39.眠れる山の美少年
激忙しくなった。
美少年の影響か、周りのフェアリーサルースのスリープサイクロンの効果がエグいことになっている。ただ、一瞬で叩いて起こせば詠唱中の呪文も続けられるので、柚子、案山子は即起きてもらう。
ソーダが一番前ですべてのヘイトを受けようと、【一身集中】と【挑発】を上手く使ってよそへ攻撃が向かないようにしている。
『とりあえず周りの妖精始末してみよう。それで変化があるかどうか』
『了解でござる』
柚子や案山子も単発魔法でフェアリーサルースを相手にしようとした。
が、その瞬間スリープサイクロン。からのおやすみなさい。
『これ、タゲとるとスリープサイクロンかまされるでござる』
『同時に3人勘弁して欲しい』
と、俺の懇願も交えておく。
『じゃあ、半蔵が初撃、別方向から柚子と案山子最大火力単発』
『いじめっ子でござるね、りょ』
俺は半蔵門線を殴る簡単なお仕事になった。
ちなみに、八海山は減るHP管理と適度なバフ。ピロリは本体への様子見攻撃。
そうやって3匹のフェアリーサルースを倒したところで、美少年激高した。
ツタが縦横無尽にエリア内を走る。
『勘弁じゃぁ~いたあい!!』
『ポーションッッ! はぁぁぁ』
主に紙装甲に大ダメージ。半蔵門線は上手に避けていた。俺もなんとか避けられた。素早さ大切だなこれ……。
『フェアリーは3匹倒しちゃだめ、と。これもう本体叩く方が良いやつ?』
『かもしれない。とりあえず2匹までは行こう』
ツタの無差別攻撃の被害を取り戻している間に、フェアリーサルース5匹に戻ってた。
俺は半蔵門線を殴りつつ、みんなは本体へ攻撃。
『これ、俺が1人で妖精に投擲してたらだめ?』
『あーそれもあり。本体スリープ系攻撃まだしてこないし。しばらく任せていいか?』
妖精さん、攻撃基本スリープサイクロンのみ。サイクロンなので、風の魔法攻撃も入っているが、八海山の属性魔法攻撃無効のシールドみたいなやつでほとんどダメージが入らない。 ということで妖精さんと戯れる俺。
ちょっと離れてやってたら、無理矢理サイクロン避けることもできたし。ただ、あんまり離れるとたまに気まぐれで、ヘイトをとってない周りにスリープサイクロンを飛ばすので、それで寝たメンバーを起こす作業が遅れる。
適度な距離を探りつつ、とうとう美少年のHPバーが半分になったところでまたもや変化があった。
ツタが、ツタがっ!!
フェアリーサルース捕まえて、美少年が食い出しました。
『えぐうう』
『あるあるだけど、エグいわぁ』
『これ、本体もスリープ系来そうだな。みんな俺から少し離れておいて。八海山、バフかけ直し。セツナ殴るの準備』
殴るの準備はいつでも。
赤かった目が真っ黒に染まって気味が悪い。
『美少年の闇落ちじゃよぉ~』
どこか嬉しそうな柚子。
そして全体攻撃、【スリープハリケーン】だそうですよ。俺とソーダ以外撃沈。
まず八海山、そのすぐ側にいた柚子と半蔵門線、ついで案山子にピロリ。
『ぶはぁ! ヤバイ。今のヤバイッ!』
『だけどあれほどの大技ガンガンやってこないだろ。今のうちだ。ほら、筋肉見せつけてこい!』
『任せて~、バフ感謝』
ピロリが前に出る瞬間、ソーダが挑発で注意を完全に自分に引きつけた。
「【一刀両断】!」
カニ相手にしたときに見せたスキルだ。
あのときは上から下まで真っ二つになっていたが、今回はそこまでではなかった。それでも、腕が片方消え失せる。
ボス戦の敵HPはその頭の上に赤いバーとなって現れている。それが全体の1/5にまでなった。
と、フェアリーサルースが再び現れる。
『お代わりタイプッ!!』
『HPも回復されたらまずいですね』
『一気に片をつけたいな。柚子、案山子も最大火力。ピロリ、もう一回出すのにあと何秒?』
『75秒!』
『全員同時に行く! 詠唱タイミングカウント八海山』
俺は少しだけ離れてフェアリーサルースに投擲してみる。地面に石たくさんあってよかった。ツタが妖精さんを捕まえようとしている。と、妖精2匹が俺のすぐ側まで来た。
……こいつら物理攻撃とか一切しないんだよな。睡眠役と、捕食用? なんとなく手を伸ばしたら捕獲。ギャーギャーうるさいけどそのままツタから妖精2人を抱えて逃げてみると、ツタ、めっちゃ伸ばしてくる!
逃げつつ、寝た柚子とかには石投げる!
ちょっとダメージ乗るけどいいだろう。
『10秒前、9、8、』
パーティーチャットで八海山のカウントが始まる。
ツタの後追いがすごい。ふぁあ……こっそり素早さ上げておいてよかった。残ってた分も全部振ってやったぜっ! いや、さすがに迷惑掛けるかなと。狩るのはミュスでいいしな。
『2、1、全軍攻撃!』
軍だった模様。なのでまあ、俺もついでに石ころぶつけてみた。
《フィールドダンジョンボス『眠れる山の美少年』を パーティー名ソーダと愉快な仲間たちが初討伐しました》
抱えていたフェアリーサルースがアナウンスと同時に消えた。
『よっしゃぁぁ!!』
『初回討伐特典いただきぃ~♪』
『セツナ殿www 幼女抱えて走り回ってて草でござるwww』
『妖精抱えたせっちゃんを、ツタが追いかけ回してたから、おかげでこちらにまったく物理攻撃こなくて助かったのじゃ』
多少は役に立ててよかった。
『ドロップ何来た?』
『丈夫なツタが山ほどある。何素材だろうな』
『妖精の羽根とやらもあるわね、数が少ないのは眠り薬? 瓶に入ったやつをもらってる』
『拙者のところにも眠り薬と、ツタと羽根と、美少年の爪?』
『爪って何ッ!? 食材系はないなぁ……』
『私のところにも爪があるのじゃ、謎素材が増えていく……』
『俺のところには眠り石ってのが。なんか、赤い綺麗な丸い石だ』
『石!? やだ、アクセサリー用じゃない?! え、ここ攻略するなら高く売れるやつよきっと! アクセサリー作りしてる人にブローチにしてもらったら寝なくて済むやつに化ける気がする!』
『4つあるからクランの物にしたら?』
『『『『『『4つ!?』』』』』』
【ビギナーズラック】が過ぎたらしい。
『あー後で買い取りとかも考えるけど、効果鑑定したりまあ色々とにかく後! 山降りて神殿に行こう』
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ここまでが初回特典な感じかな??




