296.呼び出された騎士団長たち
2人とも聖騎士団の鎧を着たままで、夜の闇の中で白く綺麗に浮かび上がっている。とはいえ、道はランプやら店の明かりでかなり明るいが。
リチャードの抜かれた剣を見てサイラスさんの顔が真っ赤だった。
反対に周りのおまけ聖騎士は真っ青だ。特に付与してしまった聖騎士は土気色になっておりました。
「これはどういうことだ!」
「セツナ、無事か?」
サイラスさんがリチャードに詰め寄り、ヴァージルはそこを通り越してこちらにやってくる。
「みんなも怪我はないか?」
「特に何も。なんか1人で怒ってるからスルーしたらヒートアップしちゃっただけだし」
スルーしてたんですよ。
だけどヴァージルにそれは通用しなかったようだ。ちらっと各メンバーの顔を様子見ている。
ピロリさん、顔を反らしたらまけですよ。
「あいつらが悪いのです! またこのエリアでうろついて、あまつさえ店で食事をしていたので出て行けと言ってやっただけです!」
「出て行けと言っただけのお前がなぜ付与までしているのだ!!」
まあ、言い返せるわけがないのだ。剣を抜いた時点で負けです。あまつさえ付与までしているとは。昼間も合わせてスリーアウトです。
今度はギロリとこちらを見るサイラス。
「君たちもなぜここに……」
「えーだって~私たち観光目的で聖地に来てるんだもの」
「色々回るのは当然なのじゃ」
女子組強い。
「いやーまさか昨日の今日で怒られてた聖騎士様がこのエリアをうろついてるなんておもわないじゃないですか~」
とソーダ。よし、乗った!!
「むしろ今日を逃したら出会う率が高まるってことでこのエリアのご飯を堪能してしまおうって話になったんですよ」
「美味しくご飯を食べてたらそちらから難癖をつけてきたんです」
「お店の人にも迷惑でござったね~、しかも店内で剣を抜くなんて」
俺と八海山と半蔵門線。3コンボ。
リチャードの後ろは戦意喪失しているので口の数でこっちがすでにKO気味であった。
「聖地の騎士団の寮で謹慎でもしているのかと思ったからまさか遭うなんて思いもよらず」
とソーダがダメ押しした。
「お店の人めちゃくちゃ迷惑そうだったねッ!」
もしかしたらこっちに迷惑だと目線を向けていたかもしれないが。あちらはこのエリアの聖騎士様だ。
「……サイラス卿」
「いや、言ってくれるな」
額を押さえてサイラスがめちゃくちゃ眉間にしわを寄せていた。
『これ、虹亀卵、セツナ殿が採ったものだと言ったらどうなるでござるか! ワクワクでござる』
『だめですって。ファマルソアンさん、商売の邪魔されるの絶許ですよ。こいつ、こんな剣いるかとか平気で言いそうじゃないですか』
『ファマルソアンさんとは今まで通り仲良しでいたいねッ!』
「貴様らは今すぐ寮に戻れ。許可を出すまで部屋から出ることは許さん」
「団長!?」
リチャードが目を大きく見開いて、さも心外だみたいな顔をしているが、当然だろうよ……。つか、前回謹慎してろとか言われなかったのかよ。
唇をぶるぶると震わせて俺たちを睨み付けている。
うーん、なんかちょっと可哀想レベルで考え凝り固まってるんだなぁ。あと、これでやってこれたってことかな? 付与剣を買ってやるって、ヴァージルと同じような立場なのかもしれない。貴族の子息ってやつだ。
「すまぬ、この場は1度これらを連れて帰る」
「わかりました」
サイラスがヴァージルに頭を下げていた。絶対ヴァージルの方が年若騎士団長なのに、それくらいのことをやったと認識してくれよリチャードさんよお。
「団長!! 我々は――」
「黙れ! これ以上余計な口をきくな!」
そういってリチャードの肩を掴むとずんずん歩いて去って行った。
さて。
「何があったか詳しく聞こうか?」
にっこりイケメンのすごみにパーティーチャットが無言で震えた。
ヴァージルが鎧を着ていたこともあって、これ以上ここで騒ぎを起こすわけにはいかないと、イェーメールの、第2都市のエリアまで撤退する。強制でしたよ。
『ヴァージルにおこされるのはもういやじゃぁ~』
トラウマになってる柚子。俺も嫌だよぉ。
食事が中途半端だろうと塔近くのお食事処へ。ヴァージルの顔を見ると奥の個室へ通されました。大衆的な酒場より2ランクくらい上の様相なんだよなぁここ。お高そう!
が、遠慮なく食べたいものをみんなが注文している。
「それで、なんであんなに揉めてたんだ?」
と、俺に聞く。
テーブルは円卓で、みんな届いた食事に飛びついていた。
口が空いてるのが俺しかいない!
「ええと、事の発端は、獣人さんがリチャードに絡まれていたんだ」
と、昨晩あった出来事を説明した。
俺ら悪くない。悪くないは……ず。
全部話し終えると深いため息を吐いた。
「騎士団どうしのやりとりに支障でない?」
迷惑を掛けたかどうかが心配ですね。
「こちらは特に問題はない。だが君らは……歩くと騒動に出くわすのだな」
クエストですんで、仕方ない仕方ない。
「正直八海山に対する態度で差別的なものを感じたことはなかったから、今回の出来事はびっくりだったわ」
「俺自身も感じたことはなかったな」
「獣人との戦いで1番被害を被ったのが第9都市だと聞いている。だからこそ、なのだろうな。彼らの地域の過去には同情するが、もうかなり昔のことだし、今を生きている獣人たちももうこのテラエトゥーラの一員だ。サイラス卿は公平な方だ。君らの話を聞いた限り非はあちらにあるだろう。悪いようにはならないさ。ただ、あまり第9都市にはもう行かない方がいいだろうな。塔の前の道をずっと行く分にはかまわないだろう。第8方面に行くときはそうやって移動しなさい」
まあこれ以上迷惑をかけられないので、俺たちは素直に頷いた。
ここのご飯はヴァージルが奢ってくれました。いつの間にか支払いが終わっていた! スマート過ぎる!!
明け方まで第2や第3都市のエリアで買い物や店を覗いて過ごし、明け方おやすみなさいした。
ログインするとヴァージルから起きたら連絡をとの旨があり、塔の向こう側、円の中心へお呼ばれした。
細剣のスキル訓練だと思ったら……またなんか揉めてらっしゃる。
オオカミの獣人さんと、ヴァージルと、うん……リチャードさん。謹慎って言われてたよね、貴方。
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