299.お礼はやっぱり丼
帰ってきたローランドは机に並んだどんぶりの量に驚いていた。
「あ、説明しますね~。これがたぶん、息子さんに自慢されたカツサンドです。パンと、豚系肉の揚げ物をはさんだ料理です。この陶器の器に入っているのが丼といって、ローレンガのものなんですけどご存じですか? そこで一般的に食べられている穀物、米の上に肉などの料理をのせた丼料理です。豚系肉の揚げ物と卵で作ったカツ丼。タマネギと牛肉を甘辛く煮込んだものをかけた牛丼。ここが丼もの二大巨頭です。さらに、豚丼。天丼、生魚がイケるなら、この海鮮丼は絶品です。カツ丼牛丼天丼海鮮丼でどんぶり四天王かなぁ~。あとカツ丼の派生でソースカツ丼もあります」
あまりの多さに目を白黒させるローランドさん。
「あ、タマネギ、大丈夫ですよね?」
俺たちの獣人とは違うと聞いて、ちょっと怖い。
「特に問題ない……困ったな、多すぎて選べない」
そして、並べていたら、匂いに敏感系獣人がぞろぞろとやってきた。
「ローランド様、これは……?」
「こんにちは! ローランドさんにスキルを教えてもらったお礼に、俺の友人の料理を持ってきました。もしよかったら皆さんもどうぞ」
ヒューマンの俺からの差し入れに警戒しつつも、いい匂いに勝てないようだ。尻尾ふりふり、お鼻ピクピク。まあ、鼻は普通の人の鼻だけどね。
獣人アバター、基本的に耳と尻尾と目が特徴的。目も普通の人に近づけることができるらしい。
羊の目とかちょっと怖いもんなぁ。
「こんなに大量に、構わないのか?」
「それだけのことしてもらったんで、大丈夫です」
後ろの獣人たちみんなそわそわしているので、食べさせてあげて。
あそこのわんこ系、尻尾ちぎれそうですよ。
「種族的に食べてはいけないものとかがなければいいんですけど……」
「それは大丈夫だとは思う」
一応【鑑定】して見てはいるのだが、食べられない表示はない。ただ、これって俺、ヒューマン的にはOKってことなのかなぁと思ってる。
フォークやスプーンを思い思いに丼に突き刺していた。
そして突然の遠吠え。
「!?」
わんこ系が軒並みそれに続く。
「やめなさい、セツナ殿が驚いている」
「はっ……申し訳ございません」
「すみません、セツナ殿」
「少々興奮してしまいまして……」
恥ずかしそうに丼を食べてます。
俺の前でカツ丼を食べるローランドさんは苦笑しつつ手を止めない。
「これは本当にとても美味しい食べ物だ。息子も食べているのかな?」
獣人さんは確か、牛丼推しだったかな? 最終的に。
「そうですね、何度か差し入れはしているので、食べてはいると思いますよ」
「これは、自慢げに手紙を送ってくるのがわかるな。本当に旨い」
「作ったのは、俺のクランメンバーの案山子というエルフですね!」
「案山子殿か。さぞ高名なシェフなのだろう」
案山子殿、案山子殿と周囲で騒がれる。
第8都市では案山子シェフ有名人になったな。
「新しい料理を追い求めている研究熱心な料理人です」
「そうか……素晴らしいな」
人数よりずっと多かったので、2つ目がお腹に入るならどうぞと勧めると、みんな遠慮せずに持って行った。海鮮はちょっと難しかったみたいなので俺が美味しくいただきました。残りの海鮮丼は回収だ。【持ち物】に移せばまた時が止まる。
「それじゃあそろそろお暇しようと思うのですが……なるべく早めに食べちゃわないといけないですけど、これ置いていきます? まだお腹入ります?」
あと20丼くらい残ってるんだが。常温で腐ったら困る。空のどんぶりは回収した。
「む……構わないのか? 君たちの分は?」
「俺たちはせっかくなんで聖地のご飯を堪能しようってことになってて、これは全部お礼で持ってきたものなんです」
ちょwww 獣人のみなさんの表情が、わぁ~♪ ってなっててワロタ。八海山って基本いつも真顔なんだけどさ、獣人さんわりと表情豊かなの?
「本来スキルは一生懸命その道に打ち込んでやっと手に入れたり、高いお金を払って習ったりするものなので、こんな風に教えていただけてとても感謝しています」
新しい属性サイコーですよ!!
「あ、もしそれでもお礼とかなら、案山子が香辛料系を集めてるんでそちらの土地で何か面白い物があったら、また今度教えてください」
「香辛料か、気にかけておこう」
それでは失礼します~と食堂を出るが、ローランドが送ってくれるそうだ。まあ、一般人が聖地の塔の内側をうろうろしているのはダメだな。
「ちょっとヴァージルが気になるのでヴァージルのところに寄りたいのですが……」
「そうだな、私もあれは気になっている。送って行くついでに様子をうかがおうか」
そう言ってローランドは笑った。
話しやすくていい獣人さんだよーもー。ファンになるねっ!!
塔の内側は基本白いタイル。土のところはさっきの訓練場に一部あるくらいだ。
さらに円の中心へ行くと、それぞれの宿舎がそれぞれの塔の延長上にあるらしい。
第9聖騎士団の隣は問題の第10聖騎士団だ。さっきは訓練場からだったので通らずに来れたが、ここは大丈夫だろうか。
チラリとローランドを見ると、彼は俺の考えを読んでいたようで頷いた。
「さらに中心の方の通路を行こう。こちらは団長などの重役と、それらが許した相手しか普段は通らないところだ。俺は幸い役職持ちでね」
サイラスさんもあの状況でこちらに何かを言ってくるわけではなかった。自分のところの騎士が悪いと謝ってくれた人だ。上に立つ団長クラスはわかっているのか。
内側に向かえば向かうほど歩く距離は短くて済むのだ。円形の聖地は外周に行くほど距離が移動距離が伸びる。
「ヴァージル卿とセツナ殿はどういった関係なのだろう?」
「あー、どうだろう、しゃべっていい内容なのかがわからないのでノーコメントでいいですか? 報告するとかは言ってたけど、周知されているかはわからないんで」
「了解した」
「ただそれから友だちとして仲良くしてもらってます。ヴァージル案山子のご飯大好きだし、クランハウスで一緒にご飯したり」
「それは羨ましいな」
なんてことを話していると、双子座の紋章が掲げられている扉が前方に。イェーメールの宿舎に辿り着いたようだ。
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