表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

288/362

288.料理人案山子の矜持

 ここの酒場もメニューは壁掛け型。しかもところどころ壁に直書きされていた。それを見ながら主に柚子と案山子が、他の面子は自分がこれは欲しいというものを横から言っていく。

 とんでもない数になったがまあいいだろう。そういえばお腹いっぱいでも食べられるし、食べ過ぎのデバフなどはない。きっと運営に美味しいものをたらふく食べたい勢がいるのだろう。


「乾杯なのじゃ~!」

 注文が一段落して、お通しのビールで乾杯だ。お通しのビール。恐ろしい、小人族(ドワーフ)たち。


 2杯目はもうおのおの好きな飲み物を頼むのだが、柚子のテンションが止まらない。

「もう、聖地に住みたいのじゃ……」

「そういった来訪者(ユーザー)も増えそう。だけど、宿代割高だったぞ、アランブレやイェーメールの方が断然お得」

「お祭りのあと、ポータルがとれるようになれば行き来はスムーズになるが」

「それもそうじゃのう」


 俺はアランブレ拠点から移る気はないけれど、確かにここなら最終的にすべての都市へ通じる飛行船が出そうだ。今はファンルーアのみだけど。

 それはそれで便利な土地になるのかもしれない。


「お、あんたら聖地に巡礼に来たのか……来訪者かな?」

「あ、そうです。今回奉納試合があるって聞いて、それも見学できるといいなと思いまして」

「おうおう、そりゃいい。さあ飲め、俺のおごりだ……ってお嬢さんは小人族(ドワーフ)か」

「そうなのじゃ! こちらの世界に来たときに小人族(ドワーフ)に変化したのじゃ」

「それは何かの縁だな……ほう、まさか、【蟹座の加護】を持ってるか?」


『おお? 早速【酔い耐性】が?』


「さっき蟹座の神様にいただいたのじゃ」

「それはいい! おい、みんな! 新しき同胞の誕生だ! おい親父! 例のアレ、出してやれ!」


 小人族(ドワーフ)たちがガンガンとジョッキでテーブルを打ち鳴らす。うるさい! これはとんでもなくうるさい!!


 そして厨房から銀色をしたジョッキが運ばれてきた。


「これは俺からのプレゼントだ」

 そう言ってマッチを擦るとジョッキに火を付けた。


『ちょwww 火事じゃないwww』

『火付くのやばwww』

『柚子殿……認められてしまったでござる』

『これが蟹座の加護?』


「これは俺らの街で作ってる火酒(かしゅ)って言うんだ。きっつい酒だがいけるか?」

「もちろんなのじゃ、いただきます!」


 火はふっと吹けば消えた。パフォーマンス的な? そしてぐびびっと飲みきってしまう柚子……あかんやろそれはダメだ。火酒って蒸留酒の総称っぽいけど、これたぶんウォッカ。その度数は計り知れない。


「くっっ効くのじゃ~!!」

「いい飲みっぷりだな!」

 小人族(ドワーフ)に背をばしっと叩かれげんこつで合わせて挨拶している。

 柚子はここで生きていけるな。


「柚子、お前そんなキツい酒飲んで平気なのか?」

「そーちゃん、加護の力すごいのじゃ。酒のための加護なのじゃっ!!」

 多分違うと思うが、柚子が幸せならそれでいいと思う。


「持って帰りたい。売っているお店はどこにあるのじゃろ?」

「ここら辺の酒屋ならどこでもあるさ。だが、店主に『火酒はあるか?』と尋ねなけりゃ出てこない」

「おお、そういった仕組みか。了解したのじゃ!」


 合い言葉的なそれか。


「イェーメールにお土産に持って帰るのじゃ~」

「あー、それなら親方に持って帰りたい。柚子さん代わりに買ってくれる?」

「いいぞ~後で行こうぞ」


 ドワーフの酒屋はワニ料理が多かったです。蛙ちゃんはなかった。牛系ももちろんあるけど、煮込みと焼きと野菜はほとんどなし! ダメ! 栄養バランス崩壊!!


「料理家としてこれはNGを出したいッ!!」

 そう、案山子、パーティーやるときは絶対野菜も出すタイプ。野菜と肉とつまみと野菜とみたいな。何でも食べて欲しいんだって。


「肉と酒! それがあれば俺たちはハッピーだ!」

 なぜか一緒のテーブルで飲むことになった小人族(ドワーフ)のシノールさん。


「お野菜食べてぇッ!」

「旨いつまみになる野菜があれば食べるけどなぁ」

 周りの小人族(ドワーフ)たちが顔を見合わせてうんうんと頷いていた。

 これには案山子の料理人魂に火が付いたようだ。


「今食材がないけどッ! 帰るまでに野菜料理持ってくるからッ!」

「酒場に持ち込みOKなの?」

 俺が思わず突っ込んだが誰も聞いていない。


「その挑戦受け取った!! 俺らが唸るような酒に合う野菜のつまみがあったら、俺の秘蔵の火酒をお前にやろう」


『いらねーだろwww』

『完全に自分目線じゃないwww』

『俺が好きだからお前も好きだろう的な?』

『きゃーっ! かかちゃん頑張るのじゃーっ!!』

『案山子殿クエスト来たでござるか?』

『来ないッ!』

『クリアした後に出るタイプかもしれぬでござるね』


 それぞれ楽しんだ酒場を後にして、次へ移動することにした。


『次は第10都市か』

『今回これで全部の都市の星座がわかるんだな』

『門の向こうには行けなかったけどね~、都市に入るにはぐるりと回るしかないんじゃない? それか飛行船が開通するか』

『ローレンガみたいな謎解きもありそうでござるが、メインストーリーを進めるにはやはり順番でござろう』


 そういえばメインストーリーあったね。忘れてたな。

 

『今回チラ見せして期待を募るのかな』

『私は、小人族(ドワーフ)のルーツを辿るクエストが出ると思っておる』

『確かにありそうだねッ! エルフクエストッ!」

『獣人のNPCは見たことがないから、今回出会えるのではないかと期待している』

 確かに、NPCの獣人見てない!


『獣人はちょっとミステリアス扱いなんだよなぁ。来訪者の獣人には特に思うところはないらしいけどね』

『獣人のアバターで嫌がられたことはないが、本当に獣人のNPCを見ないんだ』


 今回出会えるかもしれない。楽しみだ。


ブックマーク、評価、いいね、感想、ありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
秘蔵の火酒って事はスピリタスだと見た! 美味しい果実酒が出来るやつ!
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 蟹さん、種族補正もあるのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ