352.海底神殿のカニさん
カニって横歩きすると思っていたんですが、このシュラインクラブってやつは前後自由にいける。あまりに違和感がすぎて戸惑いしか生まれない!
「こいつは甲羅が硬い! ハサミに捕まったら胴体が真っ二つだ、気をつけろ」
俺は【持ち物】からささっと細剣を取り出す。
2人は……素手ぇ!? 嘘だろ……嘘だと言ってくれ。
シュラインクラブは青い。この建物に溶け込むカラーだ。
「ちょうど3体。誰が一番最初に片付けるか勝負だな!」
にかっと笑う船長。武器、素手。
はっ!! そうか、闘拳士か!
そういや乙姫様いたな。海の姫様だし、ポセイドンもステゴロ……いや、トライデント持ってる。ヤリ系だぞ。
しかし、海と言えば闘拳士なのだ。
彼らが殴りが基本でも違和感はない。
だとしても、あの大きな爪を前にして闘うのはキツくないか? よし、素早く仕留めて助太刀に参ろう。
「カニの弱点は!?」
「弱点?」
「パンチだ!」
「そうだ、パンチだ!」
うーん、脳筋っ!!
まあ順当にやるかぁ。
MP不足が怖いので付与はなしだ。
「【フロストダイス】」
俺は安全策を取る。これが一番。
水分をたくさん含むカニさんはしっかり凍り付く。2×2の4秒だ。
「【ひと突き】」
どーんと体当たりで甲羅めがけて発射!! が、だめ。弾かれた。
すぐさま下がって距離を取る。
氷が溶けたカニさんが泡を吹き出した。
「セツナ気をつけろ、泡は足を取られる。思うように動けなくなるぞ!」
それは勘弁だ。とりあえず目玉狙うかぁ。あとは関節か。
「【投擲】」
カニの目玉はすごく、わかりやすいし狙いやすい。出っ張ってるところまんま狙えばいい。そして、【投擲】の熟練度は確実に上がっている。
シーッシーッとなんだか鳴き声のような音を立てて、目を閉じた。
そして泡の中を前後左右している。泡が自分の安全地帯だということを理解しているのか、憎たらしい。
そっちがその気ならこっちもだ。
生活魔法大全03、いっきまーす!!
「【洗浄】」
泡が綺麗さっぱりなくなる。
「【ひと突き】」
狙うは関節。爪の付け根を狙うと見事に入る。
すっと刃が吸い込まれる【突き刺し】でなく、もう少し体当たり的な【ひと突き】することによって、カニの爪が吹っ飛んだ。
イエス!
「おお、素晴らしい」
「狙い目がいい」
2人からもお褒めの言葉をいただく。
そう、2人……もう戦闘終わってる。
カニの甲羅砕け散ってるよ。
あれ、トレジャーハンターって斥候系だったよね? 敏捷性UP系が引っかかるんだと思ってたけど、なんで2人とも筋力系なの?
同じようにもう1つの爪ももいだ。実質シュラインクラブは無力化されている。それがわかっているのかカニさん逃げようとするんだよ。逃がすかぁ!!
【ひと突き】乱発して足を全部もいだところで無事死亡。
「うん、酷い!」
「セツナ君、トドメ早く刺してあげないと」
「いやいやいやいや、甲羅硬すぎるんですよ!」
刺せるものなら刺したかったって。俺だって鬼じゃないんだ。とっとと楽にしてあげたかった。
ドロップはシュラインクラブのカニ身。前にカニ食べたけど、美味しかったもんな。案山子に預けよう。シュラインクラブの爪も手に入った。
戦闘が終わったところで俺は上着を着る、街歩き用パーカーだけど、気持ちの問題。着ておく。また水に浸かるなら脱げばいいのだ。
「カニがちょくちょく出てくる。だがそれくらいだ。第2層はどちらかというとギミックが多くてな。俺たちはもう知ってるから簡単だけど、知らないセツナはちょっと大変かな!」
ジャック船長嬉しそうだ。
とはいえ、謎解きは好きなので頑張ります。
……生活魔法無双してしまった。
例えば、壁の向こう側に行かなければならないとか。【木登り】っすね!
例えば、まったく水のない部屋で水を注がねばならぬ器があるとか。【補水】っすね!
例えば、水浸しの場所にぽつんとあるランタンに火を付けろとか。【着火】っすね!
なんか映画で見たな。こんなシーン。
本当はギミック使うらしいけど、生活魔法が強すぎた。
2人も、ええーって顔してる。
それでもやっとギミックらしいギミックに来た。
明らかに違う床。
【木登り】で俺だけ上っても、2人は上れない。どうしたらいい? というやつだ。
【木登り】で登った場所から俯瞰してみればすぐわかる。
真ん中に大きな色の違う部分。その両側に小さな丸い色の違う部分。
「お二人でそことそこ、そう、立ってみてください」
すると、ゴゴゴゴゴと大きな音とともに下からせり上がってくる階段。しかし、2人がその場を離れると階段は元に戻ってしまう。
部屋には動かぬ彫像。
現れるシュラインクラブ。
甲羅を叩き潰せばモンスターは消える。だが、足だけ奪えばある程度まで生きている。爪以外は両側に4対の足を持つが、さっき7本目でおなくなりになったのだ。
「カニ退治です。まず爪。そのあとは下側の6本までは折って可ですが、殺さないで今お二人が乗っている石の上に置いてください!」
途端に2人の目が輝いた。
謎を解いてこそ、ってことかな。ごめんな、生活魔法マイスターが強すぎて。
爪は早々に飛ばして、下を狙うのなかなか難しい。2人は完全に手を抜いているので頑張った。下から順番に4つ吹き飛ばせば動けなくなる。上手くあたらなくて上側を飛ばしてしまったり。
それでもなんとか四つ足まで減らしたところで2人がカニを引っ張り出した。
きちんと色の違う2ヶ所に置くと、階段が現れる。
「よく気付いたな、セツナ!」
「ナイスファイト、セツナ君!」
海パンの男2人に褒められてもそこまで嬉しくないんだよな。
うん……早く、本を読みに行こう。
たまに見られると言っていたゴールドフィッシュには出会えなかったが、とうとう第3層。この辺りからお宝を溜め込んでいる魚が出るそうだ。5層が宝石と言っていたし、ここは何になるんだろう。
「トレジャーフィッシュの稚魚がうろついている。トレジャーフィッシュの成体は俺たちを丸呑みしてしまうほど大きいが、稚魚なら対抗できるしそこまで脅威ではない。それでもこちらを倒して身ぐるみを剥ごうと待ち構えている。気を抜かないことだ」
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