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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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327/362

327.貸本屋をご紹介

 気難しいお爺さん系な気がするから、きちんとご挨拶からお願いしますと言ったら、それはもう丁寧にご挨拶。

 行儀の良い子はOKらしく、一応カモフラージュに本棚を行き来する。


『こんな場所、初めてですわ。確かに、NPCのお店の通りでもないし、プレイヤーの露店通りでもない。領主関連や神殿からも遠く住宅街の中。滅多に来る人はいないかもしれませんわね』

『たまたま見つけたんだけど、ゆっくりできるからいいんだよね』

『でもこれで本が見つかれば騒がしくなるかもしれません。よろしいのですか?』

『まあ、別にいつもいるわけじゃないしねー』


 入り浸ってるのはアランブレですし。そちらがすぐにバレなければ。そのうちバレるのはまあ想定している。


『セツナ様は本当に他の方が通らないルートを辿っていらっしゃるんですね』

『意識したことはないけどね~。そんなバリバリ進める気なかったし。結局なっちゃってるけど』

『それだから、こういった場所を見つけられるのかもしれないですわね』


 初心者向けの棚を見ていると、あったあった。例の本。


「こちらをお借りしたいのですが」

「1500シェルだ」

 ダミーというか、1冊だけというのもなんなのでと、初心者用のものを3冊借りるアリンさん。俺も別の棚から適当に借りる。


「なんだ、彼女か?」

 気を遣って小声で聞いてくるオルロさんに、俺は即座に否定。


「ちが「違いますわ」」


 かぶせて思い切り否定されました。

 オルロさんは俺を見て肩をすくめる。可哀想な目で見ないでくれるかな!?

 それに、貸本屋繋がりでアンジェリーナさんの耳に入るのが嫌だ!


『ありませんね』

『残念。図書館だね』

 まあそんな気はしていたんだけどね。

 図書館クエスト頑張ってもらおう。


『そう考えると、ヴァージル様との絆を得るのは本当に、偶然に偶然を重ねなければならないのですね』

『ミュスやってたらなんとかなりそうだった気がするけど……ほら、他の鯖で地下下水道行ったって言ってたし』

『何度でも言わせてもらいますけれど、あのようなミュス狩りは狂気の沙汰なのですよ?』

『あ、はい』


 あのころはミュスを始末できて、アンジェリーナさんのところで本を読めればいいと思ってました。


『とりあえずまずは親衛隊の幹部で話し合って、試してもらうのを依頼する人を選別しますわ。その後、ヴァージル様クエストをやっていない知り合いのプレイヤーにやっていただいて……』

『クラン内の人は?』

『本鯖のクランは全員ヴァージル親衛隊ですのよ?』

『あ、はい』

 同じ趣味の子で集まってるのか。


『金策が必要になりそうですわね……頑張らねば』

『俺へのお礼はいいから本鯖頑張ってね』

『お気遣いありがとうございます。先日の聖地の写真も本当にありがとうございます。聖地の話はいつ頃動画になるのでしょうか? ヴァージル様が試合に出ることになった経緯などを知りたいのですが』

『俺のチャンネル、ショート専門だったのに……』


 俺のぼやきに菩薩の笑みを浮かべるアリンさん。


『ふふ、諦めてくださいませ、私たち、1つ、危惧していることがございますの』

 柔らかな笑みが真顔になる。


『絆は、全ワールド通して1人しか結べないという可能性があります』

『ひぃっ……』

 え、そうなの!?


『他の絆を結んだ方々を真似てフラグを踏んだはずの人が、絆を手にできなかったという話が結構聞かれていますのよ。確かに、絆は偶然が生み出すものですが、それでもクリアできるようになっています。由香里さんのお相手のお嬢様なんて、とても可愛らしいでしょう? 男性プレイヤーがこぞって、いえ、女性プレイヤーも試そうとして討ち死にしているのです』

『まさかヴァージルも……』

『可能性がありますでしょう? だからね、セツナ様。セツナ様が供給してくださる動画や写真はとても、とても大切なのです』

『あ、はい』

『動画編集者をご紹介したいくらいですが、秘匿している情報もございますでしょう? だから、頑張ってくださいませ』


 ヴァージルを手に入れた者としての業が深い。


 オルロに返却し挨拶をして図書館へ。

 この鯖のアリンさんはあまりミュスを狩っていないらしい。予想通り謎の紙切れは出なかった。


『本鯖で1度行ってみますわ』

『頑張ってください』

『セツナ様も、また何かヴァージル様の続報が来たら是非お声がけください』


 そう言って、1人の男を愛する女性は去って行ったのだ。




 俺何してたか忘れちゃったよ。うん。

 まあ第6都市への道出したし、ソールさんもすぐ見つかったようだ。ただ、まだ門が開いていないとか。

 また謎解きあるのかな? 第7都市が開く予定なのは、あれか、飛行船で行けるから開いちゃうやつ。


 せっかくなのでアンジェリーナさんのところで乙女座について調べることにした。

 乙女座は、モデルがいくつもあるのではっきりと定まってはいないが、有名どころだと冥界の王プルトーンに攫われたデーメーテルの娘、ペルセポネと言われていたり、豊穣の女神デーメーテルとも言われていたり。


 このゲーム内の乙女は……自由でした。

 自由恋愛の民なのかな?

 おかしいな、正義の女神が元だったっていう話もあったのに。


 乙女座の神は、この世界のすべてを愛する女神だという。太陽が昇れば東の街へ行き愛を囁き、日が沈めば西の街へ行き恋人とひとときを過ごす。夏になれば南で愛する者とバカンスを楽しみ、冬は北で暖炉を囲んで夫とキスをする。


 ヤベえヤツだこいつは!! 女版ゼウス!!


 そんな乙女、恋の記録をつけるための羽根ペンを持っているらしい。


 違うだろ! それ、正義を記録するための羽根ペンだろう!!

 俺はそう聞いたのに、ゲームでは恋の記録らしい。

 恋愛遍歴を記した日記とやらもあるらしいです。もっとマイルドに書いてあったけど、要約すると乙女の恋日記だって。


 過去の恋も現在の恋も未来の恋も全部素敵な私の恋★


 みたいなことがね、書かれてました。

 誰だよこれ編集したの。神話系は、詠み人知らず、みたいに作者なしで編纂されてますよ。

 ちなみにそんな乙女座が1番愛した神がいたらしい。誰か書いていなかった。誰なんだろうな。神様ってことは十二神? 水瓶座……はねえな。どうやら面食いっぽい。魚座もないね。


 双子か? 双子なのか?? それで相手にされてないとかか??

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― 新着の感想 ―
アンジェさんとも同性しか絆結べなかったらセツナさん転生転性するのだろうか?バージルヲタな乙女勢も?
>有名どころだと冥界の王プルトーンに攫われたデーメーテルの〜 プルトーン?それローマ神話じゃね?いやでもアレはプルートーだしな… ギリシャの伝承ならハデスじゃねえの?と思って調べたら ハデスの別称でプ…
せっちゃんの、親衛隊の期待を一身に背負う度合いが際限なく上がっていく……!!
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