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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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351/362

351.【潜水】を手に入れよう!

 ソードフィッシュに斬られないよう倒す。それがこの次の部屋のミッションだった。


 雷系はダメだ。こちらまで感電してしまう。乙姫様のところで経験済み。【薄氷(うすらい)】が使えればいいが、たぶん魚はこの床から20センチくらいの水の中を泳いでいる。【薄氷(うすらい)】は氷の薄い層を作るものだから、水の中では通用しなさそう。


 気泡草がどれくらいあるかはわからないが、酸素を使う火はあまり使いたくないし、火と水の相性はイマイチだろう。


 水のスキルもそこまで。水の中では相手も強いだろうからな。


「お2人はいつもどうやって切り抜けるんですか?」

 俺が聞くと2人は拳を突き出した。


「強行突破だ!」

 とモラン。

 

「やられる前にやる!」

 とジャック船長。


 脳筋野郎どもだった。えー、斬られたら大変って言ってるのに。

 俺に使えるのはあとは毒くらいか? 毒はでも2人にも影響が出そう。


 となると……生活魔法。


「うーん、少し時間かかってもいいですか? 次の部屋ちょっと狭いし、なんとかなるか試しても?」

「うん? 何か方法が?」


 この、【生活魔法マイスター】にお任せあれ!!

 たぶん、いける?


 ソードフィッシュは水中の獲物の匂いで寄ってくるそうだ。ということで俺が先に入り、ジャブジャブ歩き回って相手が来るのを待つ。


 ちなみに部屋と部屋は扉などはない。まあゲーム的に壁に開いた穴を通れば次の部屋に行った判定だ。

 さあ、便利な生活魔法の出番だ。

 【気配察知】で敵の動きはわかる。最近は熟練度がかなり上がったようで相手の形状まで把握できるのだ。やぱり使うの大切。


「【沸騰】」

 向かってきたイッカクみたいになっている魚影に向かって宣言する。


 その瞬間、魚影が跳ねた。ビタンって。めちゃくちゃ熱かったんだと思う。ついでだとばかりに水面から出たソードフィッシュへ追い【沸騰】をかけると、水生生物には致命傷だったのだろう、そのまま水の中に沈んで動かなくなり、消えた。ドロップはソードフィッシュの刃。


 この調子でバシャバシャやってるとソードフィッシュが次々寄ってくる。

 やはり生活魔法強い。マイスターなのが余計に強いんだと思う。やったぜー!!


「お待たせしました。行けますよ」

 俺が声を掛けると、2人は驚きに目を丸くしていた。


「まったく傷を負うことなく! しかもソードフィッシュの血すら流していない。生活魔法はいくつか知っているが、使いようによっては冒険にも便利なものなのだな」

 ジャック船長がとても褒めてくれるので嬉しい。

 やりましたよ! ブラウン先生っ! たぶんまた微妙な顔されちゃうけど。日常を便利にするはずの魔法だからな。あんまり自慢しないようにはしようと思った。

 たぶん、旅先の野宿でお茶を沸かすのに便利だったとか言われた方が喜ぶんだろうな。


 ソードフィッシュを倒してさらに進むと、下へ続く階段があった。


「これから下はもしかして……ずっと水の中!?」

「いや、所々気泡草の群生地があるから、全部ではない。反対に水が一切ない部屋もある」

 ただ、この先は少し潜って、天井近くの空気溜まりを移動するらしい。


「俺が先導するから、ついてこい」

 船長が先を行った。


《ミッション! 空気溜まりを上手く使って3人一緒に次の層へ辿り着け! 諦めるまで何度でもやり直しができます》


 そう言われて始まったのが、息継ぎと泳ぎの絶妙な調整ゲームだ。長く緩やかに傾いている階段を泳いでいくのだが、これがなかなか難しい。

 空気溜まりは使えば減る。先を行く船長たちが使った分が減っていく。


 さらに俺が適当に使えば後ろのモランの分の空気がなくなる。

 どれを使うか見極めるミッション……と思いきや、これは失敗を繰り返して【潜水】を手に入れるミッションでした。


 3回やり直したところで【潜水】が生えた。


「大丈夫か、セツナ君。やはりまだここは早いか……」

「いえ、ご迷惑をおかけしていますが、俺もこの先に行きたいっ!」

 失敗すると元の位置に戻され介抱されるところから始まる。おっさんの水着姿に1ミリも萌えない。覗き込まれても虚無にしかならないんだって。早く終わらせたい。

 【潜水】できるようになったから3番目の息継ぎを抜かせるはず! そうすればモランも息継ぎ足りるとみた。


 ということで次こそクリアして見せる。


「それじゃあ行くぞ」

 ジャック船長はいつも同じところを行くのだ。これ、船長ターンいらねーじゃねえかという話だが、まあ1度目は要領を見せてくれているのだ。あとは同じことを繰り返しているだけ。そう考えるとシュールだな。


 1つ目の息継ぎ。ここはいいはず。すぐ先にもう1つあって、それがモランの分。

 2つ目の息継ぎ。ここまではOKだ。モランもまたその先を行ける。2回目、ここを抜かしてモランへと思ったら次の次が出てこなくてモランが逝ってしまった……。ここは俺が息継ぎ、次にモランが息継ぎ。

 そして3つ目だ。

 俺は2つ目からすぐさま【潜水】を始めて一気に距離を伸ばす。すると、モランは間が長いところを2回続けて息継ぎに使った。で、俺が次を使ってと、この難所をくぐり抜けたらあとは余裕だった。


 【潜水】がないとクリアできないミッションなんだな。

 そうやって覚えさせてくれるミッションだった。


「はあ、なんとか無事に2層に辿り着けたな!」


 緩やかに下る通路を何度も折れ曲がって次の層にやってきた。

「ここはそれほど厄介なモンスターはいないはずだ」

 確かゴールドフィッシュがいるかもしれない層だ。

 気泡草が足下に群生していて、一段高い通路には水が無い状態だ。


「ここで気をつけなければならないのは、カニだな」

 そしてよくわからない彫像を指す。

 神殿内は緑色の石と白い石と青い石が綺麗に組み合わさり作られている。1層は一つ一つの部屋はそこまで広くはなかった。だが2層は部屋が大きい。大きく、水際に気泡草がわさわさしている。今いる場所はちょっとしたホールのような大きさだ。そこから四方へ扉があるのだ。


 よくわからない彫像はギリシャ神話風おじさんが彫られている。手にはトライデントを持つ。

 ただ、乗っているのが馬? 馬なの?

 ポセイドンと馬って何、なんで……。


「我らが海の支配者ポセイドンだ。海を守り、海の中を取り締まる」

 神ではないようだ。まあ、この世界神は星座で12柱だもんな。


「ああいった物陰にいるのが、カニだ。大きなハサミが厄介だぞ。気をつけろ」

 とか言ってたらちらりって、姿を見せてくれました。

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― 新着の感想 ―
ポセイドンって馬の神でもあったはずだが ナニが不思議なんだろうか? 海、嵐、地震辺りの印象が強すぎて知らないだけか?
大量に持って帰ったら蟹鍋パーティーですね? ポセイドンはオリオンのお父さんだったはずだから十二星座じゃないけど神話関係者ではありそう。
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 ポセイドン 何かありそうだなぁ
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