314.乱戦終了と、トーナメント出場選手
俺はさらに【持ち物】から取り出したものを闘技場の外へばらまく。
「【シードウィップ】」
可愛い可愛い種ちゃんのお出ましだ。木の種類は悩んだが、オークとバルサにした。
バルサは世界一柔らかい木だ。まあ木材としてだけど。軽い木とも言われてる。ちなみに日本で一番軽い木は桐だ。桐のタンスは、災害で濡れても、流されても中の着物が無事だったと言われてる。花嫁道具の1つになった理由はそこら辺もあったとかなかったとか。
「【ブランチウィップ】」
木魔法は再詠唱までほとんど時間がいらない。それがいい!
「【グローイングアップ】! いけっ! 木ちゃん! 体当たりだ」
動きが鈍く、スキルの出ない集団に対して、可愛いオークちゃんがいつもの倒れ込むビターンをかます。
選手たちから声にならない叫びが漏れた。
「【薄氷】」
今日の俺のお仕事終わり。ソーダはパーティーチャットで漏れた選手への攻撃指示をしている。
あとは定期的に【薄氷】をかけ、相手のスキルをなるべく発動させずに蹂躙していくだけである。
「【一身集中】」
ちなみに俺は魔力回復ポーションがぶ飲みだ。このポーションもファマルソアンから供給された。必要経費だそうだ。
いやぁ、スポンサーは金があるところに限りますね。
俺とミールリアさんはソーダの後ろに隠れつつ、応戦する。
「徒党を組むなんてずるい!」
誰かの言葉にソーダがせせら笑う。
「組んだらダメって言われなかったというかむしろ推奨だったが? 現地の皆さんとお話ちゃんとしたー??」
来訪者の剣士がぐぬぬと唸って地べたに這いつくばる。
そんな中、気付いておりましたとも。ええ……これはイベントの一環なのかな?
「か弱き獣たちの敵よ! 正々堂々と戦うのじゃー!」
だから、のじゃはもう柚子で十分なんですよ。属性かぶりは抹殺せねば……。
ハインリッヒぽよ坊ちゃんの登場です。
弓と【なぎ払い】とで沈まないってことは、多分俺と対決しなけりゃならないやつかなぁ。ヘイト一番買ってたね!
実は第2試合でも、こういったNPCとのイベントクエスト的な様相の相手はいたのだ。その人は斥候系で、相手の騎士っぽい人と一騎打ちになっていた。因縁の相手以外の攻撃が効いていなかったのだ。
「こんにちはハインリッヒぼっちゃん。【氷刀】」
ちゃんと一騎打ちっぽくしてあげる。負ける気はしないしね。
「そなたを負かして謝罪させるのじゃ」
「じゃあ、俺に負けたらもう諦めてくださいね。ミュスは害獣ですっ!!!」
そこは譲らねえぜ!
「【ひと突き】じゃ!」
「【突き刺し】」
俺は避ける。俺のスキルも……逃げられた。うーん、明らかにこっちが上なんだけど、イベント効果か。
「バルサちゃーん!!」
【グローイングアップ】で育てたバルサの木。
その柔軟性は世界一ィィィ!!
ぐにゃりと伸びてきた枝がハインリッヒ君をすくい上げる。
「な、何やつ!? なんだこれはっ!?」
そのままぽーーーいってね。場外へ投げ捨てた。
そう、うちの木、みんな枝で絡め取るの好きなんだよね~。倒れ込む攻撃もすごいけど、巻き付かれると何もできなくなる。
領主のご子息でらっしゃいますので、突き刺すとさすがに外聞が悪いというか、俺、第6都市入れるの? ってなるから、この作戦を選びました。
地べたに這いつくばったのはハインリッヒ君でした。
「こ、この、卑怯者っ!!」
そんなこと言われてもね。
いつの間にか来訪者、NPC、みんな闘技場から消え失せていた。残りは俺たち6人。
『それじゃ、トーナメント頑張ってください。パーティーチャットで支援は続けますね』
『ありがとう。こんなに楽な戦いは初めてだったよ』
【薄氷】は本当に便利だ。ローランド卿に感謝である。
俺とソーダは闘技場の端に向かうとそのままぴょいっと地面に降り立つ。
「勝者! レラントラン、グウェン、フィンルアン、‡愛の戦士‡!」
はい?
左手にはソーダ。
そしてなぜか右手にミールリア。魔女子さん??
「ふふふ、これだけの働きをしたら私も十分アピールできたわ。固定砲台気味だから、私より貴方の方がトーナメントを勝ち進める可能性が高いもの」
俺より早く地面に降り立っていた、だと……。
柚子:
せっちゃんも出場じゃー!
八海山:
2人も出場なんて、すごいな。
半蔵門線:
ソーダ殿、とっとと出場者把握して作戦立てるでござるよ。
第5試合も順調に終わって、トーナメントの出場選手が決定した。総勢20名、見知った顔も大変多いトーナメント表だ。
俺は【薄氷】が評価されたのかシードだった。
1~16までの選手は5回勝たないと優勝できないのに、俺すでに2回分得してる。
ソーダはトーナメント表とにらめっこ中らしく、クランチャットには現れない。俺の初手の相手は……なんとダインであった。
セツナ:
無理ぃ~
ソーダ:
まあ、無理だろうな。死力を尽くせ。
セツナ:
ちょ、それだけ!?
ソーダ:
ダインは脳筋系だから、喰らったらアウト。以上!
半蔵門線:
一対一だから、【隠密歩行】もあんまり意味をなさないでござるね。セツナ殿、気合いでござるよ。
案山子:
気合いはッ! すべてを解決するッ!
勝機とか一緒に誰も考えてくれないぃ……。
泣きながら選手控え室で自分のスキルを眺めてるナウです。
魔女子さんよ……策なしだからやめてくれ~。
ソーダ曰く、1人分考えるの減ったから助かった、だそうです。ヒドイ。
ピロリ:
セツナくん、レベル的にも結構あがってるし、付与がかなり強いから、攻撃力の底上げになってるでしょう? 素早さものすごくあるし、逃げ回ってスキを狙う戦法とか。
八海山:
ダインはそのまあ、まっすぐ突っ込む系だから。当たったら終了はたしかだな。腕力がすごい。スピードはそれほどない。だから、当てるスキルをたくさん持ってるんだよ。
セツナ:
当てるスキルに当たらない方法は!?
八海山:
スキル発動阻止かな……
セツナ:
たぶんもう【薄氷】は効かないかと。あれ、ジャンプして逃げるのが可能なんですよー。
不意打ち1発屋です。だけど、モンスター相手ならそれでいいのだ。
ああでもないこうでもないと、戦いの様相を呈するように一生懸命考えた。だって、みんなに見られてるんだよ!? あんまり無様な戦いは嫌だ。勝機見いだすために走り回るのはよしとします。
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誤字脱字報告も助かります。
まあまあ、主人公なんでねw
いつも感想ご指摘ありがとうございます。
助かってま〜す!!
とりま、のじゃは二人いらない!!




