323.闇属性
新事実発覚!
ミュスは闇属性だった!?
ミュス相手に【鑑定】してみたが、闇属性というのは見えなかった。俺の【鑑定】レベルが足りなくてもしかして、見えていないのかもしれない。
しかし、闇属性はおぞましいものたち、なのか。確かレイスとかも闇だったな。うん……おぞましいというか怖かった。
幽霊系は闇だろうな。それとミュスが同じ……確かにミュス王はヤバかったからなぁ。本来小さいと認識しているモノが大きくなるとちょっと気持ち悪いよね。昆虫系とか。
おぞましいっちゃおぞましいな。
ただ、気になるのはこの『原初の魔物のように』、というフレーズだ。
さらに本を読み進める。
『原初の魔物は闇より生まれた。闇は常に人のそばにあり、人が闇へ堕ちることを願っている。闇の魔物は人を闇へ引き入れたいと言われていた。闇へ、堕落へ、人を誘うのだ。そうして闇の支配者に捧げると言われている』
新しい単語というか概念が現れた。
闇の支配者かあ。
堕落という単語にも覚えがある。レイスダンジョンの奥にいた、反射するボス。あいつの名前にも堕落という文字がついていた。
これは、闇について調べないといけないな。
読み終えた本を返しに行く。
「ありがとうございました」
「手がかりはあったかしら?」
「また次必要な情報が出てきましたね。闇の支配者とか、堕落について書かれたものってあります?」
すると、ユーファは顔を曇らせた。
「セツナくんもその本を必要とするのね……さっきソールくんに届けてもらった本があるでしょう? あれに闇の支配者について書かれた記述があるって、ソールくんが調べたみたいで、それで、彼はあの本の入荷を待っていたのよ」
「そうだったんですね。ソールさんに相談してみます」
「うん……でも、闇について調べることは昔から危険だと言われているわ。闇魔法を使う人がいないように、闇魔法は普通の人の手にあまるものだって言われてる。気をつけて」
普通の人の手にあまる……まあ、MMOでコミュニケーション一切とれない人は大概普通の人じゃないな。闇魔法使いになれる素質ありってことで。
これから読み込むって言ってたし、少し時間を置いた方がいいのかもしれない。
「闇魔法についての本はあるんですか?」
「それならいくつかあるわよ。手に入らない魔法に興味津々な人は多いもの。学院にも研究者がいたわよ。闇魔法使えないのに」
学院で聞いてみるのもいいかも?
うん、そうしよう。ミュスのことだから徹底的に探るぜっ!
とはいえ、今日はもう読書にする。
そして普通の読書ならアンジェリーナさんのところで読みたいのだ。
「俺はアランブレに帰りますけど、何か伝言があれば伝えますよ? 本の配達とか」
「あら優しい。今は特にないけれど、また何かあったらお願いするわね」
貸本屋を出て、路地に入ったところでクランハウスへ。その後すぐさまアンジェリーナさんの元へ。
夕暮れまで読書を堪能したらミュス狩りだ。
【鑑定】かけまくる。同じ個体にかけてもカウントされないが、違う個体にかけたら【鑑定】の熟練度が上がるらしい。
そうやって夜通しダガーで狩りをしていたら、見えた。
いや、見えはしないのだが、隙間ができた。
【鑑定】結果の後ろに、空白が現れたのだ。
今まで空白は空白として、自分の【鑑定】の熟練度が低いと知らされる材料として存在していた。
空白すら隠されているのは初めてのことだ。
「ミュス……お前はいったい何者なんだ……」
なーんて始まりの平原でかっこよくキメてみたけど、俺はすぐさまクランチャットに呼びかける。
セツナ:
案山子さん! アランブレに戻ってこられますか?
案山子:
何かなッ! デートのお誘いかなッ!
セツナ:
ミュスに【鑑定】かけて欲しいです。
案山子:
セツナっち、ミュスっち好き過ぎッ?
セツナ:
無理なら仕方ないですけど、ウロブルのクエストあるし……。
案山子:
まかされたッ!
やった、こっちに帰って来られる模様。
【鑑定】の熟練度が一番高いのは間違いなく案山子だろうしぜひ見てもらいたい。
アランブレのそばでミュス狩りをしていると名前を呼ばれた。
ぞろぞろと、派手な集団がまた……なんでみんな揃ってるの?
「そろそろログアウト時間だし?」
「ちょうどクランハウスに帰ってきていたのじゃ! ウロブルのあれやこれやは区切りまできた。というか、クランハウスのストレージに置いてある物が多すぎて、帰って来ざるを得んかったのじゃ」
「ちょっと待ってくださいね。俺の【鑑定】熟練度が上がったら、ミュスの結果の後に空白が増えたんですよ。案山子さんなら見えるかなって」
「ええっ!? そんなことあるの??」
俺は少し先にいるミュスに石を投げ、迎え撃つ。ダガーで首根っこを刺さずに素手で捕まえた。この間トーナメントに出場したから、宝珠もらったんだよ~。筋力プラス10だ! わーい。こっちは12神じゃないから持っているだけで効果が発揮される。
「はい」
目の前に、ずいっと首を掴まれたミュスを差し出す。長い尻尾が俺の腕にビシビシ当たった。ぎゅえええと、汚い声で鳴いている。
「うん、ヒドイッ!」
と言いながらもじっとミュスを見ていた。
「ホントだ。空白あるね。でも俺にもそこが何かわからないや。熟練度が足りないか、それ以前に何かしらスイッチ踏んでないと見えないか。空白があとから出てきたってのを考えると後者かもしれないね」
スイッチか。それは……それで大変だなぁ。
「というか、ミュスって闇属性だったんだね!」
「そうなんですよ!」
「闇? レイスとかと同じ?」
「うん。そもそも闇属性だってのを知って見に来た感じ」
ミュスをぽいっと宙に放って細剣で串刺し。
「獅子座の神様に言われた『原初の魔物』って単語が気になって、調べてて、さらに『闇の支配者』って単語が出てきたんだけど、それに関する本を、貸本屋のクエストでソールさんに渡してるんだよ」
「……うわあ、なんか預言書絡みになりそう?」
うん、俺もそんな気がした。
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