307.出場権争奪戦
『なんかクエスト拾えそうな気配あったか?』
『エルフクエスト無理っぽいッ!』
『ドワーフクエストもなのじゃ』
魔術師2人が首を振るが、本当に真面目に探していたか微妙なところ。
『柚子殿は飲んだくれていたからではござらんか?』
『の、のみにけーしょん築いていただけなのじゃ! あのエリアのドワーフとはだいぶ仲良くなったのじゃー』
『鍛冶系は気になるし、あそこら辺うろついてみる? 日本酒持ってきてるわよ』
『イェーメールに続き、聖地の小人族も籠絡するでござるね』
という話になり、イェーメールからアランブレに。
当たり屋に2人遭遇。
『多いなぁ。どうやって出場選手見分けてるんだろう』
『ピロリと俺は当たられても跳ね返すけど、セツナ気をつけろよ』
『【自動回避】早く取るでござるよ』
『帰ったら斥候に1度転職します』
やることリスト更新だ。
『あっと待って、ダインから連絡来た。なんか会って話したいって』
アランブレ、塔から少し離れた辺りで待ち合わせする。
向こうからオレンジ色に染まった男がやってきた。
「よー! マスター、先乗り楽しそうだったよ。パーティー入れて」
そうやって入ってきたダインは挨拶そこそこに警告だと言った。
『アランブレで選手枠聞いたらもう埋まってるとかでさ。冒険者ギルド出たところで、怪しい男にリスト渡されたんだよ。武闘大会に出たいなら、こいつらを蹴落としてそこに潜り込めって』
ぴらぴらと紙をはためかせている。
『それ……クエストだぞ』
『だよなあ。マスターが掲示板で先に情報流しててくれたからさ~、まあこういった仕組みなんだろうとは思ってたけども。で、もらったらそこら辺歩いてるヤツの頭の上に矢印出てるんだよ。ピロリの上にも出てる。ただ、セツナ君には出てないね。偽名の方だからかな?』
『偽名が役割果たしてないっ!!』
『ミュス王でバレてるからね』
つまり、偽名登録ならこの名簿に載らないのか。
『まあ、情報でこれも流すけど、ピロリはNPCから狙われるかもしれないから気をつけて』
『当たり屋跳ね返してるのじゃ』
『そういったからくりがあるなら偽名で登録が良かったわね~』
目立つために実名? で登録してもらったままにしたのが仇となった。
『んで、なんか面白いクエストあった?』
『まだ見つけてないんだよなー。ただ、獣人メンバーいるなら第8都市エリアうろついてたら当たるかもしれん』
『ああ、あの胸クソ案件だろ? 俺のクランにもいるから行ってみようかって話になってる。たださー、先に出場枠欲しいんだよなぁ~』
『ふぁいとでござる』
『半蔵門線は出ねえの?』
『拙者忍びの者ゆえ。あと紙装甲はなかなかトーナメントは難しいでござる。圧倒的有利でない限り、開けた場所は難しい』
『んだなぁ。職性能ってあるよな』
それじゃあ、とダインは爽やかな笑顔でパーティーを抜けて去って行った。
『情報ギルドに金払った意味あった?』
『入れ替わったところはわかるし、NPC枠が来訪者にすげ変わるなら情報は八海山が持ってるだろ』
『スレチェックもしながらだなぁ』
『普通は出ないわよ。半蔵門線みたいな考え方するのがほとんど。回復役やタンク、紙装甲は見る方、クエスト探しに回るわ』
『ちょっと待っててくだされでござる……いや、先にドワーフ殿たちのところで遊んでいてくだされ』
『どこか行くなら一緒に行くよッ!』
『いや、拙者選手じゃないから大丈夫でござる』
そういって半蔵門線は走り去り、まあそれならとドワーフの第11都市エリアへ移動したのだった。
『飲みニケーションこえーっ!!』
『柚子ちゃんのコミュ力怖い』
懐柔する? と言っていたが、すでにされていた。
一つ目に入った武器鍛冶屋さんですぐ声をかけられた。
「よお! 飲みっぷりのいい嬢ちゃんじゃねえか!」
「こんにちはなのじゃ~今日はお友だちと武器を見に来たのじゃ」
「いいね、お前さんの友だちなら勉強するぞ、ちょっと見せてみてくれ……っていい武器持ってんなあ。しかもよく手入れされてる……いや、されすぎてる感が……」
「イェーメールの鍛冶屋さんにお願いしているんです」
ソーダの剣を受け取って眺めていたが、イェーメールの名を出すと目を見開く。
「おうおう、あそこにゃ従兄弟の息子がいるんだよ。いい仕事してるなあ。これよりも良い物ってなるとここら辺になっちまうが、かなり高値だ。ぽんと出せる金額じゃねえだろうし、まあ参考にしてくれや」
何件かそうやって移動するがことごとく柚子の飲み仲間になっていた。
『ふふふ、1日ここに費やしただけあったのじゃ!』
『そんなんだからドワーフクエスト見つからないんじゃないの!?』
ごもっともな指摘に柚子は肩をすくめる。
「その細剣、ちょっと見せてくれないか?」
「どうぞ、付与剣ですけど」
「いや……ああ、銘が、まさか、ローロか!」
お知り合いがいました。なんでも嫁の従兄弟の姪だとか。遠い!! 遠い親戚だ。
「ローロさんにはとても素敵な細剣を作っていただきました」
「おうおう、こんな出会いがあるとはなあ。よし、ちょっと手入れしてやる。すぐ終わるから待ってろ!」
か、金かかる!? と思ったら無料でやってくれた。出会いに感謝だそうだ。
なので日本酒渡しておきました。
「第4の酒だな。ありがたくいただくよ」
ニコニコしてるドワーフさん。まあここは手に入りやすいのかな? ほぼ反対の位置だけど、聖地は聖地だ。あとは第4都市からどれだけ運ばれているかだが。
『お待たせでござる~、拙者も出場者リスト手に入れてきたでござるよ。この辺りにもうろうろしているでござるな、NPCの出場者。矢印だらけでござるよ』
『ああ、そうだな。助かる』
出場しないから逆にもらえるやつか!
『みんな偽名で登録始めたらこの矢印も少なくなるんでござろうな。あと、出場者のリストの人数が30少ないので、たぶんアランブレが入っていないでござるね、これ』
『ありそーッ!』
『楽しくなってきたわね~』
『出場枠金で売られそうだな。スレ立ちそう』
『まあ、それはありだろうな』
聖地が殺伐としてきた!!
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