表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/361

34.トウヤくんのお家にお邪魔した

 一通り街を川から巡って、そろそろ夕飯近くだろうと定食屋に誘われた。船で楽ちんしたらEP全然減ってないんだけど!! まあ、食べるのはいくらでも出来るらしい。

 だから痩せられたのだとピロリが言ってた。


「らっしゃい! 2名様……アキヒト。珍しい。お客さんかい?」

「おう! 一番美味い飯を頼む」

「俺んところはどれも一番美味い飯だ!!」


 看板がかなり年期の入った、『湧き水亭』という川沿いの店だった。

 中は結構狭いが人がひしめいている。ムキムキのお兄さんが多い店だ。会話から常連なのだろう。

 そしてメニューが壁に掛けてあるタイプ。つまり、和定食屋さん!

「俺のおごりだよ! 好きなのを頼みな」

「いえいえ、船代までお世話になっていますから、ここは俺が払います」

 さすがに悪いよ。

「いいからさっさと注文しな!」

 ということで、生姜焼き定食おねがいしました。


「美味い……」

「だろう!」

「あたぼうよ!!」

 ちなみに、あたぼうよって言ったのがお兄さんの方。

 いやー、美味しい。ご飯も美味しい。ええ、これ再現なの? どーゆうことだよ……。

「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

 お品書きの下に800シェルって書いてあったから取り出そうとすると首を振る。

「おうよ! あ? 代金なんていらねえよ……孫をありがとな」

 あー、トウヤくんのおじいちゃんでしたか。

「娘が家に寄ってくれって言ってたぞ。おい、案内してやってくれ」

 お兄さんに親父さんが言うと、彼も頷いた。

「任せとけ! 次の飯、タダな!」

「馬鹿野郎!」

 仲いいなぁ……。




 仲が良いはずだよ。

「兄さん! あ、貴方は……本当に、本当にありがとうございました」

 ムキムキ船のお兄さん、トウヤくんの伯父さんでした。つまり、定食屋のおやっさんとは親子ってことだな。

 世間が狭いと言うより仕組まれてる。これ、俺だけで進めても良いのか?



セツナ:

人の繋がりと運営の強制力により、トウヤくんのおうちについてしまいました。クエストとか始まるかもしれない。


八海山:

構わないよ。そこら辺は我々も後から出来ることだと思う。都市解放クエストと違って。


案山子:

俺ッ! 今ッ! チーズまみれだから無理!!


セツナ:

最初にクリアしたらアナウンスされちゃうのかなと。


八海山:

いや、よっぽどのクエストじゃないと全体アナウンスされない。それこそ、俺たちがこれからダンジョンボス初回討伐狙ってるのとかじゃない限り、タウンクエストでアナウンスされることはあまりないな。嫌なら切っておけばいいよ。


セツナ:

了解です。ここまできたので進めます。


 どちらかというとソーダたちはアナウンスされたいのかなと思った。

 動画配信してるし。まあ、勤め先が許せば合法副業。特に先行プレイヤーは全部垂れ流すのはNG。動画編集して肝心の所はぼかすのが基本らしい。あまりに他人の楽しみを奪う動画だと警告が入るという。そこを探るのも腕の見せ所とかなんとか。


『セツナ! 一応動画撮っておいてくれる?』

『了解』

 ソーダからのフレンドチャット。ゲームの録画ボタンを押しておく。


「今日は本当にありがとうございました」

「トウヤくんはもう大丈夫ですか? 低体温症ですよね」

「はい。あの後回復薬を飲ませて今はまた眠っていますが、顔色も戻ってきているので……本当に本当にありがとうございました」

 奥さんが泣いていると、おお、お兄さんも泣いてるよ。

 奥から旦那さんも現れた。

「いらっしゃいませ」

 と同じくだりを繰り返す。


「是非お礼がしたいのですが、……私の家業は藍染めでして。もしよろしければ染め物で何か必要な物はありませんか?」

「染め物……」

 染め物かぁ。藍染めの物って、Tシャツなんかはネットで見たが、シャツもらってもなぁ。

「ストールなんかは、女性にも人気ですよ。誰か贈る人がいるなら良いかと思います」

 奥さんの台詞に、脳内に我が知の女神を思い出す。プレゼントって受け取ってくれるのかなぁ?

「それじゃあ、ストールでお願いします」

「はい! 少しお待ちくださいね」

 旦那さんが奥へと引っ込む。

「親父もまた後で様子見に来るって言ってたぞ」

「お父さんにもたくさん心配かけたもんね」


「それにしても、何故増水した川にトウヤくんは行ったんですか?」

 ちょっと気になっていたので質問。アンジェリーナさんは生計のために行くしかないと言っていた。でも、この家そこまで貧乏そうに見えないんだよな。旦那さんは藍染め職人、奥さんのお父さんは繁盛していそうな定食屋さん。家の中も暖かく、薄汚れた様子はない。

 すると奥さんは少し顔を曇らせた。

「あ、余計なことを聞いたなら別に……」

「いえ、実はあの川、たまに金が採れるのです。普段はそこまで危険な川ではないので、子どもたちのお遊び砂金取りの場となっています。子どもがそうやってよく向かうので、一定の区間ごとに網をつけて、流されないようにもしているんです。ただ、増水するとそんなもの関係ありませんので。子どもたちには長雨で増水しているときは近づかないよう再三言って聞かせているのですが、なぜかトウヤが……もしかしたら子どもたち同士で競い合っていたかもしれません。うちの子、負けず嫌いなもので」


 金!!


 それは、ちょっと俺もやってみたい。砂金採りとか浪漫で楽しそう。



セツナ:

溺れた川で、砂金が採れる模様!


柚子:

何じゃと!! 金は、金は赤ガラスの材料じゃー!!

差し色に赤の入ったウィスキーボトル……最高じゃよぉ……。


「まあ、これに懲りたら増水時川には近づかないだろう……セツナさん、こちら藍染めのストールです」

 渡されたのは2つ。

「ええと……」

「2つともお持ちください。どなたかにプレゼントするなら是非、おそろいに」

 お、おそろい……してくれるかなぁ??

「ありがたくちょうだいします」

 

 これでここのおうちでのイベントは終わりのようだ。特にクエスト完了的なものはでなかった。

「いろいろとありがとうございました」

「こちらこそ! 可愛い甥っ子を助けてくれてありがとな。ローレンガで何か困ったことがあったら声を掛けてくれ。職業柄知り合いは多い」


《アキヒトからフレンド申請が届きました》


 お友だち増えるなぁ~。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


先行はさすがに楽しみたいセツナくん。


投稿時間間違えてすみません。

18時に、ついやってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここの神様のキーワードの「溺れる」って、絶対洪水だけでなく酒にもかかってるでしょw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ