381.杖用の木と魔石
飛行船が繋がり、第7都市にも来訪者の訪れが加速している。
来訪者の中で【鑑定】スキルを持っている者は少なくない。己を鍛えることを好み色々なことに首を突っ込みがちなことが多いので、きっと今後もこうやって杖の材料を持ち込んでくるだろう。それならばと、俺たちは試されることとなったのだ。
『楽しそうなクエストね~』
『ウキウキなのじゃー』
『強い杖が手に入るッ!! お金が貯まればッ!』
『割引してくれるかもしれないでござるよ?』
『それはどうだろうな。それなら枝を魔法使い系が採りやすい状態じゃないとなかなかバランスが難しくなるかもしれないな』
ソロは杖に関してはかなり難しいだろう。
『単に【鑑定】持ちが受けられるクエストの一つなんじゃね?』
とはソーダ。俺もそう思うな。ファマルソアンに伝手がなくても、杖職人に持ち込んで話が始まりそう。
パーティーチャットできゃっきゃしている間にエルフたちの間でも話し合いが終わったようだ。
「いいか、杖は魔石があってこそだ。魔石もまた杖向きのものとそうでないものがある。特に杖に使う魔石は、森の奥を進んだところにある『星鏡の湖』で生まれるものを使う。他の都市で作ってるものは知らないが、我々がソウトゥースオークと使うのはこの湖で生まれる魔石のみだ。問題は、そこへ辿り着くまでにハマドリュアスバブーンがいるし、湖に住む、魔石を集めるブラウンオッターという魔物がいて、これが生まれた魔石を巣に溜め込んでしまうというところだ。ブラウンオッターは陸地にも上がってくるし、湖の中も自由自在に泳ぐ。ヤツから魔石をとるのがなかなかに大変でな」
ハミエル爺さんの隣に立っている、男性エルフが教えてくれる。爺さんはその隣でうむ、とかむう、とか言っていた。
「ブラウンオッターから魔石をとる手順のようなものはあるんですか? ブラウンオッターを始末してしまって問題ありませんか?」
「始末するのは問題ないが、あれは形勢が不利とみると湖に逃げ込んでしまう。その間に巣穴を探るのが一般的な手順だな」
ダメージを与えて、巣穴から魔石をとるんだな。了解。
ログアウトまでには丸一日あるので、それならば行ってみようということになった。クランハウスで【持ち物】、ウェストポーチの中身を整理して、いざ出陣。ハマドリュアスバブーンをいなして進む。他のモンスターはそこまで強くないし、何よりアクティブはあまりいない。そこは楽だった。
とはいえそのハマドリュアスバブーンの相手がとても大変なのだが。三匹来たらちょっとパニックになりそう。
ブルーアドミラルが群生していたマップとはまた少し方角が違う。あちらは平地だったが、今度は山になっていた。移動に多少の負荷がかかる。
『ちょっと疲れたというかEP減っちゃったのじゃ。休憩を所望する!』
『ピロリ殿や拙者に運ばれていたでござるのに!』
『コンパスの差なのじゃ』
本当に?
とはいえまあ、休憩だ。指定された湖のマップもすぐそこだ。
『オッターって、カワウソだろう? 弱点属性なんだろな』
『ブラウンオッターはまあ水属性だろうが、そうなると地、土属性だな』
『そこら辺の魔法は弱いのじゃ』
『初期魔法しかないねッ!』
『水辺の生き物だからベースは水かもしれないけど、予想外の属性もっていたりもするわよね』
何せまだ出会った記録がなく、多分俺たちが一番最初に遭遇する。つまり相手のステータスがわからない。
『他のマップでオッターと名前がつくものには会っているが、まあカワウソで、オッターの前につく名前で性質が変わっていたな』
ポイズンや、フラワーがあったという。フラワーオッターってなんだろう。面白そう。
『木魔法効くかな?』
『ビーバーじゃないけど、カワウソも巣穴作るのか? 木を囓るなら木魔法で出した木を倒されそうだ』
『カワウソは作らないのじゃ。水辺近くの草木が生い茂ったところに穴を掘ったり、木のウロに住んだりするのじゃ。水の中に入り口があって、そこから陸上に穴を掘ってということも多いのじゃ』
『ってことは、カワウソ見つけたときにそこら辺の地面ほじくり返せばいいの?』
『ピロちゃんの発想がひどいのじゃ……』
ビーバーみたいなものかなと思っていたがどうやら違うらしい。
『囓らないなら木魔法出してみようかな』
『普通の種からならいいよ』
もう謎の種や豆は育てませんよ。
『どちらかというと巣穴を探して、怒ったブラウンオッターと戦うって感じかな? カワウソ……テンとかそんな感じのやつだよなあ』
『カワウソは可愛いのじゃ。愛らしい見かけなのじゃよ~』
なんてことを言っていた柚子だが。
『可愛くない可愛くない可愛くないのじゃああああ!!』
星鏡の湖に到着すると、その周囲を二足歩行でのっしのっしと歩く、柚子くらいの大きさのカワウソが五匹ほどいました。
『微妙に筋肉主張してるでござるね』
『シックスパックだわwww』
『なんかこのゲーム筋肉推ししてくるよね。絶対開発の人に好きなヤツがいると思う』
海の男たちといい、この間のサンタにも紛れてたよ。
『筋肉フェチだねッ!』
湖は大きかった。向こう岸がかなり遠い。白鳥ボートで周遊したら一時間以上確実にかかる。
そしてその周囲、湖の縁のあたりや、湖の中に、ブラウンオッターとおぼしきモンスターがうろついているのだ。
『アクティブよね、きっと』
『アクティブの範囲が気になるでござるね』
『湖でひらけているから、リンクしたときがきついな』
草むらのこちらでこそこそと話し合っている。目視で六匹はいるのだ。気配察知で湖の中の、範囲にはいりそうなものが二匹いる。
『半蔵門線に頼むか……』
『【鑑定】範囲外なんだよね、あと少し距離縮めないと。属性がわかんないや』
『一匹釣って、【フロストダイス】で固めて【鑑定】できればいいんだが』
微妙に一匹が反応したら他も来そうな距離間を保っているのだ。
『あ、あの一匹がちょっと離れたでござるね。釣ってくるでござる』
『柚子、【フロストダイス】準備。溶けた間狙ってセツナも』
『了解なのじゃ』
『わかった』
天才釣り師の半蔵門線がそれはもう上手に一匹だけ連れてくる。
「【フロストダイス】」
柚子は3秒。でもそれで【鑑定】はできる。
パリンと氷が砕けたところに俺がすかさず追い【フロストダイス】だ。
『なんと弱点が風ですッ!』
『セツナ、【風付与】なんかいいのあるか?』
『範囲的なのは【烈風】かなあ』
実は風をあんまり使っていない。【青嵐】もいいかもしれない。
「【フロストサークル】」
俺の6秒氷が溶ける前に柚子がまた凍らせる。
一匹なら氷でこれでもいいが、数が来たときはできれば弱点属性でやりたいのだ。
『拙者も一応【風付与】もらっていいでござるか?』
『私もいただいておこーっと』
MPももらっていざ勝負だ。
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