389.アップグレードのために
そんなわけで少し時間を置いてからウロブルへ向かう。置いた時間で柚子と案山子からも借金返済が終わった。本気で金銭効率を考えた狩りをソロでしていた面々である。
ちなみに、クラン費用はまったく取り戻せていないので、これからまたみんなで狩りを積極的にしようという話しになっていた。何か特別なことがない限り、木の実からの杖材料を持ち込むのだ。
以前言っていたように、各職人が石を持ち、俺たちが杖を持って行く方式になった。魔石の手に入れ方は各々の杖職人が伝手を使おうという話だ。その上で来訪者を雇って【鑑定】してもらうと。
俺たちの手が空いていたら協力する約束もした。
どちらかというとプレイヤーがまんべんなく関わって行く方がいいので、早くあのルートを辿れるプレイヤーが出たらいいなと思う。
準備室から顔を出すと、ブラウン先生が今日もソファにごろりとしている。
「先生こんにちは。俺、これから図書館に行こうと思うんです」
「お、それじゃあついていこうかな」
「友人も一緒に行くことになっていて、図書館前で合流しますけど大丈夫ですか?」
「問題ないよ」
そこからのせかせか歩き。
コンパスの差!? いや、そこまで変わらんぞ!?
ウロブル図書館の前では先に着いていた八海山が待っていた。
「こちら生活魔法研究室のブラウン先生、俺の友人の八海山です」
「初めまして」
「ああ、よろしく」
わんこが頭を下げるとブラウン先生はにこやかに笑う。
研究室のだらっとした雰囲気がまともになるんだよね、外に出ると。
ブラウン先生はついていってやると宣言した通りに、先陣を切ってくれた。カワーラさんを見つけるのも上手い。
「ブラウン先生、セツナさん。こちらへどうぞ」
本を抱えていたが、俺たちを見つけると慌ててやってきた。
「俺の友人の八海山です。少々例の本に興味がありまして」
そう言うと、カワーラさんは笑顔で頷いた。
「セツナさんがいらっしゃったら一般図書として本棚に並べるつもりでしたし構いませんよ」
またもや奥の扉から裏方に案内された。
先日本が鎮座していた部屋へそのまま行く。
たぶんここも本を整理整頓するバイトがあるんだろうな。アランブレではすっかり【修復】要員として駆り出されているので、まったくやっていない。
「それでは、こちらは我々が用意した修復師のセツナさんへの報酬です」
袋を差し出される。
中を覗くと、おおおお、25万シェルもくれるの!?
「お、多過ぎません?」
「いえいえ、本当に助かったのです」
などとやりとりしてると俺の脇腹に肘打ちが入った。
ダメージは出ないのでピロリの肘打ちとは違う。一般人の肘打ちだ。
「いくらだった?」
「25万ももらっちゃいました」
「……ほう、まあそんなものか」
ぼったくり料金ではなさそうだ。
「また修復して欲しい本ができたら、連絡をお取りしてもよろしいですか?」
《カワーラからフレンド申請が届きました》
「こいつはウロブルの図書館でも結構地位の高いやつだから、恩を売っておいて損はないぞ?」
ブラウン先生の率直な意見にカワーラさんは苦笑していた。
オーケイ。男性は許可、だ。
そして八海山に本が渡される。
「しばらくは持ち出し禁止図書としますので、よかったらこの部屋で読んでいってください」
ということで早速本を開く。
前の時も思ったんだけど、『退魔の書弐』ではないんだよね。
『うん。クエストが来たよ。材料をあちこち取りに行かないといけなさそうだが、最後は修復師に持ち込む、とあるね』
『俺でできるのかなあ?』
『そうだな、その路線で聞いてみようか』
しばらくして顔を上げ、ニコニコと見守っていたカワーラさんに問いかける。
「最終的にまた修復師に依頼することになりそうですが、『退魔の書』を新しくすることができそうです。ありがとうございます」
「え、また修復するの?」
白々しく言ってみる。
「みたいだね、俺のいただいた『退魔の書』に新たに書き加えるといった風だよ。セツナ君もこれは読んでおいた方がいいかもね」
そういえばこの間チラリと見ただけだな。
「じゃあ次読むけど、俺が修復できるかなあ。まだ駆け出しなんだよね」
「うむ……他に誰か修復師をご存じですか?」
「はい、我々は普段からウロブルで修復師のユーファさんにお願いしていますね」
ユーファは聞いたことがある。
「貸本屋のエルフさんですか?」
俺が尋ねると、ああ、と笑う。
「ご存じですか? そうです。普段は彼女に頼むのですが、ここ一ヶ月留守にしていらっしゃいまして。もうすぐ戻られるそうですから、セツナさんも彼女に色々と教えてもらうのはいいことかもしれませんね」
やだしー。アンジェリーナさんがいい!
「俺ができそうになかったらそちらで頼もうか」
「そうだな。セツナ君ができるのが一番だと思うけどね」
交代して俺も本を読む。
んなー、これは……修復師スキルの欄に、退魔の書ツリーが出現しました。『弐』がまだグレーだ。何かが足りないのだろう。
アンジェリーナさんに質問しよう。
本を返しお礼を言って図書館を出る。
「先生もありがとうございました」
「いや、修復師か……学院内にも色々本を抱えているが昔のもの過ぎて読めないやつがいたなあ。今度暇なときに手伝え」
「いいですよ。お金取りますけど」
「そこは当然だな。それじゃ」
そう言って、ブラウン先生はあっという間に学院方面に消えた。
「随分と足の速い人だな」
「でしょう!! びっくりするんですよいつも。あれについてかないと、先生しか通れない扉とかで置いていかれる」
その後は八海山はソーダやピロリを巻き込んで材料探しに行くそうだ。プレイヤーに告知するにしてもルートをはっきりしておかないと困るだろうし、やはり一番目のプレイヤーになりたいとのこと。
俺も行こうかと言ったのだが、狩り場的には面倒ではあっても三人いれば問題ないので、アンジェリーナさんにアップグレードの道具などが必要ではないか聞いてくる方を優先してくれと言われた。
そうだな、材料が揃ったらすぐ修復にかかれるように準備しておかないと。
ということでルンルン気分でアンジェリーナさんのもとへ移動だ。
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