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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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331/362

331.盗人の後をつけて

 ヴァージルとジェロームとトラヴィスに囲まれ、今回その現場に行くはめになった流れを説明した。

 もちろん話をくれた貴族さんは内緒。何を言われても絶対口を割りませんよ。アンジェリーナさんの好感度に繋がるからね。

 

「穏健派、か」

「今その辺りが揉めているという話は聖騎士団にいても入ってきています」

「うちは中立に立ってはいたのだが……」

「俺が参加してしまっていますからね。アランは穏健派ですし」

「マクイーン家に加勢したんだったな」

「アランに、加勢したつもりですが……まあ、そうとられますね」


 アランの実家は穏健派だそう。アランブレのお貴族様。


「うちが態度を明言していないから、子飼いの貴族たちはわりあい好き勝手しているな」

「バスタビア子爵は推進派だったね~」

 とはトラヴィス。なんでもそこのボンボンとギャンブル友だちだったとか。

 その友好関係には何か言いたそうだったが、今ではないとジェロームとヴァージルは追求することは諦めていた。


「まあ仕方あるまい。領地内での不正を見逃すわけにはいかない。推進派穏健派関係なく、今回のことに始末をつけねば」

 ジェロームの言葉にヴァージルは強く頷き、トラヴィスは頑張ってと他人事でした。

 おまえっ、ここは三兄弟、結束を見せるところだろ! 三本の矢になれよっ!!


 そうして、ジェローム、ヴァージル、俺の3人はランカの実の生息地に赴いた。俺たちの他には2人。騎士だというが今日はヴァージルと同じく冒険者スタイル。そして小屋の方に10人ほど待ち構えているらしい。とはいえどちらも見張りだった。見張って確認し、ランカの実の行方を突き止めるのだ。

 ここは、領主代理であるジェロームが確認をしたということが大切になる。


『第3聖騎士団長の俺も見るしね』

 ヴァージルはお手伝いで来たはずだったのに。


 みんなで近くの草むらに忍び中。月が出ていないので【夜目】の俺は絶好調です。ヴァージルも見えるっぽいなこいつ。ジェロームさん……も見えてるぞこの人、今盗賊たちを目で追ってるわ。


 今日はみんなでパーティーを組んでいる。お話もし放題だ。楽しいね~夜の見張り。ってウキウキなのは俺だけっぽい。

 みんなは真剣な顔をして盗賊を凝視している。

 やがてランカの実を担いだ彼らはまた馬に乗って走り出した。俺たちはかなり遅れて騎獣で移動だ。ジェロームさんは黒い馬だ。かっこいい。やっぱり馬はさまになるな。


 行き先はわかっているので、追いかけているのがバレる方がまずいと距離をとっている。そして近くにきたら騎獣はしまう。

『聞いてはいたが、セツナさんの騎獣はかなり珍しいものなんだな』

『とってもお利口さんの可愛い子です』

『セツナの意図をよく読む賢い騎獣だね』


 ヴァージルもぎょろちゃんファンの1人だった。


 歩いていると前方に小屋が。そしてこの間とは様子が違う。どうやらそのまま荷物を担いで移動をするようだった。


『大人数で後を追えば見つかってしまうだろう。先回りしよう。どうせイェーメールだ』

 小屋を見張っていた騎士たちに後追いは任せて、俺たちはイェーメールへと向かう。


 アランブレには貴族用のエリアがあり、そこへは門を通らねばならない。しかし、イェーメールはわりと自由にあちこちに貴族の屋敷があって、塀で囲い、門があるのだ。例のバスタビア子爵の屋敷にも騎士を潜ませているのだが、俺たちもそちらへ合流することになった。


 急いで騎獣を出し先行する。


『疑ってはいなかったのだが、目の当たりにするとなんというか、口惜しいな。領地でこのようなことが行われていたとは』

 ジェロームさんが眉間のしわを深くしてそうおっしゃっていました。

 飼い犬に手を噛まれちゃったもんなあ。ショックだよね。


『特に先々代とバスタビア子爵家はかなり仲が良く、だからこそあのランカの実の管理を任せていたのだ。このようなことをせずとも十分利益は得ていたはずだと思ったのだが……』

『仕方ありませんよ。人の欲望は尽きぬものなのです』

 アンジェリーナさんと師弟関係になれたけど、師弟チャットなんだよねえ。フレンド……いや、恋人チャットが欲しいっっっ!!


『セツナさんは若く見えるのに世間が見えているのだな』

 なんかいい風に解釈されました。ありがとうございます。


 そんなことを話していると、バスタビア子爵家の裏門に男が5名現れた。肩に大きな袋を担いでいる。

 俺たちは道を挟んだ細い通路の陰からそれを見ていた。


『全員入ったら屋敷を囲むように』

 手はず通りに、です。ここでジェロームさんはお付きの2人と1度離脱。冒険者スタイルからしっかり着替えて出動である。屋敷を囲んでいるのは追いかけていた冒険者スタイル騎士様たち。俺とヴァージルはそのまま裏門を見張っていた。


『セツナ、あの、氷のスキルをしてくれないか? 相手のスキルを封じる効果があるんだよな?』

『ああ、了解』


 金をたんまり持っているはずの盗人も逃がしちゃだめだからね。


『そういえば聖地のごたごたちゃんと収まったの? ヴァージルボコボコにした子、大丈夫だった?』

『セツナは相手の心配をするんだね』

『だって、晴れの舞台がまさかの恥辱にまみれた惨劇になるとは思ってもみなかったろうし……』

『あちらの騎士団長から謝罪をいただいている。根性を入れ直すという話だ』

『根本は変わらないと思うから、もう領地から出さないでいいと思うけど……』

 正直NPCの性格は……ちょっと可哀想です。たぶんイベント要員なんだよなぁ。なぜ手袋を投げた……。


『だが、セツナはいつかあちらの都市にも行くのだろう? そのとき不利益を被るようなことがあっては困る』

『はっっ!! 確かに~』

 すでに第6都市で問題が起きそうだもんな~。ぽよぽよ令息、忘れててくれないかなぁ。

 なんて話をしていると表が騒がしくなってきた。そして裏口が開く。


「【氷付与】【薄氷(うすらい)】」


 ヴァージルはさすが騎士団。捕縛術があるんだって。



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― 新着の感想 ―
流石ミュスハンター こそ泥ネズミ(集団)は逃げられない!
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 裏口から出たらいきなり氷 カワイソウダネー
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