360.新しいダンジョンを探せ(第7都市)
クランハウスはソーダのクランと、ロジック、漆黒、蒼炎が2ハウスを持つことになった。蒼炎はアランブレのクランハウスをメインとするそうだ。第7都市はサブハウスなので1番小さな海のコテージを買ったそうだ。中堅でいくつか買ったところも、第7都市のクランハウスは小さい移動用にするのが主だ。
第7都市のクランハウスは全部売り切れたという。1番小さな水上コテージは5000万シェルだから、1つ目ならば余裕だろう。アランブレのソーダたちが買ったクランハウスは、アランブレでは大きい方らしい。基本的には外観からは考えられない異次元空間個人部屋習得がメインとなるので、外観と内部の広さが同等な大きさの俺たちのクランハウスはかなり趣味枠ということになる。
クランストレージと移動が目的のメインだ。
後から導入されただけあって、第7都市のクランハウスの方が値段が高い。
第1都市アランブレのクランハウスを放棄して第7都市を買うところもあった。
そういま、第7都市は空前絶後のホットスポットなのである!!
『人が多いっ!』
『みんな新しいダンジョン探しているでござるね』
『まあ、俺たちも探してるんだけどさ』
自然み溢れる第7都市周辺はモンスターが結構強かった。マントヒヒみたいなやつ、怖い。手がぐんと伸びるの反則。逃げ切れると思ったらかすって大ダメージくらった。
『予定外の回復作業になったな』
八海山が回復連打してたもんな。ソーダは回復薬がぶ飲みしてた。
『ファマルソアンさんのヒントが役に立たないのよ~』
ファマルソアンさんに周辺にモンスターが多く溢れるようなところはないか? と聞いたところ、言い伝えを教えてもらった。
曰く、「鳥のさえずりに耳を傾け、進むべき道を問えばいい。さすれば悩みも開かれるだろう」というものだ。
ようは、鳥の鳴き声が関係あるのだろうから、鳥のいそうな森の奥を目指しています。
が、来訪者がうじゃうじゃしてる!
もちろん、間引きはされるのだろうが、ちょっと行くとすぐ出会う。
耳を傾けようにもオープンで話す来訪者は多い。人の気配で鳥が逃げる。
『鳥さんが逃げちゃうのが困るのじゃ』
『かといって、動くなとは言えないからなあ。攻略方法がしっかりわかってるならギミックのために協力をとか言えるけど、まだなんもわからん』
そんなことを言っていると例のマントヒヒのような、ハマドリュアスバブーンに出会う。
『マントヒヒ来たよ。2時の方向』
「【フロストダイス】」
手を伸ばされるのがかなりきつい。ということでとっとと固める。
出会い頭に【投擲】で投げてやれば3秒停止。3秒あれば完全に迎撃態勢だ。
「忍法氷遁の術【氷柱】」
遁術はお金をかけただけあってとても強い。
氷柱が空中に形成されてハマドリュアスバブーンに次々尖った氷の塊が突き刺さった。
空に向かって吠えるハマドリュアスバブーンに、次は柚子の【フロストダイス】があたる。
魔術師だけど熟練度の高い【投擲】の効果は抜群だ。
「【一刀両断】」
凍った状態で喰らう、ピロリの【一刀両断】は素晴らしい効果を発揮する。ちなみに、案山子もピロリに合わせて魔法を放っていた。本当に、合わせるのが上手い。俺は下手くそだから【索敵】と即発動の【フロストダイス】役。
『まあせっちゃんはパーティー経験が乏しいから仕方ないのじゃ』
『右上にタイマーつけたらいいよッ!』
公式が準備している便利機能があるという。
『俺らと組むときは問題ないけどな。というかセツナの立ち位置は初手かヘイト取りだからそこまで時間管理必要なさそう』
『にしても、今後のために勉強しておくのは悪いことではないと思うわ』
『時間、時間管理……』
『ヴァージルは、あっちが合わせてくれそうだけどな』
『レイスダンジョンのボスのとき、ヴァージルめっちゃ有能だったよな、時間管理』
『え、そうなの?』
『まあ、セツナは気にしてないかも知れないが、指揮してた俺からすると大助かり。そこへまたとんでもなく強いスキルぶち込んでくれるし。NPCすげえ』
ほー、俺には見えていない世界だ。
『しかし、鳥が見つからん! 一度帰るかぁ』
『そうねー、日も暮れてきたし、テラスのテーブルで夕日が沈む海を見ながら食事にしましょうよ~』
ピロリの提案が魅力的すぎて一度帰ることとなった。
日が沈んで行くの眺めながら俺たちは牛丼を食う。
「情緒ぉ~!!」
「でも牛丼美味しいのじゃ」
「せめて海鮮丼にするか……」
「今度は、パーティー料理ってのを学ばないとかなッ!」
美味しいから俺は満足だけど、パーティー料理は、それはそれで美味しそうだし楽しそう。案山子のさらなる発展を祈る。
「鳥のいる場所が間違ってるのかなあ」
「そういえば、迷わず森に行って、鳥は見つけはしたわよね。そのせいで森をさまよってたんだけど」
森のマップに入ってすぐに、綺麗な黄色とオレンジの鳥を何羽も見つけたのだ。
「あの鳥じゃなかったらどの鳥なのかしら」
「うーん……街の中をもっと歩いてみるかあ」
「マントヒヒもどき強いし、あれと戦ってると謎解きなんぞしている暇がないのじゃ」
夜はもう一度森に入ってみたが、それこそ本当にガチの戦いになった。
経験値が溜まるくらいだ。
ただ、そういった戦闘はなかなかに疲れる。集中の仕方も半端ないので長い時間続けられない。
結局夜も明けないうちに街に帰ってくることとなった。
入り口には門兵がいる。
「やあお帰り。夜の森は強敵が多いだろう? 疲れを癒やすなら花の木亭の横のサウナ屋をオススメするよ」
「サウナ……」
「へー、サウナあるのか」
もう森の出口だからとクランハウスに直行せず、正面の門から戻ってくるとそう声を掛けられた。
「サウナ面白そう!」
「行くのじゃ行くのじゃ。どうせ普通の店も街の人も夜が明けるまでおらん。オススメされたってことはこの時間開いてるんじゃろ?」
最後は門兵さんへの質問。
すると彼はにっこり笑って頷いた。
「マリアベルの蒸し葉は一日中開いていますよ。私も明け方交代時にはよく寄るんです」
そして俺は気付きました。終始無言の八海山の尻尾がパタパタしていたことに。
「整えちゃうッ!?」
「行くでござるー!」
まあ俺も異存はない!
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