350.いざ海底神殿へ
ログインして指定の場所へ行くと、あー、いたいた、こんな人。そしてその横にはいつものメンバー。海の男たちだ。
「こんにちは……」
「よっ! 待ってたぞ。それじゃあ行こうか」
「そうか、セツナはトレジャーハンターになったのか」
そういって船長からもフレンドが飛んで来た。
お名前……ジャックさん。そうですか。ジャック船長かな、ファミリーネーム教えてもらえんかったからジャック船長だな。うん。
「トレジャーハンターに……なりましたね! 今日はよろしくお願いします」
素敵なお宝を手に入れてアンジェリーナさんにプレゼントしたい!
いにしえの修復道具とかさ、そういったもの、あるかもしれないじゃん?
「海底神殿には何度か挑戦しているんだが、まだ最奥まで行けてないんだ」
とモランさん。
「船は部下たちに任せておく。俺も今回は潜るぜ」
と、頼もしいジャック船長。
「さあ乗った乗った! 船はすぐ着く。ここからかなり近い場所にあるんだ。入ってすぐは比較的初心者向けだからな。やがては一緒にこの海底神殿をクリアできたらいいな!」
一度には無理だぞって暗に言われている。
それでも海底神殿はちょっと楽しみなので頑張りたいと思う。
思った。
思ったんだよ……。
「なんだ、海に潜るのに水着がないのか」
「その重い服じゃ溺れるだけだぞ?」
そう言って装備をひっぺがされた。やめてーっ!
渡されたのは1枚の水泳パンツ。どっちがいいって、聞かれたけどサーフパンツタイプとブーメランビキニタイプ。どう考えてもサーフパンツ一択。無理やりお着替えさせられた。カナリアイエローです。
船長たちもサーフパンツタイプだった。だけど、一瞬【鑑定】したところ、ビキニタイプの方が防御力が上なんだよな。なぜ。防御力上げたいからとそっちを選ぶとでも思ったか、運営よ。お断りだ。
「神殿内は空気があるから、潜っていく間だけだが、それでも服で海に入るのは自殺行為。アイテムポーチに入れておけ。中で上着だけ着ればいい。すぐ脱げるようにな」
とかいいつつ、船長は船長ハットとらなかったね。
本当にすぐ着く。冒険者もよく来るダンジョンらしい。
「トレジャーハンターとして大成するには、数をこなすことだ。そうすれば自然と勘が働くようになる。お宝を嗅ぎ分ける嗅覚が身につく。さあ、それじゃあ行くぞ」
そう言って景気よく飛び込む2人。俺も続いて甲板からドボンと飛び込んだ。
2人が俺を待って大きく息を吸い込んだと思ったら潜る。俺も真似をした。
泳ぎのスキルは手には入ってなかったが、たぶんこれ2人があのチョウチョナビと同じような役割なのだ。
2人の後ろをじたばたしているうちに【水泳1】を手に入れた。その辺りからまともに前に進むようになり……目の端に映っていたゲージが黄色くなる。
あ、息だこれ!!
それでも神殿はすぐそこに見えている。正確には神殿のてっぺん。海の中に緑色の石でできた建造物があって、そのてっぺんの入り口を2人が指さしている。入れってことだろう。
ゲージが赤い。円形に現されたそれは、3時の方向を指していた。たぶん12時になったら終わる。
足をばたつかせるとさらに【水泳2】が現れ速さが増した。
近づいたところで2人がそれぞれ俺の腕を握ったかと思うと穴の中に飛び込む。俺がまだ出せないスピードで中に引きずり込まれ、気づくとゲージが消えていた。
「あああ、ギリギリっ!!」
「危なかったな。ここにはほら、その草が見えるだろう? あれが空気を作り出す気泡草で、神殿内部にこういった空気のある空間を作り出すようになっているんだ」
赤いサーフパンツのモランがサムズアップ。
黒い海賊ハットに黒いサーフパンツのジャック船長がサムズアップ。
俺も一応サムズアップして返しておいた。
帽子が謎。
ちなみに、中に入って俺が息を吸っている間にモランが光る石を入ったところのあちこちに投げて明かりを確保している。
そんなアイテムもあるのか。【夜目】があるから俺は平気だけど普通はそういったものを使うらしい。
「十分太陽の光を吸収しているはずだからね。帰りに回収を忘れないようにすれば大丈夫さ」
気泡草のおかげで、部屋には首より上の空気が確保されている。
「次の部屋に行けばもっと水が減る。そこからがトレジャーハントだ」
そう言ってモランは先陣を切った。
俺も大人しく後についていく。【気配察知】にはまだなにも引っかかっていない。
「この海底神殿は、第1層から第5層まであり、第5層はかなり強いモンスターがうろついている。慣れるまでは3層あたりのトレジャーを狙うのがいい。今日はセツナ君は初めてだし、3層を目指そうと思う」
「はい、よろしくお願いします」
最初のダンジョンでトレジャーハンター連盟に加入して、ここがまだチュートリアルといった感じなのだろう。チュートリアルは大切。俺知ってる。
今のところ派手な色のサーフパンツ以外は不満はない。
「この神殿最深部は俺たちも行ったことがないが、宝を溜め込むと言われてるトレジャーフィッシュがうじゃうじゃいるから、かなりすごいお宝が眠っていると言われている。第1層は特にめぼしいものはない。2層にはゴールドフィッシュがたまに出るそうだ」
名前からしてお高そう。
「第4層に行けばジュエルフィッシュがいるな。あそこは1匹倒せばかなりの儲けになる。恋人に宝石をプレゼントしたいならお勧めさ」
あーっ、絶対今度行く。行ってやる。
「この海底神殿って、トレジャーハンター以外も来られるんですか?」
「あまり見ないが、まあ、来ようと思えば?」
「あまり見ないな。大丈夫だとは思うが?」
微妙だなこれ。
もしかしたら来られないかも。というか、船が出ないかもしれないな。
1人で挑戦できるかなあ? NPCとはあまり行きたくない。死んでもらったら困る。
そして目の前で死ぬのもあまり嫌だ。
「あ、この次の部屋に何かいますね」
「さすがセツナ君。そうだね……ソードフィッシュかな?」
ここに出るのはみんな魚系。
部屋を1つ進むごとに水の量はぐんと減っている。今はすねくらいまでだ。
「ソードフィッシュはかなり鋭い刃を持つ、素早い魚だ」
「5体か。うーん。あまり血を流すとキラーフィッシュが来るんだ。あれが来るとちょっとやっかいだ。倒すまでしつこくつきまとってくるが、大きくて体力がある魚なのさ」
やられたらダメか。まあ、斥候職、素早さが売りの面子が多いだろう。ただ、足下の水のせいで、今、移動速度低下中。
さて、傷を受けないで倒す方法はないだろうか?
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