313.大乱闘開始
そしてとうとう迎えた武闘会の朝だ。
俺は貸本屋へ。クランメンバーとぞろぞろ移動し、少し離れて待っていてもらった。【隠密】を使って人目に付きにくくしてロンから一覧を受け取る。
「武闘会、出るんだろう? 頑張って」
「はい……ほとんど来訪者になりましたね」
「彼らの好奇心と、手に入れるための手段を模索する力はすごいよね」
ふふっと笑っている。
第7都市の出場者30人中、残ってるNPCは俺たちの仲間4人と他3名、つまり30人中23人がプレイヤーだった。
うーんこれ、トーナメント勝てるのかなぁ。
貸本屋を出て、俺たちは第7の塔へ向かった。と、アナウンスが入る。
《聖地で開かれる武闘会の出場枠が決定しました。これより各塔にて優勝者予想ゲームが始まります。皆様こぞってご参加ください》
《選手は確定され、この時間をもって選手の入れ替えは終了となります》
『これで狙われるのも終わりだな』
『もー、私の肩がいかれちゃうわ~ヒドイ』
『全部跳ね飛ばしてたでござるが?』
ピロリの肩つよつよですよ。
『それじゃあ私はイェーメールの塔から入場だから、また後でね~』
『おう! 来訪者NPC全部ぶっ飛ばしてこい』
ピロリとはここでお別れだ。正直、乱戦では会いたくないです。ただね、ここはファマルソアンが何かした模様。任せてくださいってウィンクされた。
NPCにもたぶんランクとかがあるんだろうなぁ。聖地にすごく、お金はらっていそうだったし。神官も店に来るって言ってたもんね。
聖地の中に、どでかい闘技場がございました。
マジででかい。コロッセオとかテレビの中でしか見たことないけど、あの規模感だ。
それが真っ白な石でできていて、まー綺麗だこと。
「今日はよろしく頼むよ」
「こちらこそ、頑張りましょう」
選手控え室は12あり、それぞれの街ごとに分かれている。来訪者たちもたくさんいた。ソーダを見て驚いているのは、偽名がバレていなかったからだろう。
外の様子は部屋の中にある魔道具という名のモニターで見ることができた。俺たちは4組目なのでしばらくそれを眺めながら待つことになる。
ソーダがそっと仲間たちにパーティーを分配した。
『みなさんコンディションはいかがですか?』
『ああ、問題ないよ』
『それでは、配られた組み分けを見ていただきたい。これから各個人の得意な戦法と弱点をあげるので、それぞれに対する相手と注意しなければならない相手を説明しますので、短い時間ですができうる限り覚えてください』
ソーダが今日ここにいるのは、タンクとして紙装甲たちの盾になるだけじゃない。司令塔としてゲームメイクをするためであった。組み分けはここにくるまで知らされない。ファマルソアンもピロリと俺たちを当てないようにするくらいはできても、組み分けの内容までは把握できなかったという。
『大丈夫です。俺が、俺とセツナが皆さんをトーナメントまで押しやりますから』
にやりと笑うソーダに彼らは力強く頷いた。
柚子:
ピロちゃん残ったのじゃ-!!
案山子:
トーナメント出場おめでとうッ!!
八海山:
結局腕力だな、これは
ピロリ:
きゃー、やったあ。頑張るわよぉ~。私のサポートは八海山がよろしくね!
ファマルソアンから、パーティーを組んでいれば話ができると言うことを事前に教えてもらっているので、トーナメントへ進出したあともソーダはこの4人のサポートを続けるのだ。対してピロリには八海山がつく。
ソーダ:
どっちが勝っても美味しいからな。
八海山:
条件としては第7都市が欲しいけどな。
「第4試合に出場する選手はお越しください」
真っ白な神官服を着た男性が扉を開き、俺たちは動き出した。
「頑張ってくださいね、マスター」
「タンクでどこまで勝てるか知らないけど」
「あれだろ、セツナ君のサポートだろ」
残りは来訪者。第5試合に出る6人だ。全員来訪者である。あの短期間で潜り込めるのがまたすごいなと思う。
神官の先導で長く暗いトンネルを抜けると、割れんばかりの拍手と声援に会場は大盛り上がりだった。前の試合がまたすごくよかったらしい。ピロリがぼっこぼこにしてたしなぁ。
「それでは、ご武運を」
神官はもと来た道を帰り、俺たちは土の上から円形の闘技場へと上がった。
地面からそれほど離れていないが、ここに落ちたらアウトだそうだ。ちなみに騎獣は不可。
そこかしこからマスターがいると声が漏れ出る。
うーん、ソーダはやっぱり有名なんだなぁ。
『では、予定通り』
『うむ。死力を尽くす』
『だめですよ、トーナメントに向けて必殺技は使ったら。むしろまず数を減らしましょう。とにかく人数を削る範囲攻撃でお願いします』
「それでは、第4試合を開始します!」
全員揃って、みんなが中央に寄った。
この闘技場から落ちたら負けだから、端に寄るヤツはいない。
そんな中俺たちは話しこんでいる風を装って少しその集まりから離れていたのだ。
開始の宣言とともに、俺はすでに付与してあった剣を、スキルの宣言とともに振るった。
「【薄氷】」
習いたてほやほやのこのスキル。
八海山に控えてもらい、あの日4人を含めソーダや半蔵門線にも喰らってもらった。動きを鈍くするものだと、ローランドさんから習ったのだが、これ、もう1つとっても良い性能があったのだ。
「【フロストサークル】」
魔法使いが紛れていたようで、人の混み合った中心ではなく、少し離れていた俺たちの方にスキルを展開しようとした。
が、発動したように見えた氷範囲魔法が途中で止む。
「へえっ!?」
実は【薄氷】、スキルの発動も封じるのだ。
つまり俺の【薄氷】の範囲に入った、動きが鈍くなっている集合体がいる。
「【綺羅星流星群】」
「【なぎ払い】」
「【なぎ払い】」
弓と剣と大剣の範囲スキル発動。
「【フロストサークル】」
ミールリアさんも氷系女子だった。
一方的な乱戦の開始です!
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