348.はじまりのトレジャーハント【裏】
いやー、聖属性強い。闇にごりごり効くね!
はじまりのトレジャーハントだったから【裏】になってもそこまでとんでもないものはこなかった。普通に考えて、斥候をやっていてある程度ステータスが揃ったらこうやってクエストが発生するわけだから、【裏】は攻略不可なレベルではないはずだ。
闇属性のモンスターは、クモだった。ミュスじゃなかった。残念。
天井とかについているので結構大変だが、【投擲】と合わせていけばなんとかやれた。ナビ先輩ここにきて役立たずなんだ。というか俺の【気配察知】が優秀。
「ナビ先輩、攻撃魔法とかないんですか?」
「あるわけないだろう!?」
ぷるぷるして鱗粉振りまいてる。
【投擲】からの細剣でなんとか進むが、この先ちょっと注意報が。
なんかすごい数いるんだが。
ちっちゃいからこれ、小グモか。たかられるのは嫌だが十中八九そうなるなあ。付与を変えないでできる範囲攻撃は……幼女に習ったポイズンしかない。
ということでボムを投げ込んだら見事ころりとしたようだ。【気配察知】から消え失せる。
「お前、強いじゃん……」
「ナビ先輩死なせるわけにはいかないっすからね!!」
巻き込んだの俺だし。
「セツナ、お前いいやつだな」
毒々しいチョウチョがなんだか感激している。
このロールプレイちょっと楽しいな。たぶん大ピンチに覚醒するタイプ。
小グモがうじゃうじゃいた部屋の奥に上り階段が見えた。
「セツナ、あれ、あれで上へ上がれるぞ!」
「マジっすか? 2つありますけど……」
「えっ!」
そう、入り口から見えていたものと中に入ってみて初めて現れた階段の2つがあった。
さあ、出番です、ナビ先輩!
「どっちに行きましょうか」
「いや、うん……うん」
「ナビ先輩、ズバッと決めてください。迷える子羊に正しい道を!」
「……俺だってわかんねーよ!!」
な、なんだって。
「マジっすか、ナビ先輩」
【気配察知】も階段入って階が変わるとわかりにくいのだ。困ったぞ。
「うーん、ナビ先輩戦闘は本当にあてにできませんか?」
「しないでくれっ!」
聖属性よく効くけど、それなら氷系の方にしておくべきだったか。まあ、死んだら死んだで仕方ないか。
「じゃあ、勘で行きましょう! 死なば諸共ですよ」
サムズアップしたら、大きなチョウチョはバタバタともだえていた。
一体が強くてもいいから、単体の方がいいんだよなぁということで、【気配察知】を展開してうじゃうじゃいるときは引き返すということになった。
とりあえず右の方を上っていく。
《ダンジョンボス『堕落した多々』たちと対戦しますか?》
ハイ、キャンセル。しないしない。たち、はまずい。
「引き返しますよ」
階段を駆け下りて気を取り直し左側へ。
《ダンジョンボス『堕落した女王グモ』と対戦しますか?》
よしよし、こっちでお願いしましょう。堕落しただから多分これも聖属性でいけるはず。だけどなあ、聖属性のスキル持ってないんだよね。いざとなったらMP回復剤使って火に切り替える。クモだし、【螺炎】も効きそうだ。
「それじゃあ行きますよ、ナビ先輩」
「お、おう」
初めの威勢はどこへやらだ。元気がないぞー!!
美少年の時のようなムービーはなし。アナウンスにイエスと答えたらそのまま部屋に入って戦闘開始だ。
部屋はそれほど大きくない。学校の教室くらい。ただ、部屋の隅に蜘蛛の糸が張り巡らされていた。奥に大きなジョロウグモが見える。
「きいやああああ!!」
あ、チョウチョのナビ先輩の魂の叫びが。
「セツナセツナセツナ! 助けてくれ!」
「とりあえず捕まらないように逃げててください。糸に触ったらアウトですよ~。【フロストダイス】」
ジョロウグモの色は黒と黄色ではなく黒と銀だった。そして足の数は……また多い。胴体から出てるのは八本なんだが、なんかさらに枝分かれして足がうぞうぞしてる~。気持ち悪ーい。
【投擲】持ちの【フロストダイス】は外すわけがない。凍ったら落ちてくる。すぐさまそこへ【突き刺し】。だが、急所ではないようだ。それでも、刺した後すぐ抜いて俺は後ろへさがるんだが、反動でそのまま地面に激突からの氷がはじけ飛ぶ。ダメージが多めに入った。
ジョロウグモは仰向けになって足をわしゃわしゃさせて、糸を吐き出した。
「ちょ、ナビ!?」
「ぴぎゃーっ!!」
糸の先にナビ先輩がいた。慌てて細剣を振るうが、糸は粘着質マックスで俺の細剣も巻き込まれる。
まずいよ。
糸ってどうすりゃいいんだと頭をフル回転させて、思い出す。
鯉ボートレースの時、案山子がなんか燃やしてた。
「【ファイアーボール】」
細剣でナビ先輩が引き寄せられてるのを防ぎつつ、そこへ火を投げつけるとぽっと焼け落ちた。
命からがらナビ先輩は脱出。女王グモは今度こそ天井へ糸を吐き出しするすると上がっていく。
この部屋、全体が蜘蛛の巣だらけで大変やりにくい。後ろに下がると蜘蛛の巣に絡まれそうになる。
仕方ない、聖地でファマルソアンさんにもらった回復薬、そのままもらっちゃったヤツを飲むしかない。
「【火付与】【青炎】」
高火力炎がそこら中にぽっぽと散る。空の国で酷い目に遭わせたあれだ。そこら中に張り巡らされた蜘蛛の巣が綺麗さっぱりなくなった。
「ナビ先輩なるべく下がっててください」
「心の友よ~!!」
どこぞのガキ大将みたいなことを言ってる。気持ち悪さで言ったら蝶も蜘蛛も変わらないからな。
「【フロストダイス】」
ワンパターンと言われようとも、結局このパターンが一番強い。
「【業火】」
突き刺して、爆発四散!!
《ダンジョンボス『堕落した女王グモ』を討伐しました》
「よっしゃー!」
「セツナ-! 頼もしいヤツめっ!!」
「ナビ先輩早く行きましょう」
ドロップは女王グモの糸、女王グモの毒袋、女王グモの足だった。
そのまま奥の階段を駆け上がると、先ほど落ちた穴の横に出た。見事に大きな穴が空いており、次はそれを避けてきちんと進む。
するとそこには……インディ……じゃない、ジョーンズさんだ。
「青年! 無事到着おめでとう。これで君も立派なトレジャーハンターだ!」
どうやらこれが連盟加入の試験だったようだ。
奥の部屋には宝箱が大小1つずつ置いてあった。
「さあ、好きな方を選ぶとよい!」
ナビ先輩を見ると、うんうん頷いている。
「セツナはたいしたヤツだ。好きな方をもらって行け」
大きな方を開けたら『かっこいいトレジャー帽子』だった。帽子かぁ。いらないなぁ。
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