363.鳥カフェの特別メニュー
鳥の館の正式な店名は、「西風の鳥籠」だった。
看板に綺麗な鳥の絵が書かれている。いわゆる、鳥カフェだ。真夜中やっている鳥カフェである。
「真夜中やるってのがすごいわよね」
「怪しげな店と思われても仕方ないのじゃ~」
扉を開くとカランとドアベルが鳴った。そしてぴぃぴぃヂーヂーと鳥たちの鳴き声が聞こえる。
「いらっしゃいませ」
扉のすぐ横に立つ男性エルフ。低い耳心地のよい声だ。しかしそれもやかましい鳥の鳴き声にかき消されてしまいそう。
「7名様でよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします……」
そう言うと、俺たちは奥のソファ席へと通された。カフェ自体はいたって普通。布張りのソファに木の机。
鳥カフェってどうなんだろうね、某ネズミーランドにあるよね、魅惑の……。
60分1ドリンク制だそうで、俺はメニュー表を見ながら上を見上げる。
色々と、フン的なあれやこれやが気になるがまあ、ゲームなのでそこは省略されているのかな。店内は綺麗なものだった。
『鳥のさえずりに耳を傾けろッ! だったよねッ!』
ぴいぴいちいちい、ヂーヂー。
「ちょいミュスの鳴き声が聞こえる……」
「幻聴よ!! あんな風に鳴く子もいるわよ!」
こう、やった瞬間に鳴く、ヂュッ! みたいな鳴き声が混じるんだって。
俺が上を見てヤツの姿を探している間にみんなは注文を決めるようだ。
「まあ、ホットでいいかな」
「珈琲普通にあるのよね~どっかの領で作ってるのかしら?」
「俺ッ! マンゴーラッシーッ!」
「私は利きざ……うん? 利き耳??」
うん?
俺も目の前のメニュー表を覗き込む。よくあるタイプの黒い背表紙のヤツだ。ぺらぺらとめくると見つけた。
そこには、利き酒ならぬ、利き耳というちょっとお高めの注文があった。
『これは、……頼むしかないな』
八海山の言葉にみんなが頷く。なんだよ、利き耳って。スキルの【聞き耳】でもないじゃん。
「すみません、利き耳を7つ」
『耳は対じゃないの?』
『うるさい』
『7セットなのじゃ!』
『両耳来るとは限らないでござるよ』
『え……耳来るの?』
俺の質問に、みんなの脳内に耳が駆け巡る。
俺は某芸人の突然出てくる大きな耳がお皿に載って出てくるのを想像しました。
しかし現れたのは黄色い炭酸水が7つ。
「お待たせいたしました」
想像してたんと違う。
『ちょっと誰か飲んでみてよ』
『ええ、なんか普通のドリンクなんだけど、騙されたか?』
ソーダの台詞が刺さるんだよ。俺ら騙された? 面白メニュー的な?
『ドリンク1つに5000シェルじゃぞ!! 騙されたと思ってみんなでせーので飲むのじゃっ!』
ということで構えっ!
「いただきます」
ストローでお上品にいただいたら。
「う……」
「めちゃめちゃ知ってるお味だわ」
「りあるな……ごーるどッ!!」
普通に美味しかったです。
ぴいぴいちいちいぢぃぢぃ。
ぴいぴいちいちいめずらしいなどわーふだぞ。
ぴいぴいみらのえらんにどわーふがいるぞ。
おそれしらずだな。
いやいつものどわーふじゃない。
なんでもらいほうしゃっていうらしい。
『聞こえるぅ……』
『聞き耳頭巾みたいなッ!』
『えーと、「鳥のさえずりに耳を傾け、進むべき道を問えばいい」だっけか。あっちはこちらがわかってるのを知らないだろうから、普通にダンジョン探してるって話をすればいいのかな』
『そうでござるね。自然に自然に』
そう、自然に。
「あーもー、ダンジョンどこにあるのよぉ~強い敵に、会いたい★」
「戦闘狂がわめいてるのじゃぁ」
自然にの初手がピロリのそれで笑う。
「統計的にミラノエラン周辺のどこかにダンジョンがある確率はかなり高い。9割は固い」
きりっとおっしゃる八海山。何調べなんだろう。でもまあ、新しい街が出てきたらダンジョンはあるもの! 絶対あるさっ!
「森を探しても全然わからなかったな」
『ぴぴっ! 馬鹿な人間たちだな』
『エルフと言ったら森だろうとか、安易安易』
『街の近くにダンジョンはもちろんあるが、こいつらの頭じゃ見つからないんじゃないか? ヂヂッ』
『ちょっとイラッとくるでござるね』
「しかしこれだけたくさんの鳥がいるとは、壮観でござるね。多少間引いても気付かれなさそうでござるよ~」
『この黒いの! 趣味の悪い黒いの!』
『オイラたちを食べるつもりか!?』
『なんて野蛮な!!』
ちょ、半蔵門線www 話がそれちゃったよ。
「やめようよッ! 鳥ならもっと美味しそうなのがいるよッ! ここら辺のは……身があんまりなくて不味そうッ!」
『このエルフ……不味そうとは失礼なっ!!』
『きっと頭の悪いエルフだ!』
『頭の悪いエルフは砂浜の魔物に喰われたらいい!!』
砂浜の魔物……ほうほうほう。
お互いチラチラアイコンタクト。
「でもダンジョンと言ったら森なのじゃ。地下なのじゃ! もう一度森に行く??」
「森はなあ、ハマドリュアスバブーン結構大変なんだよ」
『ほう、あやつを相手にできるというのか』
『この野蛮人たち、結構やるな』
『それなら砂の魔人ともいい戦いが見られるんじゃない?』
砂の魔人!! 砂ダンジョン!
俺たちのプライベートビーチ(ただし40軒以上と兼用)とはまた違う方に一般公開されているビーチがあるらしい。必要ないから行ってなかったけど。というか島だからさらに俺たちのプライベートビーチがあるんだよね。クランハウス所持者じゃない人たちはそっちで青い海白い砂浜を体験しているそう。
「森のありそうなところはだいたい見ただろう。他のところにも目を向けるべきでは?」
『お、この獣人はなかなか見る目があるな』
『そうそう、すーぐみんな森に走るのよ』
『犬だろ、砂浜をむやみやたらに掘りそうだ』
八海山の尻尾がピンとなる。
隣に座るピロリがポンポンと腕を叩いていた。
「海よりは、第8都市へ向かう道すがらとか?」
「第6への道すがらかもしれないでござる」
『ぴぴぴ! お間抜けさんたちだな!』
『どうせこやつら、明け方の砂浜に現れる蜃気楼なんて見やしないだろう。夜は寝るもんだ』
『だが、こやつらこうしてこんな時間にここにいるぞ?』
『無策で明け方の砂浜に行ったとて、巨大なハマグリが出たーですぐ討伐する抜け作だ』
蜃気楼の蜃って、ミズチとか、大きなハマグリとかそんな説があるらしい。それらが気を吐いて楼閣を作り出すとか。
『砂の魔人を倒して蜃を保護したらヂュッ』
『蜃を守るのはぴ、ぴぴぴ』
ぴいぴいちいちいぢぃぢぃ。
どうやらここまでのようだ。
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