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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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41.【番外編】節分イベント2

 ヒイラギ狩りはあっという間だ。

 イベント時のよくあるパターンで、その時期だけ本来のドロップと違うものを落とすやつ。

 今回は木の魔物ファイアートレントと言う、存在が矛盾している燃えてる木のモンスターからのドロップが、ヒイラギになっていた。

 掲示板で書かれたらしく、現場は、フロストサークルで溢れていた。


 フレンドリーファイアありなので、場所取りが必要なやつかもしれない。


『どうするー? 奥の少し強いところでやる?』

『そうだねッ! ここで柚子が魔法展開したら怒られそうッ!』

『じゃあ突っ切るか』


 八海山が、皆へ氷耐性のバフを掛ける。

 これで多少サークル内に入っても死にはしない。


 人が多ければそれだけMOBも湧く。


『それじゃあ一番奥目指しながら空いてるところ探そう』


 先頭はソーダ。タゲを取ってしまったら相手のフロストサークルへそのまま突っ込んで耐える。取りこぼさないよう挑発してダメージを一緒に受ける。

 回復はモンスターには行かないので八海山が回復連呼することになるが、これが一番文句を言われない。


 そんなことをしていたら、まともに狩りが出来るまで小一時間経ってしまった。


『ヒイラギとイワシをアイテム化しないとらしいでござる! 早めに終わらせるでござるよ!』

 半蔵門線がやる気になる。それは、トレインの兆し。


『半ちゃんもういっちょ!!』

『ブラック企業でござる……』

『ヒイラギの出が悪いから仕方ないだろ』

 幸いこの辺りは他モンスターも強いので、別パーティーはいなかった。

 なので思う存分できる。柚子の【フロストサークル】だけでは火力不足ということで、案山子の【メテオレイン】もプラスした。火属性はファイアトレントだけなので、これでいける。【フロストサークル】が、効きが悪くてもモンスターを北東に移動させるのでそこに【メテオレイン】を降らせればいいのも助かる。

 半蔵門線は敏捷が高いのでこの押し流されるのから辛うじて逃げ切れるのだ。


『ここのハメMAP楽ね~』

 ピロリは急にそばに湧いたモンスターが八海山や柚子、案山子に攻撃しないよう、護衛だ。ソーダはフロストサークルに触れて、半蔵門線からタゲが外れたものが柚子に攻撃をしないよう、すぐさま挑発をして寄せ付けている。


『この型にはまるまでが大変だけどな』

『魔法使い2人ってのが結構でかい』

『はっちゃんが神ヒーラーだからなのじゃ~』

『まー確かに、普通ならタンクとトレイン役死んでるなこれ』


 HP管理が絶妙なのだ。


『ヒイラギ1人2つでしょッ?』

『蒼炎さん、9人参加予定だから、俺ら併せて15の倍30個あれば足りる』

『なら集まったな。帰るぞ。半蔵門線、トレイン終了』

『了解でござる~2匹捕まってるから、ポータル出してくれたら突っ込むでござるよ。八海山殿なら振り切ってポータル入れるでござろう』




 蒼炎の方は魚釣りに明け暮れたそうだ。

「生……」

「生なんですよ~」

 ハハハと笑う。アイテムの受け渡しということで、やってきたのはリーダーの黒豆だけだった。ヒューマンタイプの最小身長、肌は黒に近い。髪は銀で短髪の、青い目をした少年風。中身も結構爽やか丁寧系なので、対抗クランではあるがよく狩りに誘い誘われしていい関係を保っている。蒼炎の面子は……黒豆至上主義者の女子たちなので、彼をぞんざいに扱わなければ問題ない。


「ピチピチしてるでござるね~。それを燻製屋に持って行って、燻製してもらってからヒイラギにぶっさすらしいでござる!」

 その燻製に3時間ほど掛かると言われ、今日は解散となった。今夜ログインしたら受け取って集合だ。

「アイテム集めもたまにはいいんですけど、狩り場が大混雑でちょっと揉めてるところもあったんで、今夜は気をつけた方がいいかもしれませんね」

 今回のボスはダメージ蓄積型で、最終的に誰が倒したかはあまり関係ない。一番防衛に貢献したプレイヤーが貢献ポイントをもらっていくのだ。


「誰か知り合いで突撃した人います?」

「夜が無理な友人クランがこのあと行くらしいです。様子は動画に上げるそうなので、URL送っておきますね」

「お願いします」



 でまあ、見せてもらったのだが、鬼さん、つえええ……。




 頭の上にHPバーが見えてるタイプなのだが、まず、【投擲】必須。豆、投擲だった。クランで一番投擲レベルが高いのは、クナイの練習でござると謎練してる半蔵門線。ソーダもピロリも八海山も一応持っていたはず。これは、豆は全部半蔵門線に渡すべきか?


 もらった豆は全部で30。

 すぐ終わりそうだと思ったら、今回特別なドロップに変わったモンスターじゃない、その他大勢のモンスターから、低確率で色とりどりの豆がドロップしているという。


 これは、弱くて密集しているモンスターを、集合前に狩りに行くべきだな。

 柚子の低レベル【フロストサークル】にどんどん放り込もう。どこがいいかなぁなどと考えている間に、昼休みが終わった。




 ログインすると、クランメンバーみんなあちこちでモンスターを狩っていた。

『豆のドロップ率低い!』

『柚子と組んで来てるけど、まだ5つしか集まってない』

『まあ、ギリギリまで粘ろう』


 呼び戻しては時間がかかりそうだ。ソーダもソロで数を始末できる狩り場へ向かう。

 タンクなので、攻撃力はさほどない。弱いヤツ集めてシールドプレスで倒すかぁと、考えておいた狩り場へ向かおうとしたところで、セツナからのフレンドチャットだ。

『ソーダ、豆いっぱいあるんだけど、これイベントのじゃね?』

『お! それ、今皆が必死に集めてる。使わないなら買う』

『別に、日課こなしてたら手に入っただけだし。いらんからやるよ。クランハウスのストレージ入れとけばいい?』

『すまん、助かるー』


 狩りから帰ってストレージを見たら、豆が100個以上入っていた。

 ソーダがこの1時間で5個しか手に入れられなかったというのに!!

 ミュスよく出るの?





 時間が迫ってきたので、クランハウスに集合し、待ち合わせの始まりの平原に向かう。

『予習は?』

『黒豆っちの教えてくれた動画は見てきたッ

!』

『【投擲】ないから豆はもう全部半ちゃんに渡したのじゃ』

『俺もッ! レイド中は、魔法使い始めた頃にちょっととった時魔法系で遊んでいようと思います。鬼さんじゃなくてこっち側にねー』

『私も鬼さんの足下をぬかるみにするくらいじゃよ』

『問題は鬼のヘイトをどう取るかなんだよなぁ~。豆投げるしかないのか』


 鬼は、豆以外頑として受け付けなかったのだ。


 しかも、豆は色で効果が違う。攻撃力も違った。掲示板で色々確かめた者たちが数値を並べていたが、色がありすぎて情報過多でめまいがした。

『それでも、赤鬼には赤、青鬼には青がダメージ量としてはいいようだった』

『寒色系暖色系で分ければって話よ』

『祝福豆が一番ダメージ量は多いけどねッ』

 結局神殿でもらった分なのか。


『色豆でヘイト取ろうかな』

『それもいいかもね。祝福豆は半ちゃんに渡しておきましょう』


 さあ、いざ出陣!


ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。



〜その頃のセツナくん〜

22時ログインはゲーム世界で夜中の0時。

日課のミュス狩り。

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