338.みんなで針集め
これにて学園令嬢編は終了となった。
クエスト完了のお知らせもきたし、貢献度による金のばら撒きがあったという。公爵家のほうがそれなりに多いそうだ。
ちなみに俺と猫じゃらしにはクエスト完了通知は来ていない。
つまり、こちらのクエストはまだ終わっていないのだ。少し時間がかかるのかもしれないとこっそり話している。
学園令嬢クエストに巻き込まれていたユーザーたちが第6都市へのソール探しをし始めた。クラン内には共有してあったので、さも偶然を装って学院の受付に行ったそうだ。
そしてお師匠様へのノート運送を頼まれ、第6都市の場所が記される。
俺は待っていたけどそのまま突撃したプレイヤーが何人も現れた。
ただ、まだ乙女座の門扉は閉ざされているらしい。
「開放は来週だってさ」
「謎解きは与えられない系かな」
「門扉見に行ってきたでござるが、門番がそろそろ開けるかとしか言わないでござるね」
「第7に2ヶ月後飛行船が開通するから、7までは開けちゃうんじゃろ」
今日はクランハウスで案山子のご飯を食べながら、このあとどこに行くか話し合い。みんな令嬢のクエストを山ほどこなしたらしく疲労困憊だった。
「まあ楽しいのは楽しいけど」
「女性の陰湿さを知った」
ソーダと八海山は微妙な顔。
「あんなもの序の口よぉ~」
「なのじゃー」
女性2人は笑う。いや、まてまて、おかしいだろう。
「運営よくあれだけクエスト考えたよねッ!」
「クエストマニアの拙者でも網羅しきれぬ数だったでござるね」
お疲れ様です。
とにかく憂さ晴らしの狩りをしたいということになり、結果アリダンジョンで毒と氷の乱獲大作戦ということになった。
毒もまた取りに行きたいな。毒楽しい。ビエナちゃんもっと毒教えて。でもあそこに通うのは身の危険を感じられるのでお断りしたい。
途中黒豆たちとも行き合った。蒼炎も巻き込まれていたそうで、憂さ晴らしアリ退治に燃えていた。まあ、モンスター倒すゲームしにきてるんだよね。俺も同じ目に遭ったらきっとミュス禁断症状が出る。
どうせアリの外殻売るなら夕方に行きたいとゴネる柚子の狙いは明確だ。
「いいけど、そしたら夕方イェーメール集合にするか」
「んじゃ俺アンジェリーナさんのところ行ってくる」
「私はソロ狩りかなぁ……八海山どっか行く〜?」
「ああ別に構わない」
「俺っちちょっと調理するッ!」
「時間があったらつまみも頼むのじゃ」
各々好きなように過ごすらしい。俺も本を読みます。
貸本屋に着くと、そろそろ誘われるはずの修復師のお仕事がキャンセルになったとお話があった。
「なんだか急にお忙しくなったらしいの」
ただ、素材は足りなくなってきているのでまた頼むと言われた。お任せあれ!
とはいえ今日は時間まで暇なので本を読む。この間の乙女座の続きを見てみるとする。いやね、すでにポヨ坊ちゃまのせいでマイナス出発になるんだよ。だから何か少しでも有利に進めるようなヒントが欲しい。
欲しい、欲しいけど……乙女の恋の遍歴話しか出てこない。
古今東西、恋バナというやつは大変流行るようで、乙女座をモチーフにした恋人たちの話とか、神話としての恋人の話とか、女版ゼウスの自由奔放なご様子がたくさん書かれていて……あ、【知の泉3】とれました。知力プラス40。でかっ!10+20+40でプラス70になった。これはちょっと強い気がする。時間になったしキリがいいのでここで終わり。
待ち合わせの時間にイェーメールへ到着するとすでに酒盛り状態……ではなかった? あれ、珍しい。もう午後5時だぞ。酒の時間だろう。
「よお、セツナ。ちょっと今日は忙しいんだが、なんだ、細剣のメンテナンスか?」
「いえ、友人たちと待ち合わせをして、アリの外殻を買っていただこうかと」
「何!? そいつは助かるな!! 実は緊急で防具をこしらえなくちゃいけなくてな。モノはどこだ?」
「あ、俺持ってないから。すぐ呼びますね」
セツナ:
なんかイェーメールの鍛冶連合が緊急事態でアリの外殻が欲しいって話なんだけど。
ソーダ:
んん? ちょっと買い物してた。すぐ行く。
柚子:
私はもう着くのじゃ!
クランメンバーに連絡を取っていると、後ろから声がかかる。
「セツナ! お前、針余ってないか?」
針というのはソロ狩りのときにお世話になってるビッグキラービーちゃんだ。
「基本的に採ったら全部こちらに持ってきているので」
「そうか……仕方ねえ」
「必要なんですか?」
「ああ。なんでもファンルーアでアースドラゴンが出てきそうな予兆が見えたらしい。今ファンルーアで騎士たちが正確な出現時間を割り出そうとしているところだ」
また強そうなモンスターの名前が出てきた。
「それに針を、ジャベリンを使うんですか?」
「そうなんだよ。近づくと大地を揺らしてくるから、遠距離から魔法やジャベリンで攻撃するんだ。付与したジャベリンはよく効くらしいな。戦い方については俺らは素人だからよ、とにかくジャベリンの数がいるってんで、大量発注が来たところよ」
おお、それはジャベリンたくさん作らないと周囲に影響が出てしまうタイプのイベントか。
「お待たせ!」
そんな話をしているところにソーダがやってきた。ドワーフたちがぞろぞろと出てくる。
「お、アリの外殻。ありがてえ」
即座に取引が始まっている。終わったところで相談だ。
「なんか、アースドラゴンが現れる予兆が見えてるらしくて、ビッグキラービーの針を使ったジャベリンが大量に注文来てるんだって。このあと俺ちょっと狩りしてくる」
「親方たちが酒飲んでないなんて珍しいもんな。いいよ、クランメンバーで大量に狩りに行こうぜ。あれ、柚子の【フロストサークル】よく効くし」
「そりゃ助かるな。アースドラゴンを再び眠りにつかせることができなかったら、あの辺りが壊滅するだろうよ」
それはちょっと大変な事態ではなかろうか?
ソーダ:
ワールドアナウンスもないし、クエストぶち当ててるッポイし行くぞ。
ビッグキラービー狩り。イェーメールに集合でOK?
ピロリ:
もう着くわ~
案山子:
半蔵っちと一緒だよッ!
そんなわけで乱獲に参りました。いつもはソロでやっている。付与をして、刺しまくるだけ。みんなと一緒にこの狩り場は新鮮で楽しみ。
『とにかく数を始末したいから、セツナはソロでやってこいよ』
『えっ!?』
『え、不都合あるか??』
いいえ、ございません。
パーティーチャットがあるからまあいいや。半蔵門線とピロリもソロするらしい。
魔法使い2人をソーダと八海山が守りながら乱獲大会。
結果俺の優勝。
『やっぱり職に合った狩り場って大切だな』
イェーメールで納品すると大喜びされた。今日はこれで終了。また明日だ。
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