387.【番外編】豆打ちホームラン王大会
「返す??」
「いらないわっ! 私の美意識に反する!! イベントはボイコットよぉぉぉ!!」
ピロリの叫びが響くこちらは、豆まき特設会場。
そう、二月三日は節分だ。
節分といえば、前にゲームを始めたばかりのときになんか金豆拾ったなと思っていたら、今年は去年のイベントプラス今年のイベントという仕様らしい。
で、去年のイベント報酬というのが、鬼の衣装セットだった。
俺、ピロリにもらったんだよね。
今年のイベントは、これを着てやるというので、返却かなと思っていたら拒否られた。
この衣装を去年得られなかった人は、期間内に豆を集めれば引換所で引き換えてもらえるという。救済処置付きだ。俺はそっちでもよかったんだけどね。
豆の色で点数があって、点数を集めて、『鬼のパンツ、鬼のパンチパーマ、鬼の金棒、鬼の角、鬼のお面』と引き換える。これは一週間前から始まっており、運営から告知された指定マップのモブを倒せば得られた。
こんなときミュスはいつも真っ先に指定されるのだ。まあ、新しく始めた人のためにも始まりの平原でアイテムが揃う方がいいな。
このフル装備に着替えたら、豆打ちホームラン王大会に出られるということだ。
「ホントにいいのか? それなら俺らもう行っちゃうぞ?」
「どうぞどうぞ、構わないわよ!! 私はあんな格好お断りよっ……何があったか教えてね」
イベントの内容は気になるようだ。
『柚子さん可愛いですね』
ちんまり鬼さんが生まれてる。
『私はいつでも可愛いのじゃ!』
他の面子は長身圧迫感ましましの鬼のパンツ部隊です。
「多少は防御ついてるんだな。重さがほぼゼロなのはありがたい」
八海山はヒーラーなので色々と心配なよう。
「でも豆打ちホームラン王だろ? 鬼の金棒で豆打つんじゃね?」
「豆ちっちゃすぎるよねッ!」
特設会場は午前零時に開く。以前鬼のゲートが開いた場所だった。
『今年はセツナ君も一緒でいいねッ!』
『去年はアンジェリーナさんに関係なさそうだからいいやって言ってたもんな』
ソーダがシシシと笑う。
『あの頃のセツナ殿は……だいぶ尖っていたでござるな』
『むしろミュス殺って、本読むことしか考えてなかった……』
それが俺的最高ルーティーンって、今もそう変わらない気がする。ちょっと修復師の仕事が増えて、ちょっとアンジェリーナさんとの仲が進展している! います! 異論は認めない!!
時間が近くなるとぞろぞろ、鬼のコスプレたちがやってくる。
見知った顔も多い。
「やあマスター」
「ジラフ……似合わないな」
漆黒メンバーたちも着替えている。女性陣が心なしか恥ずかしそう。面白いけどね。ほら、昔のドリフの雷様コントだよ。
「お互い様だろ。これを想定してキャラメイクしてないんだって」
まあ、想定はするはずがなく。ハゲたりパンチパーマにさせられたり、このゲーム結構ひどい。キャラがやたらとリアルにかっこよく作れるだけあって、よけいにひどい。みんな気合い入れて作ってるもんなあ。それをパンチパーマにされて、でもイベントには出たいしみたいな気持ちのせめぎ合いが見えていた。
「こんばんは!」
後ろから声を掛けられ振り向くと、蒼炎メンバーが揃っていた。おお、みんなちゃんと装備している。
大好きな黒豆にこの姿を見られたくない……などといった雰囲気は見られない。みんな堂々としていた。やっぱりちょっと不思議なクランだ。
「こんばんは、黒豆さん」
「みんなおそろいでなんだか面白いですね」
ふふふと笑う黒豆に俺も微笑みかける。なんだろうこのちんまり可愛い生き物は……ちょっと柚子と並んでくれんかな。
お子ちゃまが親にコスプレさせられている感がある。
「ホームラン王大会ってなんでしょうねー、楽しみです」
「豆を拾って打つとかですかね。ちょっと玉には小さいですけど」
「そうですね……この間の大きさの豆はこの金棒では打ちにくそうですよね」
みんなで首を傾げていると、カウントダウンが始まる。空中に浮かび上がる数字がどんどん少なくなり、とうとうゼロが瞬いて霧散した。
すると、何もなかった平原に大きなゲートが現れる。かなり、大きい。四階建てアパートくらいある。楕円の鏡のような形をした白い枠があり、その中は暗くきらめいていた。
どうやらここをくぐって向こう側に行くらしい。
ソーダ:
蒼炎と深淵、アライアンス組んどいた。
半蔵門線:
了解でござるよ~!
『よろしく』
『よろしくお願いします』
チャットが賑やかになる。
『じゃあ行きますか~』
『おーっ!!』
アライアンスチャットで鬨の声が上がる。
俺たちは意気揚々とゲートをくぐり抜けた。
《目の前にそびえ立つゲートをくぐり抜けた来訪者たち。そこには鬼たちが待ち構えていた》
ゲートを中心に、平原が広がっていた。その周囲に等間隔で塔があり、頂上には鬼が立っている。赤青黄色緑、色とりどりの鬼だ。衣装は俺たちと同じく、伝統的な虎柄のパンツだ。
場内に鳴り響く曲は、『鬼のパンツ』だ。おに~のぱんつはいいぱんつ~ってご唱和してらっしゃいますわ~!!
「のこのこやってきやがったぞ!! あのときの恨み、今こそ晴らすとき!! 総員構え!!」
野太い、赤鬼さんの言葉に、鬼たちは側の籠から小玉スイカくらいの大きさの豆を持った。
「くらえっ!! 来訪者どもめっ!」
《これより、豆打ちホームラン王大会を開催します。鬼が投げてくる豆を打ち返し、見事鬼に当てれば勝ちです。豆が当たってダメージが蓄積し、一定数を越えた場合退場となります。装備は変えることはできません。鬼に豆以外でダメージは与えられません》
『また貢献度だろー? 次は何に使うんだ……間違いなく大切だってことは学んだからな』
とジラフ。周囲のアライアンスメンバーもハッとした。
貢献度がかなり重要だということがわかった昨今。イベントには参加すべきなのだ。特にトップクランは。
ソーダ:
ピロリ!! 豆集めてお前も参加しろっ!
ピロリ:
はっ!? 嫌よ。何よ急に。
八海山:
貢献度だ。イベントは貢献度得ることのできるものだろう!
ピロリ:
……確かに普通のクエストよりはいいわね。でも、断固拒否よぉ~!!
クランチャットで絶叫するピロリ。
ソーダと八海山がとにかく来いと言いつのる。そんな中、俺たちは降ってくる豆と戦っていた。鬼のピッチングが異常に早い。まあそれは仕方ないかも。プレイヤーすごい数いるからね。
『時魔法使うからッ、普段動き慣れてないから嫌な人は申告してねッ!』
案山子が宣言し、次々とパーティーメンバーにかけていく。俺ももらった。クラン狩りのときは結構かけてもらっているから俺は慣れている。
『豆を打ち返すのも大事だけど、当たらないのも大事ですね』
蒼炎のマロンさんが言うと、何か魔法を掛けてくれた。
リフレクション、だそうだ。跳ね返す!
『一定ダメージで消滅ですけど、イベントだとわりと一撃破壊です。当たったら切れると思ってください。お気をつけて』
ありがとうございます。
一度に入れる人数が決まっているらしく、オーバーすると別チャンネルで新しく会場が建つらしい。アライアンスを組んでおいたのは正解だった。
筋力にはもちろん依存するが、器用さも重要で、魔法使い組が打ち返した豆はしっかり鬼に当たる。
だが後半、塔に立っている鬼が減ってくると、なんと豆が途中で分裂した。散弾銃仕様だ。しかも豆の大きさは変わらないというイリュージョン。とうてい打ち返しきれるはずもなく。ダメージが蓄積し、退場。鬼の衣装五点セットは儚く散った。
が、もう一度豆を集めて五点セットを手に入れられれば入れると知り、ミュスの乱獲が始まった。お祭りは一週間続き、もちろん、ピロリもしっかり頑張っていました。
最後にみんなで記念撮影。一年があっという間だったね。
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黒豆と柚子ちゃんは並ぶと多分かわゆい。




