377.エルフの里のドワーフ
エルフの里に一人だけのドワーフは、めちゃくちゃ大人だった。
「まあ、嫌い合ってちゃ話も進まねえからなっ! 相手を理解することが大切よお」
ぐいっと日本酒をジョッキでやりながら、サーモンのルイベを堪能している。他のお刺身も気に入ったようだ。
「エルフもドワーフもこだわりが強い。そこがぶつかることが多いんだよ。これを言ったら怒り出すなってのがわかってりゃ自然と上手くいくもんさ。俺と話してて喧嘩になることが少ないってわかったら、相手の態度も軟化する」
クランハウスのテラスでサンセットを眺めながらの飲み会。テーブルのランタンで雰囲気もバッチリだ。
柚子は早速フレンド交換したらしい。まだ順番が来ていないようで、新しいクエストの知らせはなかったが、今後スムーズに話が進むだろうと喜んでいた。
ソーダと八海山とピロリは一階で狩りの話し合いだそう。ファマルソアンさんが教えてくれた金策だ。さぞかし金になるだろうとしびれ、パラライズの対策を検討中。スレで行ったプレイヤーの話を探していると。
半蔵門線は用事があると出ていった。忍びの者だからね。忙しいな。
「イェーメールの職人もなかなかの腕をしているな。いい細剣だ」
俺の付与剣を見せてほしいというので渡してあげたらランタンの光のそばで一生懸命眺めていた。俺が作ったわけじゃないけど誇らしく思える。
「柚子や案山子は杖だろ。いい職人を紹介するぞ」
「それは嬉しい……のじゃが、今は空前絶後の金欠中なのじゃぁ……」
「ハハハ! こんないいところに住んでて金がないってか。うーん、お前さんたちの実力でギリギリってところにいいものはあるが……」
そう言って提示されたのはやはり先ほどファマルソアンさんから教えてもらったマップだった。ただ、必要なドロップ品が違う。
「ブルーアドミラルにほどよく樹液を抜き取られたソウトゥースオークは杖のいい材料になるんだよ。落ちている実もいい値段がつくし、ブルーアドミラルを上手く始末できればけっこうな稼ぎになるはずだ。問題は鱗粉のしびれだなあ。あれで命からがら逃げることになるのが多い」
そこはしばらくは通って耐性をつけるってところだろうか?
「しびれ対策のアクセサリとかは売っていないんですか?」
「ここいらじゃ見かけねえな。生産体制を作れたら、かなりの儲けになるぞ。なんたってしびれは雷魔法でも出るからな」
そういえば過去にそんなことがあった気がする。海の中とか。
「相手はなんたって数でくる。柚子は範囲魔法はどうなんだ?」
「私はつよつよ【フロストサークル】が使えるのじゃー!」
「そりゃいい。氷は空気中に散らばったしびれ効果の鱗粉も凍らせる。数にも強い。ただ、火はダメだ。木が燃えちまう」
案山子が肩をすくめている。氷と火のコンボ攻撃は今回不可らしい。
俺は【針雨】が使えるかもしれない。
「鱗粉は風に舞う。風系の魔法は向かない場所だ。ソウトゥースオークは燃えやすいから火もダメ。氷が一番だな」
木について何も言われなかったところがちょっと腑に落ちない。爆発魔女のカランさんもいるのに、杖の材料は大切だろう。
「ヴァンが必要な素材はないのか?」
「ん? この辺りでか? そうだなあ……ここらよりも、例のウロブル近辺で見つかったアリの外殻を一度いじってみたいなと思ってはいる」
それならばと色々教えてもらったお礼だと一つ進呈した。
「これが噂の! すごいな。硬く、しなやかだ。いい防具になりそうだなあ」
「この間ほとんど売っちゃったのじゃ。必要ならまた取りに行ってくるから……依頼して欲しいのじゃ」
「金欠なのは伊達じゃないってか。色々いじってみて、エルフたち相手に儲けになりそうな防具の提案ができたら柚子たちに頼むぜ。指名依頼を出してやるよ!」
アリの外殻は結構高く売れるから嬉しい。そうだよなー。外殻とってイェーメールに売りつけるのも金策の一つだな。
ヴァンは他にも出された酒と料理をたらふく食って、大満足で帰っていった。海に落ちたら怖いから俺が船で送りましたよ。
「家まで着いていかなくて大丈夫ですか?」
「何言ってんだよ! 俺をどうこうできるやつなんていねえぜ」
それは確かにそうだろうな。ドワーフの腕っ節は強そうだ。
そして、少し行った先で振り返る。
「エルフは企みをあからさまに暴かれるのも嫌いだぜ」
いったいなんのこと?
と思ったが、ソーダたちと話して思い当たったのが、ソウトゥースオークがよい杖の材料になるよという話。
「あからさまにしちゃいけないなら……無邪気に行くしかないな。ほら、どうせ俺らには【鑑定】がある」
ソーダが俺と案山子を見た。まあ、【鑑定】したらたぶん、杖の材料に最適! なんて書いてあるに違いない。
「まあ、それは現地でまた考えよう。それぞれのスキルで戦闘の組み立てをやってみた。スレには突然青い蝶に囲まれて死んだ、危険なマップだとしか書かれてなかったんだ」
「その子たち、死に戻り前提でハマドリュアスバブーンもドンドン突っ切ってブルーアドミラルの群生地に出たみたいだから、まあ、なすすべなく即死ね」
半蔵門線も帰ってきたので打ち合わせをしながら蝶の群生地へ向かうことにした。
夜中からが俺たちの活動時間である。
「アンジェリーナさんっ!!」
微回復だよ。でもこれ、本当に微だし、一度使うと三分間継続、七分使えない。つまり十分サイクルなのだ。
「あんな効果があるなら、クラン内で組むべきだったな……」
「八海山は、私~?」
「御免被る」
「話にならないじゃないのよっ!」
ちなみに、八海山、案山子、半蔵門線が家族派だ。ソーダはなんか小さくごにょごにょ言ってたが聞こえない。
「そーちゃん、恥ずかしがっちゃダメなのじゃよぉ」
「誰も周囲回復できなくてくさッ!」
「まあでも、微でも回復してくれるとMPの節約になるから助かる」
ハマドリュアスバブーン、みよんと伸びる手が本当にいやらしい。
それでも、鳥さんを探すときにレベルアップしたり、俺たちもヤツの相手をするのに慣れてきて、ファマルソアンさんに教えてもらったブルーアドミラルの群生地へとやってきたのだ。
このブルーアドミラル、とても小さい。先日のナビ先輩よりずっと控えめな大きさだ。それゆえに当たり判定も小さく戦いにくくなる。
青い蝶がぶわっと団体で動くさまは壮観だった。
木の下にはたくさんの木の実……どんぐりじゃん!
細長いほうじゃなくて、まるっこい方。可愛い。
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今週は多少書けたので!!追加の1話です。
誤字脱字溜まってきちゃった。隙を見てやります。
いつもありがとう。




