280.タパパ君との珍道中
ログインしてタパパ君にハトメール。明日明け方から行こうぜっ! ってね。1日できる分だけで勘弁してもらいたい。読書タイムは今譲れないのだ。俺の心の平穏のために。
セツナ:
ヒューマンクエスト始めました。
ソーダ:
マジか。俺まだだ~。
半蔵門線:
セツナ殿はどっちを選んだでござるか?
セツナ:
タパパ君ですね。
半蔵門線:
あやつすぐ前に出るから接敵したら即始末した方がいいでござるよ。ポーション喰い野郎って呼ばれてるでござる。
セツナ:
肝に銘じます。
半蔵門線:
ソーダ殿はナパパを選ぶ方がいいと思うでござる。ソーダ殿がヘイトを取っていれば勝手に攻撃してくれるでござるよ。
ソーダ:
了解。覚えておく。えー、セツナも始めたなら俺もやろうかな~。
半蔵門線:
ちなみに、わりとすぐ始めた拙者でござるが、まだ終わる気配が見えないでござる……なかなか長いので早めに受注しておいて、問題箇所に寄ったら進められるようにしておいた方がよいかと。ほぼおつかいクエスト系なので。移動につぐ移動でござるよ。
ピロリ:
私もまだまだよ~。たぱくんすぐ転ぶから……費用がかかるのよ。
目の前でNPCが倒れると、瀕死判定でポーションで回復させないといけないらしい。こちらが倒れれば命からがら逃げ出したというストーリーになるのだが、ファンルーア周辺でピロリが転ぶことなんてまずない。
柚子:
ドワーフクエストはまだなのじゃ~!!
セツナ:
第11都市だそうですよ。
案山子:
エルフは第7だよねッ~ファマルソアンさんのところのッ!
半蔵門線:
獣人だけが未だに何も聞こえてこないので不気味なのでござるよ。
ソーダ:
だけど、ヒューマンタイプにだけこんな長々と続くクエスト振り分けて放っておいたら他のアバター使いから文句でるだろ。なんかしらのタイミングで全解禁とかありそう。
八海山:
ヒューマンクエストスレを覗いてると、どうも途中時間調整入っているようだから、もしかしたら例の聖地で何か起こるかもな。
八海山の言葉に思い出した。そうそう。そんな話だよ。
セツナ:
昨日空の国の司書さんと話していたら、聖地に聖騎士団が集まるときに合わせて飛行船が開通するかもって言ってた。だからもしかしたらヴァージルの言ってた陸路より空路の方が早いかもしれないよ?
ソーダ:
うーん、それをヴァージルがどう把握してるかだな。
正直それがわかってて聖騎士団が陸路をとるなら、陸路の方が面白そう。
ピロリ:
ヴァージルと一緒に行動する方が絶対楽しいことあるわよー。
八海山:
セツナ君はそれでまた動画を回せばいいのさ。
うちショート専門チャンネルだったはず……。
案山子:
ご飯たくさんもってくよッ!
柚子:
イケメンと行動してるとうちの娘ちゃんが喜ぶのじゃ!
幼稚園児ぃ……。
セツナ:
それじゃあまあ、空路開通するかもだけど、陸路でいいのかだけは聞いておくよ。
さて。夜はミュス狩り。夜が明ける前に冒険者ギルドに尻尾を納入。
「いつもありがとうございます。街の平和はセツナさんによって保たれていますね」
それはちょっと大げさだと思うよお姉さん。
日が昇り始めると、フードを目深に被った小柄な空人がやってくる。
「タパパ君こっち」
「セツナ! お待たせ」
きちんと冒険者仕様なのだ。空人の服装ではない。シャツにパンツにブーツ、そしてフード付きローブ。空色の髪と空色の瞳を隠している。背中の羽根も折りたたむとちょっとローブがだぶついてるねくらいになる。
「えーと、イェーメールからファンルーアに行くのに、飛行船乗る? それとも陸路行く?」
「セツナはどっちが楽なんだ? 俺は飛べるから陸路でも全然問題ないよ」
飛行船高いんだよなぁ……まあ出せるけど、今お金を貯めようモードに入ってるから1万シェルでももったいない。
「せっかくだし陸路でいいかな? 俺は騎獣に乗ったら結構早いし、タパパ君飛んだら早い? 休憩どのくらいでいれる?」
「うーん、疲れたら言う」
これは休憩必要そうだな。
とりあえずパーティーを作ることにした。
『これで少し離れていても話せるよ』
『んじゃいこうぜ、セツナ!』
ちょっと生意気小僧なんだよねー。たぶん10歳くらい。いや、見かけ年齢のやつかこれっ!! 案外俺より上なのか。そう考えれば全部許される気もしてくるな。
「おいで、ぎょろちゃん」
わりとミュス狩りのときは一緒に楽しんでいるぎょろちゃんだけど、久しぶりに遠出する。赤水晶もちゃんと持ってきた。またそろそろ水晶狩りしないとかな~。
『わっ! なんかすごい……派手な騎獣だな。初めて見た』
『うちのぎょろちゃんはとってもお利口さんだよ』
そしてまた空の飛び方で驚かれました。
空人のローブは羽根を出すところがあるらしく、器用にばっさばっさ飛んでいた。
空を自由に飛べるのは羨ましいな。
『なあセツナ! イェーメールには寄るんだよなっ!?』
『えっ……寄るの? ファンルーアの先まで行かないの? 時間なくなっちゃったら困るんだけど』
『いいじゃん! 宿屋に泊まれば! なんか旨いもの食べたい』
え、何この子……しかしナビゲーションがイェーメール向いてるんだけどどゆこと!?
仕方ないからイェーメールへ。
『セツナ! ほら早く!! 飯食おうよ!』
おー、まあ、行くか。
イェーメールの朝市。
タパパ君、めちゃくちゃ浮かれまくってる。歓喜状態です。
大変だよぉ……。
俺もたまに利用してるけど、確かに美味しいんだよ。パンにソーセージのぶっといやつはさんであってさ、ザワークラウトみたいなやつと粒マスタードとケチャップ。ミルクティーもカップでくれて、ほかほかですよ。
待ち合わせをかなり朝早くにしたから、今6時。朝市始まったばかりのときに、小さな子どもがきゃっきゃしてる。
「タパパ君、ちょっと落ち着こうか?」
「これ、これのねじねじしてて蜜のかかってるのが食べたい!」
「うん。食べればいいけど、落ち着いて、ね?」
ヒューマンクエストは子守クエストだったということか……。
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