282.森の中の人
ハーピーを狩って、ファマルソアンさんのところにレインボータートルエッグを売りに行くついでに俺の分のアクセサリーを依頼してきた。
無属性の他にも2つ手に入れたので、これで直近の金欠は脱出だ。
さてそろそろログアウトをというところでタパパ君からお手紙が届きました。
『やっぱりあそこの土地には浮遊石のもとが含まれていたから、もっと周辺を調べたい! セツナが都合のいいときに誘ってくれ。ファンルーアで待ち合わせな!』
うん、これで途中のご飯の旅は多少なくなるかな?
「セツナーっ!」
両手にパンを山ほど抱えているタパパ君が向こうから走ってくる。
ファンルーアで待ち合わせ。1人でここまでやってこられるんだね。
「タパパ君、それじゃあ行こうか」
「うん? セツナご飯は?」
「もう済ませたよ」
パーティーを渡して出発します。時間が惜しい。
『爺ちゃんから調べるように言われてることがあるんだ。もう一回土を採って、今度はそこから放射状に土を採取して欲しいって。まあ、海の方は無理だけどね』
『了解。どこまでが浮遊石を含んでいるか調べろってことだね』
『そうそう。あと周囲に村がないかって聞かれた』
イェーメールやファンルーアみたいな大きな街を、俺たちは活動の拠点にするが、ビエナちゃんの毒草園や、レイスまみれになってた村など、ところどころに人の住む場所が点在している。そこら辺を調べろということだろう。
『そっちは空から見た方がいいかもね』
『土を採取しつつ探そうぜ!』
わりとクエストの意図がわかりやすくていいな。基本おつかいクエストだって言ってたし。
土を採取するタパパ君を守りつつ、辺りを見渡す。
うーん。右手に森、左手に草原。人が住むならどっち?
『草原を空からぐるっと見て特に何も見つからなかったら、森の中に入ってみようか』
『森かぁ……』
『何かダメ?』
『森は飛びにくいんだ』
ああ、いざというとき逃げられないのか。
『じゃあ、森には俺1人で行ってくるよ。タパパ君、ファンルーアに戻っててもいいよ?』
『爺ちゃんから頼まれたことを放り出せるわけないだろ! 俺も行くし!』
死んで欲しくないんだけどな。まあ仕方ないか。
平原には人っ子ひとり見つからず、特にこれと言って変わった様子も見られなかった。
たぶん明らかな異変があると思うんだ。わかりやすいヤツ。
『仕方ないから、森も見てみるか』
タパパ君も覚悟を決めたようです。
森はそこまで鬱蒼とした風でなく、ある程度風通しもあるものだった。というか、たぶんこれ整備されてる。俺の身長くらいのところの枝が切られているんだ。
明らかに人の手が入っている!
さらに奥へ進むと、見つかりました。家がある。この辺りはモンスターもいないようだった。
家というより集落か?
簡単な柵と、家が10くらい。さらに納屋のようなものもある。
『人住んでるのか! ちょっと話聞いてみようぜ、セツナ!』
『あちょ、まって……タパパ君!!』
お前陽キャすぎんだろ!!
俺は森の中の家にトラウマがあるんだよ!!
「こんちわ~!!」
籠を持っている第一村人に突進していくタパパ君。あちらさんびっくりしてるよ。
「ちょっとまって、ほら、驚いてるよ!」
素早さ活かしてタパパ君の首根っこを素早く掴みました。
「驚かせてすみません」
俺が頭を下げつつ謝ると、あちらはまだ警戒しているようだが少し肩のこわばりが緩んだ。
「ここら辺で空飛ぶ島見たことない?」
まったくこちらの苦労をわかっていないタパパ君がそう尋ねると、お相手の女性はそっと眉をひそめる。
「空飛ぶ島?」
「そう! 地面がぷかぷか浮くんだよ」
「すみませんね、夢見がちな子どもでして」
俺の言葉に女性は苦笑する。
「残念ですけど、見たことはありませんね」
そりゃそうだよなぁ。
ですよねーと引き下がるべく俺が言葉を発しようとした瞬間、続いた女性の言葉に口を閉じる。
「子どもに話す寝物語はありますけど、実際は見たことはありません」
「ですよ、ね」
「お話にあるの!?」
『ちょっとタパパ君黙っててくれない!? 話は俺がするよ』
『なんでだよー!!』
『おかしなことになったら困るから!』
「夜眠るときに、子どもに聞かせるのよ。私も母から何度も聞いたお話よ」
ふふふと笑う女性に俺も同意して笑う。
「俺も小さい頃親に話をせがみました。どんなお話か聞いてもいいですか?」
普通はさ、浮島を知っているかと聞いてきた子ども、昔話をせがむ大人、変な組み合わせだと警戒する。だけどたぶんナビゲーションの矢印が彼女に向いていると言うことは彼女から話を引き出せってことだ。
「昔この辺りに住んでいた人たちが、翼を得たことにより空に向かったという話ね。土地が浮き上がり島となって高いところに旅立った。私たちは土地に残って翼の種を守っている、といったお話よ」
んんんー?
あ、ナビゲーションが村から外れた。
「翼の種ですか騎獣とかかな?」
「もしかしたらそうかもしれないわね。実はこの先少し行ったところにほこらがあるのよ。崖の先になるから普通は近づけないの。いつもこちら側からお祈りするのよ」
指さす先に、ナビゲーションが伸びていた。
女性と挨拶をして別れ、その姿が消えた途端、タパパ君がキラキラした目でこちらを見てくる。
『行こうぜセツナ!』
『まあ、行くんでしょうけどね。あんまり時間が掛かりそうならファンルーアに1度戻ってもらうからね? 俺寝る時間になっちゃうから』
『来訪者ってめんどくせー』
『仕方ないだろう、そういう体質なんだよ』
なだめて崖の方へ。よく目をこらすと確かに洞窟のようなものが、向こう側の崖の中腹にある。
『これくらいの距離なら俺は飛んでいける!』
『ぎょろちゃんはちょっと怖いなぁ……』
『じゃあ俺がセツナぶら下げるよ。途中で休み休みなら行けるし』
『怖い怖い。それよりもさ、ほら、そこら辺から崖沿いを歩いて行けそうだから、俺がふらついて落ちそうになったら崖に押しつけてくれる?』
『まあいいけど、いけると思うんだけどなあ』
ナビゲーション様が崖沿いの細い道を示しているんだよ。本当に足場ないに等しいけどね。
途中何度か落ちそうになるも、タパパ君が言われたとおり俺を壁に押しつけて、最後は短い距離を腕を掴まれ連れていかれた。
『やっぱり重かった!』
『でしょうね!!』
ナビゲーションが正しいんだよ。
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