388.修復された本
しわと折れを直したあとは、かすれやシミの除去だ。
先ほどまでは【修復】から分岐したスキルだったが、今度のは単なる【修復】でいけそうだ。
が、ミニゲームがシビアになってる。
やはりこの本、だいぶ破損しているんだな。
「どうでしょうか……」
そわそわと見守っていたカワーラさんが話しかけてくるけど、ちょっとごめん余裕がない。ビタビタに赤いラインに合わせないとやり直しになる。俺の少ないMPが尽きてしまいそうになるほどやり直ししてるんで。
ブラウン先生は早々に、壁際の椅子に座ってうたた寝していた。修復に興味はないようだ。出来上がるものが見たいだけ。
「ふあー、疲れた。本文はこれで一応OKです。完全修復はできていませんけど」
破れて失われてしまったページがあるようだった。
「それは仕方のないことです。ここまで回復させていただいて本当に、本当にありがとうございます」
で、まあ表紙である。
表紙の文字が完全に掠れて消えてしまっているんだよなあ。
それでもそこに文字があったのはわかるのだ。なぜならタイトルだから。
そんなときのための修復道具もアンジェリーナさんは準備してくれていた。
メモを見て用意する。
「【文字復元】」
瓶からどろっとした液体をスポイトで取りだし、またもや現れたミニゲームと戦う。
絶妙な力加減で溢れないように文字に液体を吸わせていくのだ。やり過ぎると溢れてやりなおし。そのたびにMPを持っていかれる。表面張力との戦い。必要量まで、まだ足りない、もっと垂らせって言われるのだ。
本来はたぶんこれ、修復失敗とかになりそう。
そして、きっとこれ……必要なクエストのヤツだ。修復師のレールの上にあるクエスト。
「おおおお」
何度目かのやり直しで黒いカバーに金色の文字が浮かび上がった。
そこには『退魔の書の作り方』とあった。
わあお……。
「これはローレンガに伝わる古き文字で書かれたものですね……レイスなどに対抗する者たちの覚え書き……でしょうか」
「退魔の書ですね……冒険者の中には退魔師がおりまして、きっとこれを読めば新しい力を得ることができるでしょう」
八海山垂涎の逸品です。
うたた寝をしていたブラウン先生もできたと言ったら飛んできた。
「へえ、面白いな」
「中身は記号が多くてあまりよくわかりませんね」
と言われたものの、俺は【翻訳】さんがお仕事中。後ろの方はページがめくれないのだが『退魔の書弐』という項目に必要素材と必要アイテムが書いてあった。それを修復師の元へ持って行って、『退魔の書壱』を修復せよ、とのことだった。
「この度は本当にありがとうございます。本当に、本当に助かりました。これでウロブル図書館の面目が立ちます。ウロブル図書館を代表してお礼を申し上げます。後日修復費用をお渡ししたいので、またこちらへ立ち寄っていただけますか?」
「え、あ、はい。わかりました。修復したこの本は、こちらで読むことができるようになるのでしょうか?」
「ええもちろん。職業に関する棚に並ぶこととなるでしょう」
「いつぐらいからになりますか?」
「そうですね……明日にでも領主様には見ていただきますので、次セツナさんがいらっしゃった頃には」
おお、図書館クエスト終えてたら、退魔師は次の本にアップグレードできるってことだな。材料さえ揃えれば。よくわからないものが多かった。
「俺も見たい」
「ブラウン先生は専門外でしょう?」
「いや、塩を撒く生活魔法とかのヒントになるかもしれない」
むちゃくちゃ言っている。
司書さんは笑っていた。
「あれはかなりウロブルの図書館に恩を売ったぞ」
「ウロブルに恩を売ってもなあ……」
もともと心証がいい街だ。あ、でも第六の隣だから、心証をよくしておいて損はないな。
「いくらくらいもらったか教えにこい。いや……報酬を受け取るとき俺も呼べ。あまりに低い場合は俺が適正価格につり上げてやる」
「まあいいですけど……今度行くときには寄りますね。あとたぶん、友人も一緒に行くことになると思います」
「友人?」
「はい、退魔師の友人です」
ブラウン先生がにやりと笑った。
クラウンハウスにて。
「と、いうわけで、二日くらいしたら一緒に行きましょう、八海山!」
「助かる。楽しみだな、次のスキルがわかるだろうな。クエストも派生しそうだ」
EP回復ご飯をもりもり食べながら今日の報告をしていた。
メンバーはソーダ、八海山。他メンバーは現在ソロで金稼ぎ中とのこと。借金返済頑張ってる。でももうほとんど返してもらってるんだよね。むしろ、普段使う金稼ぎか。
それにしても、こう考えると、修復師ってもっと増えていいはずの職業なんだよな。みんな、なんか抜かしてない? やらないといけないことやっていないような気がするんだが……それとも、ここから修復師の話が出てくるとか?
「今、表に出てる貸本屋はイェーメール、ファンルーア、ウロブルだな。流れ的にはウロブルの貸本屋に行くのかもしれないな」
「修復師なあ……八海山が修復師探すルートを……たぶん一緒に行ったらセツナに頼むよなみたいな流れになりそうだな」
そう、ここで一般的に修復師が普及していないという事実。
「セツナいなかったらどんな流れで修復師が出てきていたんだろうな?」
「むしろ、なんでみんなそんなに貸本屋に辿り着いてないんだろう?」
「図書館があったからな」
とはソーダ。
八海山は何か調べている。
「……ああ、かなり初期に図書館クエストを見つけたプレイヤーがいたな。たぶんそのせいでクエストルートが固定された」
「ローレンガの貸本屋はまだ見つけようとしても見つかっていないし、貸本屋が見つけにくいんだろうな……預言書にも関わりそうだし」
書物だもんね。
「セツナは修復師バレてもいいのか?」
「バレてもいいけど、どこで師事したとかは……オルロさんにしておこうかな」
「俺が図書館に一緒に行ったとき、流れで他の修復師の話を聞いてみよう」
そこから普通の人が辿るルートを把握しておこうということになった。
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誤字脱字報告も助かります。
1月が倒れた。
奴は1年のなかでも最弱……
時間があっという間に流れていってしまう!!




