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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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376/390

376.第七都市で金策を

「私もご一緒させてもらえるとは光栄ですね」

 そういってファマルソアンは八海山のポータルに身を投じる。いつも一緒のカランさんもぴょいっと行った。

 そう、ローレンガで山盛り買った日本酒を抱えてイェーメールへ移動したのだ。


「助かります。アランブレに一度帰らねばならぬ用事ができたもので」

 ローレンガへポータルで移動、酒を詰めている間に商談していたようで、ほくほくしているファマルソアンさん。

 そのままイェーメールの酒屋へ横流しする。


「俺たちはもう一回行ってきますね」

「よろしくお願いします。そうだ、店に連絡しておくのでミラエノランにも一回分お願いしてもいいですか?」


 イェーメールのポータル位置から酒屋まではほとんど距離がないので問題ないが、ミラエノランはクランハウスから船に乗って移動する。重量オーバーしない程度でということになった。


 とここでピロリに肘打ちされる。

 ぐはっ……ダメージ……愛を叫ぶぞ……。

 要求されていることはわかったので、俺は前に出た。


「ファマルソアンさん、第7都市周辺か、まあ別のところでもいいんですけど何かお手伝いできることってあります?」

 にっこり笑ってみせると、察しの良いファマルソアン……ではなくカランさんが、ファマルソアンさんに耳打ちする。


「ああ! そうですね、クランハウスのグレードにあった内装を整えたいですよね。あの島の家は貴族の屋敷を除いては、周辺の街すべて合わせてもトップランクですから。ふむ……みなさんならいけそうですね。ハマドリュアスバブーンの出る森を西に抜けると、ブルーアドミラルの生息地です。ソウトゥースオークがつける実がとても美味で、高値で取引されます。しかし、ブルーアドミラルは自分たちのテリトリーに他の生物が入ってくると怒り狂い攻撃してきます。ブルーアドミラルの鱗粉にはしびれの効果があります。こちらをどうにかしなければなりませんね」


「ブルーアドミラルって、しびれている間にどんな攻撃を……?」

「体液を吸われます。一匹はたかが知れていますが、群生地なので」


 ひええ……こわっ!


「増えすぎると困るので我々も定期的に狩りに行きますが、毎回なかなかの被害が出ます。冒険者の皆様に手伝っていただけるならとても助かりますね」


 金策の情報を引き出せて一安心と思いきや、しびれ、か。


「パラライズ系は多少経験しているが、そこまで強いものじゃなかったな」

 八海山が何やら調べ物。


「街が助かるってのもポイントっぽいよなぁ……」

「ギブアンドテイクの街でこちらから先に与えるとお礼がすごそうッ!」


「とりあえず先に酒の移動をしよう。せめてイェーメールの方は終わらせるぞ。その後情報収集だ、八海山」

「わかった」

 ということでローレンガとイェーメール移動をもう一回こなして、そのあとまともに歩ける程度の酒を持ってミラエノランのクランハウスに移動した。


 二手に分かれて船に乗る。相変わらず魔術師組は乗る専門だ。


「本当に、そこ二人覚えておけよ?」

「追い詰められればやるのじゃ」

「そのうちッ! そのうちやるッ!」


 これは絶対やらないパターンだ。


 ファマルソアンさんから教えてもらった酒屋へ向かう。

 なんと、ドワーフがいるっ!!


「おうおう、エルフの街にいるドワーフが珍しいか」

 笑うドワーフ。そりゃ珍しい所の話ではない。ウォルトだってドワーフ嫌いっ! ってなってた。ファマルソアンさんだって大概嫌ってたのに。


「あいつら魔法の方は得意だが、鍛冶の腕はからっきしよ。だが周囲には強いモンスターも多い。街に鍛冶場がないわけにはいかない。俺に伏して頼むのさ。剣を作ってくれってな! 多少お互い我慢し合えば金という絆で結ばれるんだよ」


 ギブアンドテイク!


「その代わり杖作りの腕はいいぞ。魔法を使う物ならこのミラエノランで物色するのが一番だ。さて、出してくれ、ファマルソアンから聞いてる。お前たちが命の水を運んでくるってな!」


 ドワーフの命の水、そうお酒である。

 あれ? ここって酒屋だよね。このドワーフさん、話の流れで鍛冶職人かと思ってたけど……。


「ヴァン様困りますよ」

「いいじゃねえか」


 酒を運んだ店舗はそこまで大きくないがアランブレでも見る一般的な大きさの小売店だった。イェーメールの酒屋は、あれはかなりでかい。需要がすごいから仕方ないんだろうが。


 裏口がわからないので表から入り、店のカウンターにいるドワーフ、ヴァンと話していたのだ。

 しかしそこへ奥から男性エルフがやってきた。


「酒が来るって連絡くれたのはお前さんだろうに」

「ヴァン様のお仕事のやる気アップに繋がるかと思ったのですが、逆効果のようですね」

「堅いこと言うなよ。納期は全部間に合わせてる。今もらってる注文は今週末までに終わらせればいい。今日くらいニホンシュで一杯やってもバチはあたらねえ」

「仕方ありませんね。みなさんこちらへ。納品を終わらせてしまいましょう」


 【持ち物】からぞろぞろと酒を出していると、さらにもう一人店員さんがやってきて運ぶ。部外者のヴァンも一緒になって棚に並べていた。


柚子:

ドワーフクエスト、各地のドワーフ巡りも入っていそうなのじゃ。

こやつもきっとキーパーソンなのじゃ。てことで酒盛りを提案するのじゃ。


ピロリ:

柚子ちゃんが飲みたいだけでしょ~


ソーダ:

まあ、この後そのなんとかを取りに行く算段するし、柚子は飲んでてもいいぞ。


柚子:

わーいなのじゃー。荷物の中に食べ物がないからクランハウスに取りに行くのじゃ。

……せっちゃん、送ってほしいのじゃ。


 船が漕げない。さっそく困っている。



「これが全部俺の酒ってかっ!」

「全部はダメですよ。エルフの中にも酒好きはおりますし、この辺りでは珍しい種類ですから一本くらいは買ってみようというエルフのお客様も多いですから」

「買い占めるぐらいの財力はあるっ!」

「だめですよ?」


 酒を前にしたドワーフは弱い。

 そして飲みニケーションを得意とするドワーフは押しが強い。


「一緒に飲むのじゃ。ローレンガのニホンシュに合うつまみもたくさんあるのじゃ!!」

 てててと駆け寄って柚子が言うと、ヴァンは目を輝かせる。


「そりゃいいな! 俺んちの特製ブルストもあるぜ」

「ドワーフのブルストは絶品なのじゃ。イェーメールでたくさんごちそうになってるのじゃ!!」



 そしてヴァンを俺たちのクランハウスにご招待という流れになった。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 漕がなくていい理由を作るのが上手い
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