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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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318/362

318.護りの家門

 ヴァージルとローガさんがにらみ合う中、八海山がローガさんの腕を取り、ヴァージルを俺とソーダとピロリが押さえてる。

 3人がかりですよ。


「えーと、獣人族とヒューマンの間でいざこざがあったのは把握していますが、正直我々来訪者はそのあたりをこれまで知らずにいた部分がありまして、余計なことっていうのはこの間俺たちが口をはさんだことですよね。余計なこととはつゆ知らず申し訳ありませんでした。俺たちが思っている以上に根深いものだというのも今回思い知りましたので……」


 どうかご機嫌を直してちょうだい!! と言外に訴える俺。

 だがそれが気に入らないヴァージル。


「相手の聖騎士へ怒りを向けるならまだわかるが、なぜ取りなそうとしてくれたセツナたちへ向かうのかが理解に苦しむ」


「来訪者だがなんだか知らないが、余計な首を突っ込んでことをでかくして、こちらもいい迷惑だ!」


ピロリ:

やだぁ、めっちゃオコじゃないのよぉ。

八海山、その獣人さんとっとと外に連れ出してよ。ヴァージル力ありすぎて大変なんだから!


ソーダ:

引っ張られるwww 助けてwww


セツナ:

ファマルソアンさんがニヤニヤしてんだけどぉ!?


 今日もまたファマルソアンが宴会を開いてくれたのだ。宿ではなく、大衆食堂へ行きたいと希望して今がある。案山子が厨房へ出入りする許可をもらっていた。クランチャットに歓喜の声が響き渡っていたのだが、いざ宴会が始まってしばらくしたらこれだった。


 しかも文句言いにくるって、やめてよ。パパさん、この間お礼言いに来てたじゃん。あのときと態度180度違うのやめてよっ!!



「ファマルソアンさ~ん!」

 俺が情けない声で彼を呼ぶと、ふふふと笑って立ち上がる。


「さて、そろそろお暇願いましょう。他のお客様に迷惑ですから」


 がうっと喉を鳴らしながら反論しようとする彼の鼻先にぴっと人差し指を突きつける。


「エルフのエリアで商売を邪魔した者の末路をご存じですか?」


 ぞくっと。

 ぞくっとした。

 ヴァージルの体から一瞬力抜けた。

 

「王を護る家門が聖地から出禁を喰らいたくはないでしょう? さあ、外へ。話したいことがあるのなら外で聞きましょう。第8都市エリアでね」


 低く唸っていたローガは、結局無言で店を出て行った。

 

「いったい何がしたかったんでしょうね」

「あの態度はいただけないな。なんなら第9聖騎士団を通して第8都市に話をしてもらうが……」

「いいよもう、なんか難しい歴史があるみたいだし、ほんと、これ以上騒ぎを大きくするのはやめよう。また次聖地に遊びにきたとき気まずいし。あいつらすぐ騒ぎを起こすなんて思われたら嫌だもん」

「セツナがそういうならいいんだが……」

 と不満そうなヴァージル。


「ほら、ヴァージル、これ案山子が作った分だって。味見してよ」

「率直な感想が欲しいなッ!」


 誤魔化せ~みんなで誤魔化せ~。

 案外血の気が多いんだな、ヴァージル。気をつけなければ。


「こっちも美味しいわよ、ヴァージル。結構甘いものもいけるわよね~」


 そうやって好物を積まれてなんとか黙ってくれた。やれやれだぜ。


「しかし困りましたね。彼の意図がわからないのが」

 せっかくヴァージルが黙ったのに! と思ったが、ヴァージルは俺たちが思っているよりずっと大人でした。美味しいお肉を食べながら、ファマルソアンの話に耳を傾けている。


「意図って、単にむかついたから文句を言いに来たんじゃないの?」

「はははっ、護りの家門がこのような愚かな真似をするとはとうてい思えませんね。しかも直系の当主息子ですよ」

「つまり、何かしらの思惑があってわざわざ我々に文句を言いに来たということでござるか?」


 ファマルソアンは答えない。


 夜も更けてきたので俺たちは宿屋に戻った。次ログインしたところで帰る予定だ。フィールドに出てしまえばポータルが使えるので帰りは楽ちんだ。


 宿屋の中で相談会が始まる。


「あー、スレ調べたんだけど……セツナはスレ見ないで行きたい?」

「いや、みんなも一緒に巻き込まれてるし構わないよ」

 基本見ないで行くとは言っていたものの、クランメンバーが関わってるのなら優先させたい。


「じゃあ、獣人族の護りの家門の直系長男であるローガは次期当主と言われているが、どうもかなりのヒューマン嫌いだという話で、リチャードに難癖つけられているところをかなりの人数が助けてる。まあ、その中でヴァージルとリチャードが戦うエピソードが反映されたのは、セツナのせい、と」


「つまりそっちがそうなってもローガのクエストには関わりないってことね!」


「そう。で、また今回俺たちが遭ったような、余計なことをしたと文句を言われるパターンがあちこちで見られていて、喧嘩をふっかけられて買ったやつは、神官がやってきて聖地で暴れるようなら聖地を出禁にすると言われて喧嘩をやめるまでが一連の流れみたいだな」


「拙者たちはファマルソアン殿から恐怖体験させられたでござる」

 やっぱりあれ感じたの俺だけじゃなかったようだ。こういった感覚って、VRでどうやって現してるんだろうな。


「だいたいそこまで進んでいる人たちがほとんどみたいね~。この後クエスト受注かしら。ふふふ」

「スレ予想は第8都市が開放されてあちらでクエストになるんじゃないかと」


「ありそーなのじゃっ!!」

「もー、7と8と11だけ先に開放して欲しいッ!」

「聖地経由で行けるとかありそうだよな~。第7都市のクランハウス計画もあるし」


 なんにせよ、この聖地でのイベントはとても楽しかったのでよかったです。

 その後はなるべくあちこち行かないようにと言い合って、夜の街に繰り出しました。


 なんかさあ、ミュス多いんだよここ。

 なんでだろう?

 ううん……ちょっと獅子座の神様にでも会いに行って終わるかぁ。


 なるべく円の中心、塔のそばをずずいと進んで、寄り道もしなければログアウト前になんとか辿り着く。

 塔の周りにはNPCはもちろんプレイヤーもたくさんいた。塔には少しだけ人の列ができていたので並ぶ。


「よ、セツナ君」

「あ、ダインさんこんばんは」


 ロジックのオレンジ髪、ダインが俺を見つけて近寄ってきた。


「試合お疲れさん! 毒アクセサリいいよなぁ~、マスターがそのうち売り出すだろうって言ってたけど、どういった経路なのか聞いていい?」

「あれは、学院経由ですよ。アリの毒関連でこー、これが欲しいならこれを採ってきて系からの派生ですね」

 そしてファマルソアンさんです。


「あるよなぁ、そんな流れ。仕方ない、金貯めておくかぁ……参拝?」

「ですです。獅子座の神様とお話ししようと思って」

「お話……?」

「あれ、ダインさん、宝珠持ってないですか?」

「残念ながら獅子座の宝珠はないんだよな。あると話せるのか」

「ミュス狩り仲間なんですよ」

「……俺のあずかり知らぬ世界だわ」


 せっかくなので一緒に塔に入ることになった。

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― 新着の感想 ―
いや君去り際に黙礼はしてましたよねぇ!? 対応をいきなり180°変えられるとこう、萎えるというか困るというか……まぁフラグをおかしな形で立てたら展開破綻するゲームって探せば割とあったりはするけどもさw…
ヴァージルおこバージョンはセツナだけのレアシナリオ? セツナのためなら喧嘩上等ヴァージルに親衛隊も大喜び! 獅子座の神様が狩友w
前提となる情報への導線が薄い状態で強制クエスト発生すると何が何だか分からない状態で進む感じになるよなぁ。重要ならメインクエスト中に出してくれよ感。
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