス組まなくても平気だと思うけど、せっかくのお祭りだから組みたいってのもわかるし。俺らも知り合いで組んだだけのアライアンスだし。イベントのレイドは一度打撃与えておけば、倒したあとどこにいてもなんかしらのアイテムが手に入るし、大丈夫だよ、死んでも」
笑顔のイケメン。便乗系に容赦ない。
「って、やだーあんたカニの時の子じゃーん」
「おい、やめろよ、気付いてて黙ってんだよ」
ピロリぃ!!
「は……あ、チート野郎ども!」
「それ暴言レベルだからねー」
「チート?」
ピロリは後から動画を見て、かなりこいつにイラついてた。だからってレイド前にやめてくれ。
「太公望の池でカニ出たから俺らで倒したんだけど、アライアンス欲しがるわ、パーティーメンバーに、始めたばかりのがいて、初期の重量制限無限時期だったからカニ身が落ちなくて、それをチートって言いがかりつけられた」
「あー、無限時期にカニ身は、すごくいいねそれ」
ジラフが笑い、そして彼に向き直る。
「アライアンスは断るね。楽しみたいから不安因子があるの嫌なんだ」
『すでにうちは、マスターからワンペナ食らってるのにこいつまでお荷物かかえるの嫌だ』
ワンペナ……ナデシコだね。
『そいやワンペナさんは?』
『クランメンバー総出で守ってるし一番遠い位置に配置する予定』
『まあ、結構いらつきの限界来てるみたいだから、よろしく。ロジックさんとは上手くやっていきたいんだよ、俺らも』
『こちらこそ』
「ねえ! 黒豆が待ってんだけど-? 早くしようよ」
蒼炎メンバーがこっちに声を掛ける。
「黒豆待たせないでくれるー?」
「とろくさいのは困るのですぅ」
『お姉様たちがオコですよ。早く行こう』
『あそこも異色だよなぁ……』
そのほかにいくつかのパーティーをアライアンスに組み込む。ルールは前述通り。皆お祭りしにきただけだからいいらしい。あとは、俺たち4クランは皆配信オーケーなのでそこら辺も許可をもらった。むしろ映りたいらしい。
まあ、それなりに収益得てるからな。
「じゃあ行きますか!」
ジラフのかけ声とともに、バフがそこら中に溢れた。
鬼に掛けられないからこっちがもりもりパワーアップするしかないのだ。
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〜その頃のセツナくん〜
色豆まだまだ増えるなぁと思いながらもミュス狩り。
豆は金にならんから困るなと思ってる。
色豆店売り1シェル。




