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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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355/362

355.ファマルソアンの飛行船にて

 イェーメールから快適な空の旅。高速船です。聖地までが3時間、そこからさらに3時間だそうだ。まあゲームだから移動スキップもできる。ながなが飛行船イベントをするのも限界があるだろう。スキップしたときの時間のズレは察しろということらしい。高速船だしね!


「本当に円形になってるんですね、テラエトゥーラって」

「そうですね、なるべくしてなったといった感じでしょうか。12柱と聖地、それが均等に作られた土地です。大昔の神話の時代はあちこちで天災が降り注いでいたといいますが、それを神々が聖地を置き、12方向を守ることによって鎮まったと聞いております」


 ファマルソアンさんから語られる昔話は面白い。

 来訪者としてやってきた頃のエルフはさすがにもう生きてはいないという。長命といえどもヒューマンの3倍程度らしい。ここのヒューマンは人生60年してるので200歳くらいまでだそうだ。


「さてさて、まだ飛行船の旅は長いのでせっかくですし第7都市で協議した結果、みなさんにお支払いする報酬についてお伝えしますか? それとも空の旅を楽しんだり、身体を休めたりしますか?」

 そして目の前に出る表示。

 スキップするかどうか。お互いをチラチラ見るが気持ちは一つだ。

 報酬について知りたい!


「みなさん種族の色が濃いエリアに行くのは初めてでしょう。我々エルフもかつては来訪者でした。それがゲートが自然に閉じて、残った種族はテラエトゥーラに招き入れられた。しかし種族特性があるのもまた事実、第7、第8、第11都市はそれぞれ協議会や都市内の王政が敷かれています。第7都市は評議会。エルフの中でも力のある者が議席を得て第7都市の自治について話し合います。もちろん私も議席を得ています。皆さんを第7都市代表にねじ込めるくらいのね。聖地で話し合いをした際、だいたいの方向性と最低ラインを決めておりましたが、皆さんの素晴らしい働きによって、第7都市の活躍を他都市に印象づけることができました。よって我々はさらなるプラスを儲けたのです」


 やっぱり1位よかったんだな。最終的にはあちらの実力なのだが。


「前置きはこのくらいにして、第7都市は緑があり、すぐ海もある自然豊かな土地です。第7都市という場所を得た先達たちが自然を大切にしていった結果です。みなさんとのお約束であるクランハウスをこの森の地区と、海の地区2ヶ所ご案内できます」


「おおお!!」

「せっかくなので見学して決めてくださいね」


《第7都市にクランハウスエリアが出現します。クランハウス取得方法は公式をご確認ください》



ソーダ:

ちょっと確認してくるから適当に話合わせといて!


八海山:

俺も見てくる。



「他の来訪者の方々もいらっしゃるので、クランハウスとして売り出す地域が整備されました。基本的に周囲はクランハウスになりますね。都市内でのルールを守っていただければ、来訪者の方々がいらっしゃることを、我々は歓迎しております」


「ルールってどんなものですか?」

 適当に合わせろと言われたので質問してみる。

 怖いルールないかな……。


「そうですね、まず、他の都市とは違って都市がまるごと塀には囲まれておりません。門は設置されましたがあくまで形式的なものです。木々によって囲まれ、さらには海へと開かれている、今までみなさんが訪れた土地とは少し形の違うものとなっております。都市として塀では囲まれていませんが、特徴のある木で囲いにはなっているのでわかるとは思います」

 まあ、フィールドと都市部の違いはこちらはシステム的にわかりやすくなっているので問題なさそう。


「都市内部での採取は厳禁とさせていただいております。来訪者のみなさん、すぐ採取したがりますからねえ。一応こちらは都市内部の植生は管理しておりますので、みなさんがこぞって採取するとせっかくの景観が崩れたり、植生バランスが崩れたりしてしまいますから」

「了解なのじゃ!」


「次に、金の切れ目は縁の切れ目。エルフの領域で金銭トラブルを起こしたら、覚悟していただきましょう。みなさんといえども容赦はしません」

 ギラリと眼光鋭く言い放つファマルソアンに、みんなの肩がびくりと揺れた。


「逆に言えばお互いよい商売ができている間は良好な関係を築き続けるでしょうということです。もちろん、競合した場合などはそれはよい商売敵ということです。不正のない誠実なライバルはお互いを高め合うのでウェルカムですよ。そういったやりとりもまた人生のスパイスです。裏取引だって、ルールに則っていれば戦略の一つですから」

 お互い正々堂々と裏で暗躍する分には問題ないってことか。正々堂々と暗躍。なんとも言えないこの字面。



ソーダ:

見てきた!!

クランハウスは競合した場合クランメンバーの合計貢献ポイントの高い方が取得できるんだって。申請期間が今日からリアル時間1週間で、この1週間で見学もできるそうだ。


ピロリ:

ぜっっっっったいする!!


ソーダ:

のちほど第7都市の項目にクランハウス一覧が全員に表示されるようになって、申請フォームをクランリーダーに配布だって。ただ問題は、1つ目のクランハウスを持っているクランは、第2クランハウスにするなら機能が制限される。



 制限される部分は、俺たちが一番欲しい移動機能はあるが、生産施設を置くことはできないあたりだ。



案山子:

料理不可ぁ!!


柚子:

アランブレと行き来すればいいのじゃ!


八海山:

移動機能がついてるからそこまで問題にはならないだろう。


ソーダ:

そしてここからが問題だ。

クランハウスをすでに持っているクランの処理だ。つまり俺たちだ。

現在クランハウスがあるのはアランブレのみ、今後ミラエノランにも増える。どちらにもクランハウスを持つ場合は、どちらを第1にするか決めること。個人部屋は第1にしか持てない。つまりメインクランハウスを決めろってことだな。クランハウス同士は移動できるし一瞬だからそこは問題ないし、現在アランブレに持っていて、今後ミラエノランにする場合は一度だけ家具の移動ができるそうだ。


ピロリ:

それなら雰囲気いい方でいいわよね~


セツナ:

アランブレ一択です。


ソーダ:

多数決にします。

さらには、個人部屋拡張が来た。金かかるけど。メインにおける生産施設拡張も来た。金かかるけど。


ピロリ:

やったーっ!!



 衣装持ちが大喜びだ。



ソーダ:

ただ、ここからが大問題。


 ごくりとみんながつばを飲み込む。

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― 新着の感想 ―
問題が貢献度ならせっちゃんが一人で解決しそう。
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 報酬として得ているから、他のクランよりは優遇されそう
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