349.トレジャーが欲しいか?
トレジャーハンター帽は一応耐久がプラス1になるのだが、趣味じゃない。
実は現在頭装備なしでやっております。いいのないんだもん。フード付きのマント着てるからいいか、的な。
頭装備は基本おしゃれ装備だそうで、ソーダは一応兜を持っている。兜ならば耐久がかなり上がるらしい。
もちろんピロリは即拒否。
柚子と案山子は重量がありすぎて動きが鈍くなるそうだ。魔法使い系はこういった装備の制約があるという。たとえ筋力が上がっていてもなるらしい。
知力を上げるための帽子などを探している最中という。
『たぶんこの先で頭系の装備がどばっと現れるんじゃないかって言われてる。まだそんなに経ってないからなあ、このゲーム』
『可愛いおしゃれ装備はいくらでも作れるから、頭はおまけくらいに思ってるのよ、みんな』
『耐久プラス5程度までならあるよ。セツナ君ならゴーグルとかでもいいんじゃないか? あれなら耐久プラス3だよ』
八海山オススメのゴーグルはフィールドでたまに見る。
『トレジャーハンター帽を被ってる人はあんまり見ませんよね』
『あれは一部の服にしか合わせられないのよ! 女の子でカウガールスタイルとかは一時期流行ったわ。私も持ってる。見たい?』
VRであるが故に、見かけにこだわる人は多い。
俺も、ちゃんと街服着回してる!
アンジェリーナさんのカウガールスタイルとか可愛いだろうなあ。
でも俺のカウボーイスタイルはいらないな。
『ちょっとセツナくん聞いてる!?』
『あ、ノーサンキューで』
いらないです。
『魔法使い系はマジシャン帽の可愛いのに期待してるのじゃ~』
『魔法使いギルドで売ってるの大きいしッ、知力プラス2にしかならないッ』
『案山子は本を読むのじゃ。レシピ本もあったのじゃ』
『うーん……本、嫌いッ!!』
100冊はすぐなんだけどなあ。
なんて話をしているのは先日ヴァージルに連れて行かれた鮭の産卵川上りの場所。鮭料理のムニエルを出したいんだそうだ。ヴァージルからの注文で、案山子の料理スキルの欄にグレーでムニエルの項目ができたと大喜びしていた。こうなると、ムニエルの存在があるのはあるから、鮭を持って各地の師匠をあたればムニエルを教えてくれる人が出てくるそうだ。
『俺はッ! 当たり屋にッ! なるッ!』
当たり屋の解釈違い。
当たり屋になるためには鮭を大量に持って行く必要があるとかで鮭狩りに。
鮭は俺が狩れる。
だが、問題はアッシュグリズリー。
『強い強い。俺が盾押し負けそうなんだがっ!!』
『1匹ずつじゃないと事故が起こるのじゃ~』
『柚子、【フロストダイス】準備』
『2匹目来たよッ!』
『属性剣、火が使えないのがキツいわね~、獣系なのに』
アッシュとは灰である。火耐性があるらしい。
『セツナ殿、鮭何匹でござるかー?』
スキルを出しながらポーチをチラ見する。
『今27匹。結構捕ったな……』
『こいつ、倒すと全部灰になるのどうなんだよ。灰ってなんだろうな』
『冒険者ギルドで確認してからだが、いいものだと惜しいからちゃんと全部持って帰るぞ』
【持ち物】がいつも満タンなメンバーがそっと目をそらしていた。
俺は鮭でいっぱいになってしまいそう。
『ヴァージル殿、鮭めちゃくちゃ気に入ってたからもう少し狩るでござるか?』
『そうだね、塩焼きで大喜びだったもんな。サーモン親子丼にうっとりしてた』
うっとりヴァージルショートは100万回再生を三日で越えました。
だから何度見てるんだよ、親衛隊さんよ……。
飛び跳ねる鮭、突き刺す俺、後ろで悲鳴。
『アッシュグリズリーはかなり強いから、このマップを攻略しようとしていた人たちがすごすご帰ってきたとは聞いていた』
『俺らだって今のが限界だよ。【フロストダイス】からの、【フロストサークル】で固めて固めてやっとだ。とにかくクマの圧がやべえ』
なのにそのクマさんをヴァージルは1人で相手してたんだよ。
恐ろしい。
『トレジャーハンターは色々各地にNPCがいるらしいぞ。結構入っている人間も多いし、NPCにメンバーがいたら誘われたりするらしい』
『ほうほう』
『NPCから誘われるってことは、一応適正範囲レベルを超えてるらしいが、レベルしか見てないから職性能とかが問われたとき詰むそうだ。気をつけて』
『了解』
素早さでなんとかできるなら問題ないけど、それ以外を求められると確かに死にそう。
ソーダの盾の耐久値の限界が来たところで狩りは終了。
『うそだろ……一番衝撃に強いやつなのに。まさかの半分から一気に減らされた』
イェーメールの酒場、もとい鍛冶ストリートに行くそうだ。
俺も久しぶりに顔を出してみることにした。
アイテムをさばくのは任せてソーダとイェーメールへ。八海山にポータルを出してもらった。
もちろん柚子もついてくる。
「よお! 久しぶりだな」
到着したのが昼過ぎだったので、今日はみんなお仕事を始めていた。早速ソーダは修理を頼んでいる。
「セツナは細剣の調子はどうなんだ?」
「聖地で手入れしてもらっちゃいました」
まだまだ全然働けます。
と、ふらりと移動していた柚子が帰ってくる。
『ドワーフクエスト転がってたのじゃ』
『お、よかったじゃん』
『スレは見てないのじゃ。まあ、各地のドワーフじゃな、きっと』
『空人の方も進み出したらしいぞ、セツナ』
『わー、また行ってみないとなあ』
やること色々大忙しだ。
などと話していると、ハトメールがぴょいっとやってきた。
『久しぶりだね。今度海底神殿に行くんだが、君も来ないか?』
誰……モランって誰……。
誰だ。本当に。
『海底神殿に誘われたんだけど差出人に心当たりがないときの対処法を教えて……』
『誰だよwww 検索してやるから名前寄越せ』
『海底神殿はトレジャーハンタースレになんかあったでござるよ。トレジャーハンター連盟関連でござろう。【潜水】などのスキルが手に入る人気スポットでござるね』
トレジャーハンター連盟?
まったく思い当たる人がおりません。
『素早さがあるとトレジャーハンター候補ってことで大して関わりがないのにフレンド登録寄越すNPCが結構いるらしいでござるね~』
『モラン、建築士だってよ。よく会うのはアランブレの工事現場だそうだ』
建築士……あーっ!! あれだ、親方のところの人っ! ほーほー。
『お久しぶりです! 行きたいですけど俺もうすぐ寝る時間なんですよね~』
海底神殿とかって楽しそう。竜宮城じゃないなら行く!
『次起きたときに連絡をくれればいいよ。ここまで来てくれ』
そう言ってハトメールに書かれていたのは以前ストーンゴーレムを取りに行ったとき船に乗せてもらった場所だ。
うむ、悪い予感。
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