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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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348/362

348.はじまりのトレジャーハント【裏】

 いやー、聖属性強い。闇にごりごり効くね!

 はじまりのトレジャーハントだったから【裏】になってもそこまでとんでもないものはこなかった。普通に考えて、斥候をやっていてある程度ステータスが揃ったらこうやってクエストが発生するわけだから、【裏】は攻略不可なレベルではないはずだ。


 闇属性のモンスターは、クモだった。ミュスじゃなかった。残念。

 天井とかについているので結構大変だが、【投擲】と合わせていけばなんとかやれた。ナビ先輩ここにきて役立たずなんだ。というか俺の【気配察知】が優秀。


「ナビ先輩、攻撃魔法とかないんですか?」

「あるわけないだろう!?」

 ぷるぷるして鱗粉振りまいてる。


 【投擲】からの細剣(レイピア)でなんとか進むが、この先ちょっと注意報が。

 なんかすごい数いるんだが。

 ちっちゃいからこれ、小グモか。たかられるのは嫌だが十中八九そうなるなあ。付与を変えないでできる範囲攻撃は……幼女に習ったポイズンしかない。

 ということでボムを投げ込んだら見事ころりとしたようだ。【気配察知】から消え失せる。

「お前、強いじゃん……」

「ナビ先輩死なせるわけにはいかないっすからね!!」

 巻き込んだの俺だし。


「セツナ、お前いいやつだな」

 毒々しいチョウチョがなんだか感激している。

 このロールプレイちょっと楽しいな。たぶん大ピンチに覚醒するタイプ。


 小グモがうじゃうじゃいた部屋の奥に上り階段が見えた。

「セツナ、あれ、あれで上へ上がれるぞ!」

「マジっすか? 2つありますけど……」

「えっ!」


 そう、入り口から見えていたものと中に入ってみて初めて現れた階段の2つがあった。


 さあ、出番です、ナビ先輩!


「どっちに行きましょうか」

「いや、うん……うん」

「ナビ先輩、ズバッと決めてください。迷える子羊に正しい道を!」

「……俺だってわかんねーよ!!」

 な、なんだって。


「マジっすか、ナビ先輩」

 【気配察知】も階段入って階が変わるとわかりにくいのだ。困ったぞ。


「うーん、ナビ先輩戦闘は本当にあてにできませんか?」

「しないでくれっ!」

 聖属性よく効くけど、それなら氷系の方にしておくべきだったか。まあ、死んだら死んだで仕方ないか。


「じゃあ、勘で行きましょう! 死なば諸共ですよ」

 サムズアップしたら、大きなチョウチョはバタバタともだえていた。


 一体が強くてもいいから、単体の方がいいんだよなぁということで、【気配察知】を展開してうじゃうじゃいるときは引き返すということになった。

 とりあえず右の方を上っていく。


《ダンジョンボス『堕落した多々』たちと対戦しますか?》


 ハイ、キャンセル。しないしない。たち、はまずい。

「引き返しますよ」

 階段を駆け下りて気を取り直し左側へ。


《ダンジョンボス『堕落した女王グモ』と対戦しますか?》

 よしよし、こっちでお願いしましょう。堕落しただから多分これも聖属性でいけるはず。だけどなあ、聖属性のスキル持ってないんだよね。いざとなったらMP回復剤使って火に切り替える。クモだし、【螺炎】も効きそうだ。


「それじゃあ行きますよ、ナビ先輩」

「お、おう」

 初めの威勢はどこへやらだ。元気がないぞー!!


 美少年の時のようなムービーはなし。アナウンスにイエスと答えたらそのまま部屋に入って戦闘開始だ。

 部屋はそれほど大きくない。学校の教室くらい。ただ、部屋の隅に蜘蛛の糸が張り巡らされていた。奥に大きなジョロウグモが見える。


「きいやああああ!!」

 あ、チョウチョのナビ先輩の魂の叫びが。

「セツナセツナセツナ! 助けてくれ!」

「とりあえず捕まらないように逃げててください。糸に触ったらアウトですよ~。【フロストダイス】」

 ジョロウグモの色は黒と黄色ではなく黒と銀だった。そして足の数は……また多い。胴体から出てるのは八本なんだが、なんかさらに枝分かれして足がうぞうぞしてる~。気持ち悪ーい。


 【投擲】持ちの【フロストダイス】は外すわけがない。凍ったら落ちてくる。すぐさまそこへ【突き刺し】。だが、急所ではないようだ。それでも、刺した後すぐ抜いて俺は後ろへさがるんだが、反動でそのまま地面に激突からの氷がはじけ飛ぶ。ダメージが多めに入った。

 ジョロウグモは仰向けになって足をわしゃわしゃさせて、糸を吐き出した。


「ちょ、ナビ!?」

「ぴぎゃーっ!!」


 糸の先にナビ先輩がいた。慌てて細剣(レイピア)を振るうが、糸は粘着質マックスで俺の細剣(レイピア)も巻き込まれる。

 まずいよ。

 糸ってどうすりゃいいんだと頭をフル回転させて、思い出す。

 鯉ボートレースの時、案山子がなんか燃やしてた。


「【ファイアーボール】」

 細剣(レイピア)でナビ先輩が引き寄せられてるのを防ぎつつ、そこへ火を投げつけるとぽっと焼け落ちた。


 命からがらナビ先輩は脱出。女王グモは今度こそ天井へ糸を吐き出しするすると上がっていく。


 この部屋、全体が蜘蛛の巣だらけで大変やりにくい。後ろに下がると蜘蛛の巣に絡まれそうになる。

 仕方ない、聖地でファマルソアンさんにもらった回復薬、そのままもらっちゃったヤツを飲むしかない。


「【火付与】【青炎】」

 高火力炎がそこら中にぽっぽと散る。空の国で酷い目に遭わせたあれだ。そこら中に張り巡らされた蜘蛛の巣が綺麗さっぱりなくなった。


「ナビ先輩なるべく下がっててください」

「心の友よ~!!」

 どこぞのガキ大将みたいなことを言ってる。気持ち悪さで言ったら蝶も蜘蛛も変わらないからな。


「【フロストダイス】」

 ワンパターンと言われようとも、結局このパターンが一番強い。


「【業火】」

 突き刺して、爆発四散!!


《ダンジョンボス『堕落した女王グモ』を討伐しました》


「よっしゃー!」

「セツナ-! 頼もしいヤツめっ!!」

「ナビ先輩早く行きましょう」


 ドロップは女王グモの糸、女王グモの毒袋、女王グモの足だった。


 そのまま奥の階段を駆け上がると、先ほど落ちた穴の横に出た。見事に大きな穴が空いており、次はそれを避けてきちんと進む。

 するとそこには……インディ……じゃない、ジョーンズさんだ。


「青年! 無事到着おめでとう。これで君も立派なトレジャーハンターだ!」

 どうやらこれが連盟加入の試験だったようだ。

 奥の部屋には宝箱が大小1つずつ置いてあった。


「さあ、好きな方を選ぶとよい!」

 ナビ先輩を見ると、うんうん頷いている。


「セツナはたいしたヤツだ。好きな方をもらって行け」


 大きな方を開けたら『かっこいいトレジャー帽子』だった。帽子かぁ。いらないなぁ。

 


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― 新着の感想 ―
これもう片方後から戦えるんだろうか
ばっか、昔(話)から大きい方を持っていく欲ばりはハズレを引くって相場が決まってるだろ!?
小さい方の中身も気になるw
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